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第89話 見張り

Side:シナグル・シングルキー


 ソル、スイータリア、マギナ、ピュアンナがおかしい。

 この4人が連れだって工房を訪れるのだ。

 4人同時に何で来る。


 示し合わせているのか。

 今日も来てたわいのない話をして去って行った。


 まあ、別に良いんだが。

 それにお客さんが来るとすぐに帰る。

 邪魔しないのなら問題ない。


「えっ」


 何の気なしに外を見たら、マギナが立ってた。

 そして、何時間かすると今度はソルが、そしてスイータリアが。

 交代で俺を見張っているのか。

 くっ、なんだこの外堀を埋められて行く感。


「入れよ」


 立っていたスイータリアに声を掛けた。


「てへっ、ばれちゃった」

「順番なんだろう。後の3人にも報せて、交代で店の中にいて良いよ」

「やった。報せてくる」


 何のために見張っていたかは聞かない方が良さそうだな。

 店が賑やかになった。

 花があるとやっぱり違うな。


「あたいが思うに、折れない剣が最強なんじゃないか」

「そういう魔道具は既に作っているよ」

「じゃあ、防御できない剣は」

「それも作った。次元斬という魔道具をな」

「やるねぇ。それがシナグルの最強か」

「いや、このコインは神の力が込められているらしいけど、この金属で剣を作ったら強いかもな。ひとつやるよ」


「おお、神の力か。そう思ってみると神々しいぜ。あたいの剣の柄に埋め込むことにするよ」

「神剣になったりしてな」

「まさかね」


 次は、マギナか。


「ソルにもあげたが、神のコインだ」

「くっ、出遅れた。なんで私が一番目じゃないのよ」

「4人一緒に渡した方が良かったか」

「この順番は特別な物じゃない」

「えっと、何か力を感じる気がする。杖につけようかな」

「ソルは剣に付けるらしい」

「またしても」


 次はスイータリアか。


「みんなにあげたが、神のコインだ」

「やった。メアリのペンダントに仕立てよう」

「人形に意思が宿ったりしてな。考えたら怖いな」

「神様の力なら悪い子になったりしないわ。メアリは今も良い子だし。コイン大事にする」

「うん、大事にしてくれ。そう頻繁に神と取引するつもりはないから」


 次はピュアンナか。


「神のコインだ。やるよ。日頃の感謝の気持ちだ」

「これって、神器とか呼ばれる物ですよね。国宝も国宝、超国宝なのでは。SSSランク確定のお宝」

「そこまで大袈裟じゃないさ。麦を売った代金だ」


「あれっ」


 マニーマインが転移扉から現れた。


「同盟発動です。あなたシナグルとの関係は?」

「幼馴染だけど」

「くっ、圧倒的アドバンテージ」


「マニーマインは何で?」

「治癒の魔道具が壊れたから」


「そうだ。マニーマインにもコイン渡しておくよ。神のコインだ」

「そんな貴重な物を」

「そうよ、この女には勿体ないです」

「死んで欲しくないからな。幸運が必要そうだったし」


「あなた敵ね。私達4人が相手よ」

「あなた達と仲良くなりたいのだけど」

「同盟に加わるの。シナグル、奥を借りるわ」


「じゃあ、俺は魔道具を仕上げておくよ」


 奥でどんな話し合いが行われているか分からないけど、あまり険悪になって欲しくない。


Side:マギナ・トゥルース


 私は、ソル、スイータリア、ピュアンナを集めた。


「集まって貰ったのはシナグルのこと。私達、張り合う関係だけど、このままだと他の人に漁夫の利を得られてしまう」

「何が言いたい。はっきり言えよ」

「ソルはせっかちね。同盟を結ぼうと思うのよ。恋愛同盟」


「何か楽しそう」


 スイータリアはそう言うわよね。

 だって、年齢が圧倒的に足りてない。

 時間稼ぎする必要があるものね。

 そして、時間稼ぎすれば、その年齢が有利に働く。

 男はみんな若い子が好きだから。

 ううん、シナグルはそんな人じゃない。

 ごめんと、心の中で謝った。


「加盟するかはどんな規則を作るかによりますね」


 ピュアンナらしい考えね。


「あたいはそういう規則は嫌いだ。だけどよ、ルールがある奴は強い。死亡フラグで学んだぜ」


 死亡フラグが何なのか分からないけど、ソルはルールに縛られるのはありって考え方か。

 意外ね。

 でも何となく分かる。

 考えなしではソルみたいな人は早死にする。


「まず、みんなでシナグル工房を交代で見張る。会うのはみんな一緒。誰かが結ばれたら、祝福してあげる。あわよくば全員でお嫁さんになる」

「そういう可能性もあるな。貴族だからよ。多妻の権利を持っているからな。でもあたいは一番を目指すぜ。誰かの後姿を拝むのは性に合わない」


 一番を目指したいのは誰も一緒。

 でも不毛な争いは避けないとね。

 たぶん、そういう争いをシナグルに見せたら、好感度が下がる。


「一番を目指すのは当然として、わたしはシナグルお兄さんのお嫁さんになれるのなら、他に妻がいても良いわ」


 スイータリア恐ろしい子。

 年齢の有利さを分かっている。

 一番長く愛されるかも知れないからね。


「同盟のルールはそんな感じで良いですが、他の女が現れたらどうします」


 そうね、それが一番怖いわ。

 そういう場合に同盟が活きるのよ。

 4人で立ち向かえば、強敵もたじたじになるはず。


「もちろん妨害する。強敵だったら同盟に加えるのでどう」


「ルールに関してはあたいは文句ないぜ」

「私も別に良いと思う」

「落としどころとしては良いと思います」

「みんな、賛成のようね。決まりね」


 恋愛同盟成立。

 これが吉と出るかは分からない。

 でも、きっとシナグルのためにはこれが一番いい。


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