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世界の力 ※身の丈にあった力を使いましょう。エラいことなります



「さて、さっきのオッサンの言うとおりだとすれば、ガナルの部屋への道はココ一本だった訳ですが」



 黒野たちは大きな扉の前にいた。鋼鉄の重い扉には悪趣味な装飾がコレでもかと施され、ガナルのセンスの無さを露呈させている。扉を調べながらレイリは黒野に聞く



「扉の向こうからは殺気が漂ってきていますね……醜悪でおぞましい悪意が。万が一のとき、ガナル専用の脱出経路などはどうだったのですか?」


「さすがにこの短期間では調べ上げられませんでした。先ほどのオッサンもそれは知らなかったようですしね。ですがこの工場はガナルにとってカナメです、ココを落とすだけであの悪趣味には大きな痛手を与えることができる。では行きます。フン!!」



 扉を押す黒野。顔が真っ赤になるほど力んでいる。両手で、肩を使って、背中を使って、押す。めいっぱい押す。



フンッッ!! ~~~~~~~~~~~~~~~!!」


「………………」


制哉セイヤッッ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!」


「あ、こんなところに勝手口が」


 

 黒野は盛大にズッこけた。仕切りなおして。扉(勝手口)を開けるとそこは闘技場でした。



閉鎖的な空間で、5、6mほどの天井からは金属の拘束具が垂れ下がり、石壁には赤黒いシミも見える。とことん汚れ、そしてとことん悪趣味だ





「よく来た異世界人、そして裏切り者諸君!」


「消えろ不愉快だ」



 ガナルが居る高い観客席に容赦なく銃をぶっ放す黒野。だがガナルの熱風の壁によって相殺される。言いたいことも言わせない、まさに鬼である



「ぬあっ?! 話を聞け! ゴホン! これから君たちには我が精鋭たちと戦ってもらう! せいぜい楽しませてくれたまえ! フハハハハハハ!」



「なんか悪趣味な人間が悪趣味なこと言ってますね」


「最近ああなったんです。おそらく元々悪趣味なのでしょうね、今まで隠していたのでしょう。我々も正直ドン引きです」


「悪趣味は悪役が許された最期の特権です。許してあげましょう」


「貴様らただじゃおかんからな! 覚えとけよ?!」


「さて悪趣味、僕の相手は?」


「いい加減にしろ! 貴様は40人の我が精鋭と戦ってもらう!」



 黒野たちが入ってきた扉と向かいになっている扉からドヤドヤと屈強な男が沢山でてきた。一言で言うなら世紀末な格好をしている



「げへへ……俺の斧のサビになりな!!」


「どう見ても世紀末式三下です本当にありがとうございました。ここまでテンプレ通りだと爽快感すら覚えますね」


「ゴタゴタうるせぇんだよ!!」



 ゴングは三下の振り下ろした巨大な斧が地面に激突する音だった。土埃が立ち上り、視界が著しく悪くなる



「げへへ……一丁上がりってな!!」


「おぉ、割と難しい言葉知ってますね、感心しました」


「あ?」



 振り下ろされた斧の先端部に姿勢よく腕組みをして黒野は立っていた。その表情は余裕を伺わせる。



「速さ、熟練度、威力、取り回し、etc…何一つなってませんね。これなら爪楊枝振り回してる方がマシなんじゃないでしょうか」


「何訳のわからねぇことを!!」



 三下が思い切り斧を垂直に振り上げる。凄まじい勢いで振り上げられ、黒野の身体が5mほどの天井近くまで宙に舞う。黒野は垂れ下がっている金属の拘束具に足を絡ませる。逆さまに釣り下がったまま銃を下へ向け回転を始める黒野



「やってみたかったんですよ、コレ。名づけて……フルメタルレインバレット!」



 天井から凄まじい弾雨が降り注いだ。上からの攻撃に成す術なく倒れていく精鋭(笑)達。どう見ても常人の動きではない。結果、阿鼻叫喚の地獄が闘技場で繰り広げられた




ダガガガガガガガガガ!!


