第99話 再契約
Side:マニーマイン
「いらっしゃい。カレーなら作り置きがある。いま温めるよ」
「そんなことより。氷の魔道具を頂戴。できるでしょう」
「慌てないで、腹が減っては戦ができないし、魔法も発動できない」
「マギナさん、でしたよね。一刻を争うんです」
「マギナ、カレー盛ってやれ」
「ええ」
シナグルが魔道具を作り始めた。
私の目の前にはカレーライスがある。
もうやけくそよ。
おまけにカレーライスには揚げ物が載っていた。
「カツカレー、美味しいわよ」
カレーの掛ったカツを食べる。
美味しい。
揚げ物とカレーがよく合う。
そしてライスにも。
三位一体ね。
焦りが消えていくような気がする。
私はシナグルに、状況を説明した。
なるべく簡潔に。
「でこれがみんなのお金か。銅貨しかないな。だが希望が欲しいという望みは受け取った」
「ありがとう。これで何もかも上手く行く気がする」
シナグルが核石を作り始める。
「コチン、コチン♪カチン、コチン、カチン、コチン♪コチン♪。カチン、カチン♪コチン、カチン♪カチン、コチン、カチン、コチン♪コチン、コチン、コチン、コチン♪コチン、コチン♪カチン、コチン♪コチン♪。カチン♪コチン、コチン、コチン、コチン♪コチン、カチン♪カチン♪。カチン、コチン、カチン、コチン♪コチン、カチン♪カチン、コチン♪。カチン、カチン、カチン♪カチン、コチン♪コチン、カチン、コチン、コチン♪カチン、コチン、カチン、カチン♪。カチン、コチン、コチン、コチン♪コチン♪。コチン、コチン、カチン♪コチン、コチン、コチン♪コチン♪カチン、コチン、コチン♪。コチン、コチン♪カチン、コチン♪。カチン、カチン♪コチン、コチン♪カチン、コチン♪コチン♪。コチン、コチン、コチン♪コチン、コチン、コチン、コチン♪コチン、カチン♪コチン、コチン、カチン、コチン♪カチン♪コチン、コチン、コチン♪。おっ、一発で上手く行った気がする」
そういうとシナグルは、ピッチャーに核石と溜め石と導線を取り付けた。
起動するとピッチャーが氷で一杯になった。
ひとつ摘まんで口の中にいれる。
カレーライスで辛かった口の中が洗い流され冷えていく。
カレーライスには氷水。
今度からシナグルにはそう注文しよう。
そして、シナグルは同じ物を10個作った。
私はそれを背負い坑道に戻った。
「みんな生きる希望の氷よ」
私は声を張り上げた。
「くれ、うひゃあ、冷たい」
「生き返るな」
「これなら褒美の銅貨を叩いた甲斐がある」
奴隷達は氷をしゃぶり、歓喜の声を上げた。
氷を持ってリーンの所に行く。
そしてスープにそれを入れてかき回した。
「冷たいスープよ。冷たすぎるのも体に毒だから、氷は3個ね」
リーンはスプーンをスープに入れると食べ始めた。
「冷たくて美味しい」
「そうでしょ。これがみんなの希望よ」
些細な希望だけど。
氷の魔道具は取り上げられたが、坑道の外では使えない仕組みになっているみたい。
坑道に戻された。
「おい、採掘現場を氷まみれにしようぜ。どうせ普段は魔力なんざ使わない」
運搬役の奴隷がそんなことを言い始めた。
私達は魔力を戦闘に使うけど、他の人はほとんど使わない。
「大目に見てやれよ」
バイオレッティらしくないけど、まあ良いか。
氷が地面に撒かれた。
涼しくなった気がする。
採掘も捗るから、いいアイデアだったのかも。
足が振動を伝えてきた。
ロックワームの登場ね。
涼しい今なら楽勝かも知れない。
頭を出したロックワームの動きがおかしい。
これはもしかして、動きが鈍いって言うのかしら。
動きが鈍いロックワームをタコ殴りにした。
スキルを使う必要すらなかった。
原因は氷ね。
温度を何度か下げただけなのに、こんなに効果があるの。
リーンを生かしたいと作ってもらった魔道具だけど大当たり。
これならあの空間の群れも倒せる。
まさに生きる希望ね。
こうなったら、あのモンスターハウスの空間を制覇するしかない。
あの場所の土砂を取り除いて、監督官を呼んだ。
「でかした。全員に銀貨1枚の小遣いを出す。絶対に全部のミスリルを採掘するんだ」
奴隷が大幅増員され、やせ細った奴隷は普通の土地の救護所に連れて行かれた。
さあ、ギガロックワーム退治よ。
装備も剣などの使い慣れた物が許可された。
あらかじめ備蓄しておいた氷が次々にモンスターハウスに運び込まれる。
やがて段々と温度が下がり始めた。
奴隷の数だけは多いから、氷を作る魔力には事欠かない。
どんどんとロックワームが退治されていく。
ギガロックワームね。
「シャギャャャア」
「【俊足】【斬撃】【斬撃】【斬撃】【斬撃】。ほら動きが鈍いわよ」
「【身体強化】【鋭刃】。ミミズ野郎は死んで土に還れ」
ギガロックワームは流石に硬い。
動きが鈍いと言ってもかなり強敵。
「【挑発】。口を開けたな。みんな氷を放り込め」
ずた袋に氷を詰めた物がギガロックワームの口の中に放り込まれた。
みると他の奴隷も、ロックワームに対して同じ戦術をとっている。
「もらった【斬撃】」
私はギガロックワームの傷口を大きく広げた。
体液が飛び散り、ギガロックワームはぐったりとした。
どうやら勝ったようね。
他の奴隷も善戦している。
私達は他の奴隷に加勢した。
そして、動いているロックワームはいなくなった。
弱点を突けばこんなものよね。
ほとんどの奴隷が、解放された。
とうぜん私達も解放された。
「これからどうする?」
バイオレッティが尋ねた。
「ここに残るわ」
「奴隷しかあの治癒の十字架は効かないんだろう。それでも残るのか」
「ええ、治癒の魔道具だったらシナグルにねだるわ。奴隷以外にも使える奴をね」
「なんでだ?」
「療養してた奴隷はまだ解放されてないわ。今回のミスリルの氷柱の採掘に携わってないから」
「まあ、そうだな」
「彼らも仲間よ。仲間は見捨てない」
「そうだな。仲間を見捨てたらもう冒険者じゃない。そういう奴はクズだ。シナグルは追放したが、あれはただ追放しただけだからな」
「ええ、譲れない一線だと思うわ」
パーティメンバー全員が残ることになった。
奴隷主と奴隷契約でない普通の契約が結ばれた。




