パスタ
私は待ちに待った昼食の時間を迎える。たった数時間だったのに長く感じられた。張り切ってキッチンに行くと、やはり雪川さんがいた。
「お昼は何にするんですか?」
「そうですね、パスタにしようと思っています」
パスタ、私の好きな料理だ。茹でるだけなのだが、そこが奥深い。良い食感、つまりアルデンテの状態にするのが難しいながらも楽しい。それだけの理由だと思われるのだが、私にとっては充分だった。
「今日は誠一郎さんとシンさんが用事があっていないので残りの五人分を作りましょう」
雪川さんいわく、一之瀬さんは和風パスタが玲音さんはカルボナーラ、残りの人は何でも好きだそうだ。私も何でも好きだが、カルボナーラが食べたかったので二人前作る。雪川さんはミートを作る。早く終わった方が和風を作ることになり、私たちは早速、調理を開始する。パスタを作っている間、雪川さんは何も話さなかった。無論私も。
「できた! 私、和風作りますね」
「お願いします」
ミートソースから作っていくため、私の方が早く終わった。そして和風を作り始める。
それからしばらくして昼食は完成した。それと同時に皆が集まってくる。
「今日はパスタか」
一之瀬さんの声がした。どうやら一番乗りは一之瀬さんのようだ。彼に続いて他の二人も入ってくる。
「カルボナーラ美味しそう! これ、姫ちゃんが作ったでしょ」
「どうして分かったんですか?」
玲音さんは口元に人差し指を立て、秘密、とそう言った。もしかして見られていたのだろうか、そう考えていた。
「それではいただきましょうか」
雪川さんの合図で皆、合掌する。いつ見てもいい、この感じ。家族らしい。家族、か……そういえば私のいた世界はどうなっているのだろう。最近色々ありすぎて考える余裕がなかったけど、今は気になる。よくある、時間が止まっているとかなのかな?
「姫ちゃん、相変わらず料理上手ね。良いお嫁さんになるわ」
「そんなことは……雪川さんには遠く及びませんよ」
「そんなことないと思うけどな」
「一之瀬さん?」
すると、一之瀬さんは顔をそらす。ゲームの世界だからなんか、直接話すのって変だけど面白いな。皆と楽しく過ごせたら幸せだな。
「ごちそうさまでした。では片付けましょう」
雪川さんに言われた通り、片付けを始める。昼食が終わったのは一時くらいだった。
午後は特に仕事が入っていなかったのでお庭で本を読むことにした。雪川さんに貸してもらったお料理の本だ。それから私は穏やかな午後を過ごした。




