そのよん
ちょっと文章の書き方を変えてみた。
梯子を降りると広い通路に出た。
通路の奥行は広く、また幅も4メートルほどありただの通路にしてはずいぶんと広い。
さらに天井まではおよそ3メートル。それに加えおそらく換気用だろう穴がいくつか開いている。
よく崩れないものだとセレは感心した。
「ここは?」
「最終防衛線さ。 万が一アジトの場所がバレた時はここで最後になるだろう抵抗をするって訳だ」
「縁起でもないわね」
最後のという言葉にニクスは不機嫌そうに呟いた。その顔は若干青ざめている。ニクスは死霊を操る死霊術士だが人が死ぬのに慣れているわけではないのだ。
「用は時間稼ぎのための場所だ。 奥には緊急用の出入り口があってそこから逃げられるようになってるのさ」
そう言った後に一言付け加える。その言葉でニクスの顔色がよくなり―――
「・・・もっとも時間稼ぎをした奴らは助からねえだろうがな」
その一言で再び青ざめた。
「あの扉の先がアジトだ」
ギオデンが指さした先には奥に続く扉があった。
扉に向かいながらセレは壁に触れる。何度か叩いてみたが見た目よりもしっかりしていて余程のことが無い限りは崩れなさそうだった。
「すごいけど……崩落したりしないよね?」
セレの記憶にある地下室と比べても謙遜はないのだが崩れるのを想像すると身震いしてしまった。
セレはグールだが未だに大怪我した経験がない。なのでニクスがいれば回復できるとわかっていても怪我をすることで感じる痛みに恐怖したのだ。
戦うことに対する恐怖が薄れていても怪我をすることに恐怖しているのなら意味が無い。どうせだったらそっちの恐怖も緩和してくれればいいのにとセレは誰に言うでもなく呟いた。
だが実の所、セレの心配は杞憂だった。
アジトの壁は何度も土を叩きしっかりと固めたあとに魔術がかけられ土埃一つ立たないほど強固なものになっている。さらにその上に木の板で補強しているという念の入り用だった。
これだけしてあるのだから崩落の危険は皆無なのだが生憎それをセレが知る由はなかった。
アジトの入り口は通路に比べ小さかった。幅はともかく高さは150センチほどしか無く身長が190センチはあるであろうギオデンはその扉を通るときにしゃがまなければ通れない大きさだ。
これは入り口を低くすることにより進入してくる敵の勢いを削ぐための工夫であったが普段は使いづらいことこの上なくギオデンがめったにアジトに顔を出さない理由の一つだった。
扉に手を掛けるとなにか忘れていたのか「おっといけねぇ」とギオデンは振り向いた。
「言い忘れてたがレジスタンスのリーダーはかなりの大物だ。 驚くなとは言わねえがあまり騒ぐなよ?」
「わ、わかったわ」
「俺はその辺疎いんでなんとも」
ギオデンの明らかに緊張させるために言ったであろう言葉にニクスは緊張しながらも返事をしたが、セレはいまいちピンとこないのか頬を掻いていた。
対照的な二人を見てギオデンはニヤリと笑う。
「ようこそ、レジスタンスのアジトへ」
扉をくぐった先は大広間だった。そこに足を踏み入れた途端、セレとニクスに部屋中から鋭い視線が向けられる。
部屋の中にいたのはレジスタンスの中でも特に影響力のある、言わば幹部といった役職に付いている者たちで実力もそれなりにある者たちだ。
どうやらギオデンはレジスタンスの中で信頼を置かれている人物のようで部屋に入ってきた見知らぬ人間がギオデンの連れだとわかると鋭い視線は止み部屋にいた人たちはいっせいに「自由のために!」と唱えた。
二人に向けられる視線から敵意はなくなっていたが代わりに興味に満ちた視線が浴びせられた。
若干居心地の悪い思いをしながらセレとニクスは何度も声をかけられそのたびに律儀に返事を返すギオデンの後についていった。
大広間の奥に目的地はあった。確かにここまで奥にある部屋ならば重要人物が暮らすには最適だろう。もっともそれは安全面だけを見た場合だが。
部屋の中に入った三人を出迎えたのは椅子に座った端整な顔立ちをした金髪の青年だった。穏やかな顔付きながらどこか常人とは違うオーラを放っている。
青年の側には髪に白髪の混じった初老の男性が控えていた。初老と言っても背筋はピンと伸びまだまだ現役だと全身で主張している。
