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命と魔法と代償と

この小説には転生、主人公最強、等々と一部の読者様にとって不快な要素が含まれています。

読みたくないという方はブラウザバックをお勧めいたします。

 魔法――それは不可能を可能にする超科学。あらゆる物理法則を乱し、見るもの全てを魅惑させる、種も仕掛けもない、進みすぎた技術。

 しかしそれにも限界があり、また、説明すらつかない力が突如現れた世界で起こる出来事というものはロクなことが起こらない。

 恐らく、魔法を知る人間はそれを恐れて、魔法を広げようとはしなかったのだろう。

 その結果、魔法はごく一部の人間にしか知られない、秘術となっていた。


 ……しかし、これから起こる『戦争』は否応が無しにその存在を暴き、世界を混乱させる破滅への鍵になるとは、魔法使いの民たちは知る由もなかった。


 ――西暦2024年3月5日。

 『悪魔の交差点』は、生贄を貪欲に求め、春一番と共にその命を浚った。

 その名はこの世界に点在する、命を奪う狂気のスポットのうち一つであることからついた、渾名。交差点で事故が起こることは別段不思議ではない、だからたかが都市伝説に過ぎない。

 オカルトマニアからすると、死んだ日付そしてその場所の関連からして、明らかに神の仕業らしい。当然そんな与太話をやすやすと信じる人間が多いわけもなく、すぐにその話題は日々の忙しさとともに消えてしまった。


 天界。それは人間が勝手に作り出した聖なる領域ではなく、ただ生と死を司るための祭壇。

 故に神々しさも、眩いほどの光もなく、そこはただの暗がりだった。


「……雨宮沙耶(あめみやさや)皇朱里(すめらぎあかり)夕霧奏(ゆうぎりかなで)叢雲奈々(むらくもなな)神楽唯(かぐらゆい)。汝らは我に従い互いに戦うことを誓うか」


「誓います」


 一人の男の声が聞こえた後に、5人の女性の声が同時に響き、契約の成立を告げる。

 漆黒よりも暗い、何も見えない空間から一変、どこからともなく光が灯され、周囲の全貌が明らかになる。五角形の頂点の上に白の死に装束を纏った少女と、その中心に立つフードを被った男、そして円の中に五芒星が描かれた、魔法陣のような跡がある、地球の中とは思えない不思議さを醸し出す部屋だ。


「今、契約は正式に交わされた……。我の力に恥じぬ戦いを期待する。転送ゲートは一日で開く、それまでは自分の好きなように天界を見るがよい。言えば、地界の様子も見せてくれるだろう」


 それだけ言い残してフードの男は消える。彼が消えても少女たちはお互いを睨み付け、威嚇するように無言で牽制し合っていた。




 ――転生。

 彼女たちはみな「悪魔の交差点」を始めとする狂気のスポットで同じように交通事故に遭い、この天界に集められた。

 神――ディアボロスは言った。「貴様等の命、救ってやらんこともない。我の遊びに付き合え」と。

 少女は縋った。不運にして閉じた人生を再び続けられるのなら、

 あの快楽をもう一度味わえるのなら、

 あの感動をもう一度見られるのなら、

 あの人々にもう一度会えるのなら――。

 他人のことなど知らない。ただ、自分の幸せの為に。

 不条理を、正すために。


「転生、かぁ……信じられないな……」


 青髪のサイド・ポニーテールが彼女の溜め息を吐く挙動に連動して揺れる。

 幼さが全面的に表れた童顔は、目の前の事態を受け止めてか、やや難しそうな表情をしていた。ちらりと死に装束から見える胸には交通事故に遭った痛々しい傷痕が残っている。

 雨宮沙耶――ディアボロスの『遊戯』の参加者だ。彼女はディアボロスの問いにいち早く答え、迷いもなくゲームへと身を投じていた。それもゲームから脱落することに対するペナルティを聞いたうえで、だ。


 彼女には持論があった。起きたことは仕方ない、これからをどうするかが、人生の鍵だ、と。

 それは僅かな希望だ。仮に他にディアボロスの遊びに付き合う人間がいたとして、それなら命を欲しがる他の少女達も本気で遊戯の勝利者になろうと躍起になるはずだ。なぜならこの遊戯で勝った人間には「元の身体で事故に遭う前の時間軸に戻れる権利」を手にすることが出来るからだ。その上、自分の願いを一つ叶えてくれるとなると、それだけを聞くと分のいい賭けにしか聞こえない。負ければゲームへの参加費を払うことになる……具体的に言えば、輪廻を断ち切られ、ディアボロスの奴隷としてその生涯を過ごすこととなるが、そればかりを見て辞退するか?

 彼女の答えは否定だった。勝てる勝負があるなら、望みがあるならとことん突き詰める――それが沙耶の生き方で、また座右の銘だった。


 

「お母さん……みんな……」


 ただ、死亡したという事実は、現時点では沙耶の心に重くのしかかるばかりで、不安要素を増やすだけの悩みの種にしかなっていなかった。

 家族がいて、友人がいて、師がいて。彼ら彼女らは彼女の死をほぼ間違いなく悲しむだろう。そのことを知っていて、なお自分がまだ生き返れるチャンスを持っているという事実を伝えられずにいるのが沙耶にはたまらなかった。

 沙耶しかいない、真っ白な部屋の中で、沙耶は涙を落とした。泣いたところで事態が変わるわけでもないことを知ったうえで、それでも泣いた。世界からすべてを奪われ、僅かな希望にしか縋れない自分の弱さを知り、絶対に勝って、平穏な日常を取り戻すことを自らに誓い、それから再び心のままに泣き叫んだ。

 というわけで「転生少女は真実の世界を見るか?」開始です。主人公は雨宮沙耶。その他四人の転生少女、ディアボロス、そしてまだ見ぬ登場人物にもこうご期待、というところです。


 この作品を作ったきっかけが、ツイッターのとある会話で「最強設定、転生もの自体は悪くない、しかしその設定を生かし切れていないものが多すぎる」というのを見て、それから俺はこの作品を書き始めることにしました。自分の作品を見てもらって、転生ものへの新たな見解を見出してくれると幸いです。


 さて、ちょこっと作成秘話でも。

 この小説を作るにあたって、友人にアドバイスをいくらかもらいました。俺だけでは浮かばない考えも多数あったために引き出しが増えた、と感じましたね。

 やはり人の考えを聞くことは大切ですね。

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