「うわぁぁぁ?!」


「ぎゃぁぁ?!」





「本当に、彼は何者なんでしょうか……」


「ただの一般人ですよ、僕はね」



 三下全員昏倒させ、天井から飛び降りた。と思ったら無様に地面に激突した。何事もなかったかのように立ち上がるが、足取りは千鳥足だ



「おぉ、世界が回ってますね……コレも魔法??」


「あなたの目が回ってるだけです」


「チッ、役に立たん連中だ!! だが彼らは役目を立派に果たしてくれた!! 時間を稼ぐという大事な仕事をな! 丁度動力と動力源との同調が終わったらしい!」



 ガナルが吐き捨てるように呟く。ココに来て傲岸不遜な態度がより加速する



「ふむ、厄介なことになったかな。即効で片付けたつもりだったんだけど」


「上半身しか稼動はできんかったが、貴様らを叩き潰すのにはコレで十分だ!! タロスゥゥゥゥ!! 起動ォォォォォォ!!!」








 工場自体が凄まじい地響きで軋む。ゴゴゴゴゴ、と凄まじい質量のものがゆっくりと動く音が遠くから聞こえた。それは闘技場の天井をで払い飛ばして姿を見せた。




VS   有人起動兵器・タロス(未完成)



 タロスと呼ばれた巨大な人型機械の上半身。全体的につるつるとした金属質な光沢を放ち、無骨で不気味な西洋甲冑に見える。


 甲冑の胸の部分にある巨大な宝石のような部分へとガナルは吸い込まれた。甲冑で言うところの目だし部分が不気味に発光、巨大な鎧が動き始めた



「これより貴様らに審判を下す!! 判決、死刑! 死刑!! 死刑だぁぁぁぁ!!」



 タロスの巨大な腕が黒野へ向かって振り下ろされた。たったの一撃で工場全体がほぼ崩れ、工場があった場所は瓦礫の山へと変わる。



「うわぁぁぁぁ!」


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「はーーーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!! 力こそ正義! 私こそ勝者!! 揺ぎ無い力を持つ絶対者だ!! はっはっはっはっはっはっはっはっは!!」






「やーれやれ、やってくれますね……」



 瓦礫の山から深紅の炎が吹き上がる。その炎は天を焦がし雲を蒸発させ、夜空を一瞬にして晴天にしてしまった。空の時間を捻じ曲げる程の凄まじい力。ジリジリとあたりの気温が一気に上がる



「もうリスクがどうとか迷っていられない。正直、この力が怖くてたまりません。ですが、今ここで僕が崩れたら誰が魔物を屠れるというんですか? 誰がヒロインを救出するというのですか? しかいねぇだろ? テメェを倒せるヤツは」



 異世界からやってきた異邦人兼救世主。相対するは巨大な機構兵操るこの世界の巨悪。この世界の命運を分ける戦いは今始まった





 コイツは誰だ? ガナルやレイリは思った。黒野時継とは白髪、堅苦しい話口調、隙がなく食えない男。だが立っていたのは黒野の顔をした別人のような男だったからだ



「ったく……この工場、置いとけば使えそうなモンもいっぱいあったのに粉々にしてくれやがって。復興にもどれだけの労力が要ると思ってんだ? それをわかってんですかこの悪趣味ザコが!!」



 そこにいる人物が白髪を右手でかき上げると、右手の触れた部分が赤く染まった。両手には見慣れぬ赤いグローブが嵌められている。ロック歌手がよく着けている指の部分がないグローブだ



「な、何者だ貴様!?」


「通りすがりの喫茶店主サテンマスターだ、何度も言わせんじゃねーよ!!」



 どうやらこの人物は黒野本人らしい。ただ性格が激しく変化し、怒りっぽく短気になっているが



「あぁ~……もうメンドくせぇ!!」



 タッ、と軽快な音で飛び上がり、タロスに向かって腕を振る。炎天下の中、蜃気楼に混じって赤い軌跡が虚空を切った。その奇跡は丁度タロスの巨大な指を囲み込むようにして消えた。その次の瞬間



 キイィィン          ズバン!!



「な´…」



 赤い軌跡の内側に入っていたタロスの指が切断された。いや、切断というより溶断、といったほうが正しいか。切り口が真っ赤に燃え、金属が溶けている。凄まじい質量を持つ指が土ぼこりを舞い上げて地面に落下した



「ち、まだ2%ほどかよ……」


「これは……霊石の力?!」


「あー、そんな感じだ。多分な……ッッ!!」



 びきり、と黒野の指が軋んだ。巨大すぎる世界の力がその身体に順応できず、体を蝕んでいく。最初から決めていた、この力を使い始めたら短期決戦で決めると



「さて、ちゃっちゃと済ませるぜ。ヒロインあんまり待たせちゃイカンからな」



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