その青年とが只者でないことは事前に大物だと言われたこともありこちらの世界に疎いセレにもわかった。
「ギオデン、そいつらは誰だ?」
口を開いたのは青年ではなく隣に控えていた男性だった。おそらくその青年の付き人のようなものかとセレは考えた。
もしかしたら執事かもしれない。
「客だよ、コンスタンス。 オルンの娘ニクスとその従者のセレだ」
ニクスは父親の名が出てきたことに驚き、セレは従者という表現がなかなか的を射ていると満足そうに頷いた。
オルンの娘と聞くとコンスタンス呼ばれた男は心底驚いたような顔をした。
「オルンの!? そうかその子が・・・。 無事でよかった」
「パパの・・・いえ父のことを知っているのですか?」
ニクスの問いにコンスタンスは昔を懐かしむように目を細めた。
「ああ、知っているとも。 軍属だった彼とわしは会う機会も多くてなかつてのオーク族との戦いでは共に戦場を駆けたものだ」
「駆けた? 魔術師が戦場を駆けるもんか。 戦場を走り回ったの間違いだろう?」
「話に水を刺すな。 とにかくわしとオルンは戦友だった。 教団に処刑されたと聞いたときは耳を疑ったが・・・」
コンスタンスは今でも信じられないといった風に首を振った。
どうやらオルンは軍の中でも人望を得ていたらしい。なら軍人の中にも教団の行いに不満を持っている者もいるだろう。戦友が無実の罪で処刑されたのならなおさらだ。
「そういえばコンスタンス報告しとくことがある。 実はさっきここに来る時のことなんだが・・・」
「(そういえばさ)」
ギオデンはなにやら報告を始めてしまったのでセレは隣にいるニクスに小声で話しかけた。
「(なによ、こんなときに)」
「(ニクスのお父さんって死霊術士だと思ってたんだけど魔術師だったの?)」
「(そういえばその辺のことは詳しく説明してなかったわね。
簡単に説明しちゃうとあたしみたいに死霊を操るのも火や水を操るのもみんな纏めて魔術なの。 だから使う魔術が何であれ魔術を使えるならみんな魔術師ってよばれるわけ。
死霊術士っていう呼び名は死霊術っていう一つの系統の魔術を極めた魔術師なんかが呼ばれるわ)」
「(じゃあニクスってすごいんだ)」
「(当然!・・・っていいたいけどあたしは結構独学の部分があるから正確には死霊術士”見習い”ってとこね)」
「ふむ。 失踪か・・・確かに何件か報告されているな。 わかった、気をつけよう」
どうやら報告は終わったようだ。セレとニクスは喋るのを止め、意識を
「そうしな。 じゃねえと大事な王子様も攫われちまうぜ?」
「王子?」
ギオデンの思わぬ言葉にニクスはつい口を挟んだ。途端に向けられた視線に赤くなって縮こまる。
コンスタンスは「話してないのか?」とギオデンに視線を向けたがギオデンは堪えるように笑いながら首を振るだけだ。
おさらく最初から驚かせるつもりだったようだ。
「どうせお前のことだ、どうせ驚かそうと黙っていたのだろう? ニクス嬢とセレ君だったかな。 わしの名はコンスタンス・フレミング、魔術師だ。
そしてこちらにおわすのが・・・」
「じい、自分の名前くらい自分で言える」
「ですがあなた様は」
「今は違う。 僕は死んだことになってるんだからな」
屁理屈気味にそう言い返すと青年は自己紹介をするために椅子から立ち上がった。
「僕の名前はレオナルド・クロムウェル・オルフィリア。 オルフェリア聖法国の元王子だ」
「王子って・・・・・・4年前に事故で亡くなったはずじゃ?」
そう言った後にニクスは自分が王子に向かって失礼なことを言ったことに気づき慌てて謝った。
それにコンスタンスは顔をしかめたがレオナルドは「構わない」と一言言いニクスの疑問に答えた。
「そう公表させたんだ。 そうすることで奴らの目から逃れたんだ」
「奴ら? 奴らってもしかして」
その疑問にはギオデンが答えた。
「教団だ」
それを引き継ぐようにコンスタンスが話を続ける。
「奴らは卑劣にも王子を事故に見せかけ暗殺しようとしたのだ。 幸いにも一命は取り留めたが教団が王子が生きていることを知ればまた狙ってくるだろうことは十分に考えられた。
