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誕生日プレゼント

「皆さん、おはようございます!」

「姫ちゃん、復活ね」

私は風邪から復活し、一日寝ていたせいか、体の疲れが完全に取れた。おまけに元気一杯で目覚めも良かった。皆は笑顔で挨拶を返してくれる。こんな毎日が嬉しくてしょうがない。病み上がりということで食事の準備は雪川さんがすべて引き受けてくれた。

「皆さん、その、ご心配をおかけしました」

「気にしないで。家族なんだから」

佐々木さんの家族という言葉に胸が温かくなる。この響きは好きだなって思う。当たり前のように家族と言ってもらえるのが嬉しい。

「姫華、今日は暇か?」

「はい、特に予定はないですよ」

じゃあ、と城之崎さんは続ける。

「街に行くぞ」

街? 買い物だろうか。城之崎さんはそれ以上言わずに朝食を食べる。私も後からでいいか、と食事をとる。とにかくお腹が空いた。何せ昨日からあまり食べていなかったから。空腹を満たしてから、出かける準備をする。すぐに城之崎さんが迎えに来てくれた。

「あの、どこに」

「いいから行くぞ」

私の言葉は遮られた。城之崎さんに手を引かれ慌ただしく家を出る。そろそろ聞きたいと思いながら彼と並んで歩く。しばらく沈黙が続いたがやっとのことで事情を説明し始めた。

「実は今日は玲音の誕生日なんだ」

「玲音さんの? じゃあ、プレゼントを買いに?」

問いにうなずく。それからため息をついた。

「どうしたんですか?」

「いや、くじで役割を決めたんだが、俺がプレゼント係りになったんだ。何がいいか分かんねぇしお前、暇そうだったから連れてきた」

なるほど、とそう思う。それにしても暇そうって何だか傷つくかも。まあ、その通りだけど。それからすぐに前に皆で来た街に着く。あのときはどうだったかあまり覚えていないがこんな風に賑わっていたんだろうな。それどころじゃなかったのだけど。

「玲音さんはどんなものが好きなんでしょうか」

「さあな、俺よりお前の方が知ってるだろ。仲良さそうだし」

周りから見たら私と玲音さんはそう見えていたらしい。本当に仲が良いのなら嬉しいが、本当のところはよく分からなかった。でも、よく一緒に過ごしているのは当たっているから一生懸命考える。

「……! お花とかはどうでしょうか。以前、好きって言っていたのを思い出して」

「花、か。いいな。すぐそこにいいところがある。そこに行ってみるか」

私はうなずいてフラワーショップに向かう。別に急ぐことでもないのに早足になる。着いたフラワーショップは小さいけど雰囲気の良い場所だった。アレンジされたお花がいっぱいあってあちこち目移りする。こんなにたくさんあると迷ってしまう。しかもどれもが可愛くてプレゼントしたときの玲音さんの顔を想像するだけで笑顔になる。

「どれか良さそうなのあるか?」

「どれも良くて迷ってしまいます」

するとひとつの商品が目にはいる。ゴージャスだが派手すぎずどこか落ち着いた感じで玲音さんを表しているようなものだった。

「これにします!」

気づけば大声をあげていた。

「あ、すみません。思わず……」

思い切り大声をあげたので店員さんと城之崎さんが驚いていた。かなり恥ずかしい。

「相当気に入ったんだな。じゃあ、これをお願いします」

そう言って私の頭をぽんぽんと軽く叩いたあとにレジに向かった。そして会計を済ませ、店を出る。

「腹減ったな。何か食うか」

城之崎さんに言われて時計を見ると十二時を指していた。言われてみるとお腹が空いた。私たちは近くのファミレスに入って昼食を済ませた。その後は色々なお店を見て回り、帰宅したのは空が茜色に染まる頃だった。


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