開かれた新たな扉 ※ヘンな意味はない
さて、始まりました。若干シリアスが多めというか、あんまり面白いネタはないです多分ww知ってる人にはニヤニヤ出来るネタがあるかもしれませんがwwww
この世は多数の世界が隣り合って成立している。それぞれの世界はお互いに干渉することなく均衡を保っていた。ごく稀にお互いに干渉しあった時があるが、それもその時空から見れば誤差程度しかなく、時間の経過で修正できるものだった。
そう、その日までは
現代社会。全てにおいてある程度完成され、面白味の欠けるこの世界。とある町の片隅、路地裏に近い場所にて。何もないはずの場所に突如として大きく立派な扉が出現した。軋むような音を立ててその扉は開き、中から少女が出てきた。
闇に溶け込む漆黒の髪、若干のツリ目に栗色の瞳、整った端正な顔立ち。見た目10代後半くらいだろうか。身に着けている装束は少なくともこの現代社会のものではない奇抜で変わったデザイン。少女が出てくると扉は「スゥ」と音もなく消えた。少女は辺りを見回しため息をつく
「……随分と汚れた空気の世界です。ま、私のいた世界よりはだいぶマシですけれど……早いところ探し当てて、協力してもらいませんと」
察するに誰かを探しているようだ。少女はポケットから懐中時計のようなものを取り出し、開く。懐中時計で言う時計がついているべきところには、変わった時計らしきものがついていた。
時計で言うところの針が異常にたくさんついているのだ。文字盤には奇怪な文様が描かれており、この世界の人間が読み解くのは不可能だろう。現在時間を表すものではないらしい
と、時計の針が急速に回りだす。グルグルとすごいスピードで回りだし、数秒後全ての針が一定の場所を指して止まった
「こっちですね……急がなければ」
人目を避けるように少女は走り出す。『刻の羅針盤』に選ばれた人間を求めて
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行間
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「…………疲れた。ゴミ、多い……」
町の片隅の喫茶店、知る人ぞ知る場所にその喫茶店はあった。『喫茶・ゼニシア』。モダンで落ち着いたアンティーク感溢れ、窓から穏やかな日差しが降り注ぐ穏やかな喫茶店である
彼の名は黒野 刻継。穏やかで落ち着いた雰囲気、優しそうな目、柔和に微笑んだ口元。彼を見て目を引くのが全ての髪の毛が白髪で、尚且つ目が血のように赤い眼をしているところだろう。断っておくが彼の年齢はまだ20代。フケてこうなっているわけではないのだ
そんな彼は今喫茶店から程近い、町外れのゴミ捨て場に向かっている。空になったコーヒー豆の袋やその他もろもろが町指定のビニール袋に詰め込まれ、彼の両腕にぶら下がっている。
数分も歩いただろうか、目的のゴミ捨て場に付いたのでネットをどけてゴミ袋を放り込もうとした時
「ぅうん……」
ゴミ捨て場にそぐわない美少女がゴミに埋もれて眠っていた。『刻の羅針盤』の針が急速に回りだした
「………………」
「スゥー…スゥー……」
しばらく棒立ちになっていた黒野だったが、ハッと意識を取り戻す。あまりにも非現実的で不可解な構図だ。ここはゴミ捨て場の中でも生活ゴミを廃棄する場所。生ゴミもそれなりにあり、かなりの悪臭を放っているのだが。この少女はとんと気にした様子がなくスヤスヤ眠っている
このまま放っておく訳にも行かない。彼はお人よしだ。困っている人がいるなら助けてしまうのが彼のサガ。自分の持ってきたゴミをゴミ捨て場の隅のほうに置いてしゃがみ、少女をゆすって起こしてみる
「起きて。ねぇ。起きなよ」
「んぅ……?」
眠そうに目を手で擦り、眩しそうに細めた目で黒野の方を見る少女。数秒間、見つめ合う。だんだんと少女の目が開いてきて、大きなあくびと伸びをした。まだ随分と眠そうだが
「こんなところで何をしているの? 汚いし、病気になっちゃうよ」
「ぅぅん……ぅん? うぅぁ…」
なるほど。何を言っているかまったくわからない。まだ意識が覚醒しきっていないのだろう。とりあえず、ゴミ捨て場で話し続けるのは避けたい。クサいし、臭いが移った状態で喫茶店の営業は出来ない。ともかく、少女をこのままほっとくなんて黒野の良心が許さないので、店のシャワーを貸すことにする
「ともかくさ、そのままじゃ汚いし、僕の店のシャワー貸してあげるから綺麗にしたほうがいいと思うよ。付いて来なよ」