そこで我らは王子が亡くなったことにして奴らから王子を隠したのだ」
「よく教団から隠し通せましたね。 王子様ともなれば捜索は徹底して行われると思うんですが」
「奴らは自分たちが神に選ばれし者だと思い込んでるのだ。 だからあいつらにとってすべてのことが万事うまくいって当たり前なのだろう。 わしが責任を取り王宮魔術師を辞したことも奴らの能天気さに拍車をかけてるのだろう」
教団員の能天気さにセレは呆れ返った。この世界のことに学ぶ際にこの世界に伝わる神話に触れたことがあったが―――どれも大まかなことしか書かれておらずこれでいいのかと叫んだのは記憶に新しい―――アノマール教とは関係が無かったはずだ。
もっとも故郷に伝わる神話と似通ったものだったのには驚いたが。故郷とこの世界はなにか関係があるのだろうか?
それはともかくそもそも教団が信仰しているのは聖女アノマールである。なのに何故神が加護を与えてくれると思えるのだろうか。
たとえ本当に聖女が神に選ばれた存在だったとしてもそれを信仰しているだけの唯の人間が特別だというのは所詮彼らの妄想でしかない。その妄想で自信満々になっているというのはもはや哀れみすら感じる。
思考を中断したセレはさらに情報を得るべく質問を続ける。
「教団はなんで王子の暗殺を?」
「それは僕が教団に利益をもたらさないとわかったからだろう。 ・・・僕は今のこの国の体制はおかしいと思っている。
人間が他の種族よりも優れているということも、他種族を受け入れないのも間違っていると僕は思う。 だからこの国を変えたいんだ」
「王子様の考えは教団のありがたい教えとは相容れませんからねえ」
「茶化すな、ギオデン。 ギオデンの言うとおり王子の考えは教団の教えとは相容れん。 だから教団は王子を・・・レオナルド様を暗殺することにしたのだろう。
教団にとって幸いなことにレオナルド様の妹君は教団が大のお気に入りだからな」
セレは自分の中でピースがはまっていくのを感じた。
つまり教団は思い通りにならないレオナルド王子より思い通りになる姫君を担ぎ上げたいのだろう。
(反吐が出る・・・)
セレは心の中で吐き捨てた。口に出さないのは目の前に王子がいることに配慮してだったがセレの心中は教団に対する嫌悪感で染まっていた。もっとも元々良い感情は持っていなかったのだが。
それと同時に当然かという考えもあった。どのような組織であっても人が運営する以上は欲が絡む。欲は時が経てばたつほど強まり最後にはその組織を破滅へと追い込むのだ。
だが教団のように宗教のような大きな力によって守られている組織というものは余程のことがない限りは破滅しない。そのため格好の欲の溜まり場になる。よく物語で宗教が悪く書かれることが多いのはそのためなのだろう。
「それでニクス嬢とセレ君は何のようで来たのかな?」
コンスタンスが改めてここに来た理由を訊ねるとその問いに答えるためニクスは一歩前に出た。
「あたしたちはレジスタンスに協力してほしいことがあって来ました」
「ふむ、その協力してほしいこととは?」
口を開こうとして一瞬ニクスは躊躇った。
(この言葉を口にすれば・・・もう後には引けない)
そう考えると体が震える。怖いのだ。無意識のうちにニクスはセレに視線を向けた。
向けられた視線に気づくとセレはニクスの目を見て頷いた。
―――たとえ何があろうとも共に。そんな意味を込めた頷きだ。
それを見たニクスは決意を新たに前を向いた。
「あたしたちは教団に奪われた死霊術の資料を取り戻そうと思っています。 その手助けをしてほしいのです」
「資料を取り戻す? どこにあるのかもわからないのにか?」
「・・・はい」
「城を攻めることになるぞ?」
「・・・・・・」
―――城攻め。
城を落とすには相手の三倍の兵力がいるというのは間違いではない。余程兵の質に差があるかとんでもない奇策を用いない限りその法則は崩れない。
それは現状では無理なのは誰が見ても明らかだ。兵の数も質も負けているレジスタンスではたとえ総力を挙げたとしても攻め落とすのは不可能だ。
それに加えレジスタンスは現在とある作戦を実行しようとしており大々的には動ける状況ではなかった。
