サプライズ
家に帰ると居間では誕生日パーティーの準備が進んでいた。一之瀬さんと佐々木さんが飾り付け係のようだ。バースデーケーキは雪川さん。私はケーキ作りを手伝う。
「雪川さん、手伝いますよ」
「でも、病み上がりで、大丈夫ですか?」
どうやら私の体調を心配してくれているようだ。
「大丈夫ですよ。街に出掛けてもなんともありませんでしたから」
それなら、と私はクリームを頼まれる。料理のなかでもお菓子作りは得意だったのでケーキ作り、クリームは慣れていた。
「卵白、卵白、メレンゲ、メレンゲ~」
「姫華さんは料理が本当に好きなんですね。歌っていましたよ」
「え、自分では気がつきませんでした」
雪川さん笑ってる。そんなに大きな声で笑っていたのかな。なんか、恥ずかしい思いばかりしてる。そんなことより、クリームを作らないといけない。時間がおしてるみたいだし。もうすぐ玲音さんがお仕事から帰ってくる時間だ。
「姫華さん、クリーム塗ります。持ってきて下さい」
「はい。あ、私、冷蔵庫からフルーツ持ってきます」
冷蔵庫を開けるとたくさんのフルーツがあった。このフルーツがケーキにデコレーションされるのを想像するだけで楽しくなる。きっときれいだろうな。
「デコレーションしますね」
ケーキの上にフルーツをのせるのは楽しい。センスがとわれる。
「イチゴをのせて……できた!」
「完成しましたか? きれいにできていますね。姫華さんに任せて良かったです」
雪川さんが褒めてくれた。陽気な気持ちになる。そのあとすぐに玲音さんから今から帰る、という連絡が来た。それを受けて皆は慌ただしく準備を進める。私もそれにまざる。準備が完了すると同時に玄関のドアが開く音がする。部屋を暗くし、クラッカーを手に持って玲音さんが来るのを待ち構える。
「誰もいないの? 部屋が真っ暗だし」
「せーの」
「ハッピーバースデー!」
風船が割れるような音が部屋中に響く。それと同時に部屋の電気が点く。玲音さんの顔は固まっていた。それはもう、目が飛び出そうなくらい驚いた顔で。サプライズは大成功したようだった。
「皆、ありがとう。嬉しいわ!」
そして玲音さんの誕生日パーティーが幕を開ける。




