翌日
「姫ちゃん! 起きてる?」
「ん……あ、はい! 起きています!」
私は部屋のドアを叩く音で目が覚める。眠たい目をこすりながら急いで髪を整え、ドアを開ける。
「はい、玲音さんおはようございます」
「おはよう、姫ちゃん。眠っていたでしょ」
「! ……はい。すみません」
玲音さんに言い当てられた私はうつむく。彼はいいわよ、と言ってくれたので安心する。なんか、申し訳なくなった。何でだろう?
「姫ちゃん、疲れてる?」
「いえ、大丈夫ですよ」
「なら良かった! じゃあ、今から朝食を食べて二時間後の十時に迎えに来るから出かける準備してて!」
「? はい」
じゃあ、と玲音さんは私に手をふってどこかへ行ってしまった。なんだったんだろう。どこに出かけるのだろうか。少しの不安と期待を残しながら急いで着替えを済まし、朝食を食べるべくリビングに向かった。
リビングにはすでに皆が揃っていた。
「すみません、遅くなって」
「いいよ、昨日はかなり疲れていたみたいだし」
「そうだな、車でウトウトしていたようだった」
「つーか、寝てただろ」
「うん、可愛かったな。寝顔」
確かに車での記憶はほとんどない。寝てたんだ。恥ずかしい……他の人はまだしも、シンさんにはからかわれている気がする。いや、いつものことなんだけど。
「朝食が出来ましたよ」
出てきたのは洋食だった。おしゃれな洋食は皆、似合っている。私とは違うという感覚を覚える。その感覚に少しだけ心がズキズキする。なんだろう、時々あるこの胸の痛みは……
「姫華さん、食べないんですか?」
「……! すみません、考え事していただけです。えっと、いただきます」
考え事をよそにし、朝食を食べ始める。食事の度に思うけど、雪川さんの作る食事はとても美味しい。私も見習わないと、そう思う。朝食の間は皆で昨日のパーティーの話をしていた。主には私のダンスについてだが。予想通り、からかわれた。でもやっぱりいやというわけではなく。そうしている間に朝食は終了した。部屋についてからは、玲音さんに言われた通り出かける準備をする。どこに行くんだろうという期待と不安を感じながら残りの時間を過ごす。乙女ゲーム世界とは思えない。ここが自分の住む世界のように最近は感じてきた。そして、ゲームとは違う内容の出来事が起こっている。
「私、どうなるんだろう……」
「姫ちゃん」
私はすぐにドアを開ける。目の前には玲音さんだけではなく、皆がいた。驚いたが口にはせず、家を後にした。