「ニクス嬢、わしも教団を何とかしたいと思っているし、旧友の娘に最大限の協力をしたい。 だが戦力が足らんのだ。
レジスタンスを取り巻く状況ははっきり言って厳しい。 この街を見てみなさい。 皆、何もかも教団に奪われ困窮しているのだ。
戦おうにも武器は碌に配備できず食料も密かに商人たちが格安で売ってくれているからこそ賄えている。 だがそれも限界が近い」
次々とコンスタンスの口からレジスタンスの現状が語られる。セレが懸念していたとおりレジスタンスに一国を相手に戦う力は無かったのだ。
それでも彼らは戦っていた。虐げられるものを守るために。奪われたものを取り返すために。
だがそれも限界だった。
「わしらはこの街から脱出する計画を立てていてな。 一部の兵を決死隊として残しその隙にレジスタンスと貧民街の住民をノス向かわせるつもりだ。
幸いにしてかの自由都市も我らに賛同し教団と戦うと言ってくれた。 そこでなら準備も十分にできる・・・それまで待てないだろうか」
ニクスは俯いた。確実な手を取るならコンスタンスの言うとおりにしたほうが良いだろう。
だがニクスにとってこれ以上父親の遺した死霊術が教団に利用されるのは耐えられないことだった。
理性ではわかっている。だが感情が納得できていない。それゆえに彼女は俯き続けることしかできなかった。
そんな彼女に救いの手を差し伸べたのは他ならぬ彼女の従者だった。
「コンスタンスさん、いくつか質問をしていいですか?」
「ああ、かまわんよ」
「ここからノスまではどれくらいの距離が?」
コンスタンスは質問の意図が理解できなかったがそれに答えた。
「順調にいけばおよそ20日で着く。 ミスナスから出るだけなら12日あれば十分だが」
「そこに着くまで食料は持つんですか?」
「正直に言うと心もとない。 資金さえあれば食料は手に入るのだが・・・」
「じゃあ最後に、これはお金になります?」
セレは革のジャケットをコンスタンスに見せた。これはセレがこの世界で目を覚ましたとき身に着けていたものだ。
セレに物の価値を見る目は無い。だが少なくともそれはこの世界に一つしかない衣服だ。ある程度の価値は付くとセレは予想していた。
「これは・・・見たことの無い造りだな。 素材が革だとはわかるが既存の物とはまったく違う。 ふむ、どこでこれを?」
「俺の故郷の品です、詳しいことはちょっと・・・。 それでこれ売り物になるんですか?」
「ああ、なるとも。 この服自体の出来も見事ながら製法は他に例を見ない。 商会は大金を出してでもこれを欲しがるだろうな」
「そ、そこまでの物なんですか!?」
「ああ。 珍しさもさることながら未知の製法が使われていると言うことが大きい。 商会は常に新しい技術を求めておるから金に糸目はつけんだろう」
ニクスは自分のパートナーとも言える少年が気軽に着ていた服にそこまでの価値があることに眩暈を覚えた。そこまで大事にされていなかったのだからなおさらだ。
セレにとっても珍しいだろうからそこそこの価値が出れば良いと考えていた物に遥かに高い値が付いたのは正直予想外であった。
―――だがこれでセレの目的を果すには十分すぎる対価となったと言える。
「王子様、その服で食料を買ってください。 どれほどになるかはわかりませんが多少は負担を減らせるでしょう」
「それは助かるよ。 だがこれほどのものを貰っておいて何も返さないのは僕としては心苦しいな」
(よし! 予想通りだ)
セレは先ほどの言葉からレオナルドが本質的にはお人よしであると見抜いていた。
賭けだったのは否めないがそんな人間に対価もなしに高価なものを渡すと言えばこう返してくるのは予想できた。
セレは決定的な言葉を引き出すためにさらに賭けに出た。
「なら代わりに戦闘用の弓と矢、それとできれば剣を。 あー、それとニクスにもなにか装備を」
「武器のことならわざわざ対価にしなくても渡そう。 共に教団と戦う仲間だからな。
ほかに何か無いかい? 今の僕たちに出来ることは少ないが出来る限りのことはさせてもらうよ」
その言葉を聞くとセレはニヤリと笑みを浮かべた。
――――言質取ったり!