「…………ん?!」
突然すばやい身のこなしでいきなり現れた変質者から距離をとり、身構える少女。その構えは堂に入っており、かなり戦闘慣れしている様子が伺える。少女の年齢に似つかわしくない、戦いの構え
「私から離れなさい、変質者。知っていますよ、この時代では貴方のような人をロリコンというのでしょう? 汚らわしいです! 速く失せなさい、でないと一生不能にして差し上げますよ?!」
体に力を込め、いつでも迎え撃てるように身構える少女。だが次の瞬間その構えは意味を成さなくなってしまう
「いい心がけだね。わかった……………そのときはコレを使うといいよ」
「え?!」
怪しげな男が手渡してきたのはなんとスタンガンである。試しにスイッチを押してみると凄まじい電流が2本の角の先から迸り、火花を散らす。本物だ
「信用できないなら君が徹底的に有利な状況であれば信用してくれるかな、と思ってね。僕が怪しい行動をしたらそれで容赦なく感電させればいいよ。あ、これも渡そうか? 安物だけど、防犯ブザー」
ポケットを探り、小さな卵形の防犯ブザーをさらに渡す怪しげな男。正直異常だ。ここまでだと逆に気味が悪い。そしてここまでされると信用せざるを得ないような気さえしてくる。
「……一応信用してあげます。貴方の名前は?」
「ん? 僕は黒野。通りすがりの喫茶店主だよ。言うなれば、ただの一般人さ」
ひょうひょうと己の事を告げる若白髪の男。敵意、他意などは一切混じっていない真っ直ぐな言葉だった。この男なら信用を置けるかもしれない。今の自分は確かに少女にはそぐわない臭いを漂わせ、そしてかなり汚れてしまっている。コレは一種の賭けだが、乗ってみるのも手かと少女は判断する
「どうする? 乗ってみる?」
「……いいでしょう。ありがたく好意を受け取らせてもらいます」
その後、どちらからともなく二人は手を繋ぎ、彼の経営する喫茶店「ゼニシア」への道へと歩き出した
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行間
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二人が店に入って数十分後。少女は店の奥にあるシャワールームで体についた汚れや臭いを落としている。黒野はというと、店のキッチンで何かを作っているようだ。手際よくチャキチャキチャキと卵をかき混ぜている。と、店の奥の扉が開き、若干湯気を漂わせた少女が出てきた
「シャワー、ありがとうございました」
「ん? 綺麗になったかな」
「ええ。サッパリしました」
黒野がこちらを見ずに問いかける。脱衣所に置いてあったタオルで頭を拭きながら少女は答える。今少女は大人用のガウンを羽織っているのだが、安全ピンで丈を少々調節してある。どこまでも気遣いの届いた男だ、と少女は思う。と、唐突に黒野が切り出した
「………………ウソだね」
「え?」
「本当にシャワーしただけじゃないかな。体までは洗ってないんじゃない?」
「え?! なぜそれを?!」
言い当てられてしまった。基本的に少女は体や頭を洗うなど面倒なことはせず、大体はシャワーだけで済ませてしまう。出無精なのだ。と、黒野が作業をしている手を止めこっちを見て苦笑いをする
「ゴメン、テキトーにからかっただけ。まさか、ホントだとは」
「カマかけしたのですか?!」
「うん。面白そうだったから」
「貴方って人は………!」
「僕は僕が面白ければ何でもいいんだよ。こうやって衝撃的な出会いもまた一興だ。大丈夫、迷惑はかけないよ。尻拭いは自分でするし、僕が原因で何か不都合が起こったのなら全力でリカバリーするさ」
この男、本当に何者だろうか。まったく悪意は感じられないが、底知れない何かを腹に抱えている得体の知れない男。何者だろうと思案をめぐらせようとした時、彼女はお姫様抱っこされた
「な、何するんです?! 下ろしてください! 不能にしますよ?!」
「気に入ってるの、そのセリフ? まぁ一応飲食関係の店だからね、あまり不衛生なのは店長として許せないんだよ。洗い直しだ」
「いや、やめて……」
「やめてほしい?」
「はい!!」
「やめないけどね」
「うぇぇぇぇん!! はな゛じでぇぇぇ~~!」
数十分後、そこにはヘトヘトになったものの綺麗になった少女と若干顔が腫れている黒野がいたという
さて、序章という事で短いです。頑張ろう……