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第56話 ラージアント

Side:シナグル・シングルキー

 冒険者ギルドから指名依頼が来た。

 指名依頼は強制依頼と違って断れる。

 だが、依頼料の半端な数字を見て受けることにした。


 金額は金貨5枚と大銀貨7枚と銀貨2枚と銅貨3枚。

 どうやって工面したか目に見えるようだ。

 村中の金をかき集めたに違いない。


 依頼はラージアントの撃退。

 撲滅まではできないと見たのだろう。

 ラージアントは人間ほどの大きさの蟻のモンスターだ。

 とうぜんその巣穴もその大きさだ。

 巣穴の中に入って討伐するには這って進まなければならない。


 普通で考えたら無理。

 なので巣の出入り口で待ち構えて討伐するというわけだ。

 ある程度の数を狩ったら終わりにして良いという依頼。


 難しいのは1匹倒すとわらわらと増援が現れことだ。

 Aランク辺りでも囲まれたら危ない。

 360度からの攻撃には耐えられないからだ。


 1匹ならDランク、巣穴だとAランクまで難易度が跳ね上がる。

 そういうモンスターだ。


 こんなの正攻法ではやってられない。


 巣穴から離れた場所でまずは偵察だ。

 たまに巣穴からラージアントが餌を探しに外に出る。

 予想通りだ。

 村人が俺の様子を窺っている。


「冒険者様、父ちゃんの仇を討って下さい」


 超短髪の少年が近づいてそう言ってきた。

 歳の頃は10歳ぐらいだな。


「坊主、名前は?」

「ジニアス」

「ジニアス、良い名前だ。じゃあ、一緒にやるか」


 俺は巣穴を近くに、収納魔道具から出した直径2メートルはある小麦粉団子を置いた。

 少年が小麦粉団子を巣穴の出入り口近くに転がす。


「偉いぞ。足音を立てずに戻って来い」


 村人が遠巻きに俺の様子を見ている。

 この小麦粉団子にはホウ酸と砂糖をたっぷり入れた。

 効くと良いのだが。

 ポーションと交換で材料が手に入って良かったよ。

 赤字になるのもなんだからな。


 俺達も村人の所まで退いた。

 ラージアントはホウ酸団子を千切ってせっせと巣穴に運び始める。


 上手くいっているようだ。

 何時間か過ぎた。

 ここで魔道具の出番だ。

 作ったのは『Summoning the Corpse of the largeant』、ラージアントの死骸召喚だ。

 歌にすると『エッホ、エッホ、エッホ♪エッホ、エッホ、ホイ♪ホイ、ホイ♪ホイ、ホイ♪ホイ、ホイ、ホイ♪ホイ、エッホ♪エッホ、エッホ♪ホイ、エッホ♪ホイ、ホイ、エッホ♪。ホイ♪エッホ、エッホ、エッホ、エッホ♪エッホ♪。ホイ、エッホ、ホイ、エッホ♪ホイ、ホイ、ホイ♪エッホ、ホイ、エッホ♪エッホ、ホイ、ホイ、エッホ♪エッホ、エッホ、エッホ♪エッホ♪。ホイ、ホイ、ホイ♪エッホ、エッホ、ホイ、エッホ♪。ホイ♪エッホ、エッホ、エッホ、エッホ♪エッホ♪。エッホ、ホイ、エッホ、エッホ♪エッホ、ホイ♪エッホ、ホイ、エッホ♪ホイ、ホイ、エッホ♪エッホ♪エッホ、ホイ♪ホイ、エッホ♪ホイ♪』だ。


 魔道具を起動するとラージアントの死骸がひとつ絨毯の上に現れた。


「ひっ」

「心配は要らない。死んでるから」


 村人は枝を使って、死骸を突いた。

 突いたことで少し動くたびに悲鳴を上げる。

 臆病だな。

 いやそれだけラージアントの被害にあってきたのだろう。


「父ちゃんの仇を討てたかな」

「ステータスを確認してみろ」

「【ステータス】凄い上がってる」

「良かったな。仇が討てたんだ」

「うん」


「この死骸召喚の魔道具は好きに使え。ホウ酸団子もいくつか置いていくから」

「ありがたい」

「神様のようだ」

「あの金額ではできないはずだ」


 ラージアントの死骸を村人が召喚して村で解体した。

 ラージアントの外殻は軽くて良い鎧になる。

 駆け出しの必需品だ。


 どこで嗅ぎ付けたのか。

 商人が来ている。


「モールス様ですか」

「私、商人のリプオフと言います」

「ラージアントの死骸は村人に下げ渡した。あまり酷いことするなよ」

「しませんよ。まあ貴族からはぼったくりますがね」

「お前とは気が合いそうだ。はははっ」

「はははっ、そうですね。ラージアントの外殻で子供用鎧を作ります。貴族の子供達に使わせる予定です。ただ、黒は地味ですな」

「塗ると不味いのか」

「ええ、外殻は弾力があるので、木剣とかが当たると塗ったペンキが剥がれます」


 この商人は少し気に入った。

 手助けしてやろう。

 要は染み込ませないと駄目だな。

 『permeate』かな、『サッ、ペタ、ペタ、サッ♪サッ♪サッ、ペタ、サッ♪ペタ、ペタ♪サッ♪サッ、ペタ♪ペタ♪サッ♪』とクラッシャーを操作して核石を作った。

 そして、刷毛に核石と溜石をはめ込んで、導線で繋いだ。


「ペンキを塗ってから魔道具を使うと良い。ただし浸透させているから、地の色は出てしまう。金色や銀色の塗料が良いだろう」

「ありがとうございます」

「金貨10枚だ。核石の修理は金貨1枚にしてやる」

「安いですな」

「まあな。村人を潤わせてやれ」


 リプオフが村人から外殻を買い取る。


「うひゃあ、大銀貨だ。ラージアント1匹で大銀貨だ。宴会だ。宴会を開くぞ」


 村長がそう言って宴会が始まった。


「村長、ジニアスに所は母子家庭だろ。ラージアントが採れる間は、ジニアスの所に配慮してやれ。それとホウ酸団子の管理はジニアスに任せる」

「分かりました。私達は巣穴近くに近寄る勇気はありません」


 ジニアスのレベルは駆け出しとしては格別ののものとなるな。

 頭打ちにはなるだろうが、村の中では一番強くなるはずだ。

 そこからどうするかはジニアス次第だ。


 村を守って暮らすのも良いし、冒険者になるのも良い。

 好きにするさ。

 俺はほんのちょっと手助けしただけだ。


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