「じゃあ俺たちが何をしようとも止めないって約束するのはどうでしょ? あ、拒否するならこの話は無かったってことで」
「なっ・・・」
「セレ、それって――――」
「ふふん、主の願いを叶えるのも従者の役目だからね」
―――嵌められた。コンスタンスは己のミスを悟った。
セレがレオナルドに交渉した時点で気づくべきだった。セレはレオナルドとコンスタンスに自分たち二人とレジスタンスを天秤に掛けさせたのだ。
二人の安全を優先するか、レジスタンス全体の負担を軽減させるか。答えは決まりきっていた。
組織の上に立つ人間は私情で動いてはいけないのだ。それでも
「それと城の見取り図があればそれもください」
「見取り図? 何のために・・・・・・まさか城に潜入するつもりなのか?!」
「正面からが無理なら忍び込めってことです。 教団が何かを企んでいる決定的な証拠を見つけなくちゃ教団を叩ききれずにまた同じことが繰り返されるかもしれません。
『虎穴に入らずんば虎児を得ず』。 危険覚悟でやんなきゃ本当に欲しいもんは手に入りませんよ」
「だが・・・」
「諦めろよお二人さん。 こいつらはどうせ止めても勝手に行っちまうだろうよ」
笑いを堪えながらギオデンがレイモンドを止めた。コンスタンスもため息を吐きながらそれに同意する。
「だろうな。 ・・・ならばせめて決死隊が攻撃を開始するのに合わせて忍び込むといい。 隠れ蓑になるだろう」
「おっと、そんときゃ俺もついてくぜ。 友人の娘と勇敢な少年を死なせるわけにはいかねえからな」
「それとブレンダを連れて行くといい。 諜報員だった彼女なら城に忍び込む道にも詳しいだろう」
その気遣いにセレとニクスは黙って頭を下げたのだった。
話が終わった後ギオデンは用事があるらしく別れた。なんでもニクスに渡さなくてはいけないものがあるらしい。
その際にアジト内にあるギオデンに割り当てられている部屋(ギオデンは普段使ってない)を貸してもらいここに滞在している間はそこで暮らすことになった。
路銀は正直心もとなかったらしくニクスは安堵の息を吐いていた。もっとも部屋にあったのはベッド一つだけだったのでもう一枚毛布を貰いにいく羽目になったのだが。
支給された夕食―――しょっぱい味付けの硬い肉と一切れの黒パンだった―――を食べてから毛布に包まり床に寝転がるとすぐに眠気が襲ってきた。
(そういえば屋根のあるところで寝るの三日ぶりか・・・これから先どれだけ安らかに寝れる機会があるのやら)
旅で疲れていたせいかあっという間に意識は沈んでいった。
今回は難産だった。まさか4回も書き直すことになろうとは。
誤字、脱字、展開が明らかにおかしいところがあればぜひ教えてください。