自己紹介
「……」
試練です。私はどうすればいいのだろうか。乙女ゲームだし男性がイケメンで、主人公の私に興味を示すのは分かる。分かるのだが、こう、実際にじろじろ見られるのは落ち着かないというか心臓が……破裂しそうかも。
「あの?」
「何?」
「いえ、私の顔に何かついているのかな、と思って」
この状況を打開するにはこの台詞が一番。乙女ゲーム通の私が言うから間違いない、筈。
「あなたのことが珍しく、可愛らしいので皆さん見ているだけですよ」
「可愛い!? そんなわけないですよ」
「初々しいな。男経験なし、か」
私としたことが、思い切り反応してしまった。恥ずかしくて顔をあげられない。確かに経験ありませんけどね。こんなイケメン早々いないし、私なんか相手してくれる人なんていない。考えれば考えるほど自分が惨めになってくる。
「やめろ、困ってるだろう」
「はいはい」
「そういえば、自己紹介がまだ済んでなかったね。僕は佐々木誠一郎です」
はい、知っています、思わずそう言いそうになってしまった。危ない。異世界から来たとは言え、さすがに名前知ってるなんて色々マズイ気がする。
「私は雪川蓮と申します」
「次は俺だな。城之崎晃司だ」
「僕は神沢シン。シンって呼んで」
「俺は一之瀬僚。よろしくな」
「私は相川玲音よ。玲音って呼んでちょうだいね!あ、こんな格好だけどもちろん、男だから」
「はい。えっと、私は如月姫華です。よろしくお願いします」
自己紹介が終わってから6人の男性は私をじっと見つめていた。私は乙女ゲームの世界へ行けたら幸せだと思っていたが、うまくやっていけるのか心配でならない。これはゲームであってゲームではない。選択肢がない、つまり自分の意思で進むしかない。ハッピーエンドにたどり着けるか、この瞬間はそう考えていた。とりあえず、頑張る。ゲームの主人公として、正しい回答を心掛ける。乙女ゲーム通の私なら大丈夫、そう思いながら過ごしていくことにした。ハッピーエンドにたどり着くなんて、慎重に答えを選べば簡単だと思う。どのゲームも答えは似ているのだから。