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買い物

私は一日ゆっくりと穏やかに過ごした。本を読み終わるといつの間にか陽が傾き始めている時間になっていた。夕陽を見ているとしみじみとした気持ちになる。自分のいた世界が気になる。私の存在はどうなっているとか時間は進んでいるとか。こういうときは家や家族が恋しくなる。お母さんの料理が食べたくなる。ふと、後ろに人の気配がしたので振り向く。

「姫ちゃんって意外と敏感ね。気付かないと思って驚かそうと思ったんだけど、失敗しちゃった」

「驚かそうって、玲音さん……」

こういう子供っぽいところもある玲音さんにはすごく親しみやすい。それでもっておしゃれで美人。男の人なのに、女として憧れる存在。男の格好させたらイケメンって贅沢だなって時々思う。

「姫ちゃん、一緒に夕食の買い物行きましょう! 頼まれたの。ね!」

そう言ってウインクしてくる。そのしぐさに少しドキッとする。そのことに気づかれないように笑顔で返事をする。大分慣れてきた。からかわれることも、こういう何気ないしぐさにドキッとしたときの対処法も。お陰で気づかれてさらにからかわれることは、なくなったわけではないけど減った。内心はドキドキなのが精神的に辛いが……

「じゃあ、早速行きましょう!」

「はい」

私と玲音さんは夕食の買い出しに行く。私たちの向かったところは商店街。同じように夕食の買い出しをする人で賑わっていた。

「何を買えば良いんですか?」

「それがね、任せるって言われたの。姫ちゃんが選んでちょうだい。私、料理ってよく分からないから」

それじゃあ、と考える。辺りを見回すと、魚が目に入る。決めた。

「今日は魚にしましょう。味噌煮はどうですか?」

「良いわね。そうしましょう!」

そして魚を買いに店へ行く。店内を見回す。すると、鯖が目に入った。これにしようと、良さそうなものを選び始める。玲音さんは私の手元をじっと覗きこむ。

「何かこうしてると夫婦みたいね!」

「え!?」

思い切り反応してしまった。他のお客さんに注目される。

「すみません……玲音さん何を言うんですか!」

「ごめんごめん。でも」

そう言って私の耳に近づく。

「良い反応だったよ」

「!?」

私の顔の温度はどんどん上昇していく。またからかわれてしまった。こういうとき、いきなりすぎるときはかわしきれない。気まずさからすぐに選んで、店の外へ出る。

「玲音さん、店ではああいうのはやめてください」

「店じゃなければ良いの?」

「だめです。けど店は特にです」

「はーい」

玲音さんは素直に謝る。それに少しの違和感を覚えながらも、まあいいか、という気持ちになった。それから他の買い物をして帰った。


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