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第36話 喧嘩

Side:スイータリア


「テアちゃん、お人形遊びしましょう」

「いいよ」


 私、スイータリアとテアちゃんは同い年の6歳。

 もう、人形遊びをする歳でもないのだけど、私の趣味は人形だから。

 メアリとメリカを並べる。


 テアちゃんの手が、メアリに伸びる。


「駄目っ」


 私はテアちゃんの手を叩いてしまった。

 私の人形を触られたくなかったの。


「何で意地悪するの。スイータリア、なんか嫌い」

「ひとの物に手を出す方が悪い」


 テアちゃんは怒って帰ってしまった。


「お母さん、私が悪いのかな」

「スイータリアはどう思う?」

「メアリに触って欲しくなかったの。メアリは家族だから」

「叩いたのはいけないわね」

「うん、悪かったかも。でも、今後もメアリに触って欲しくない」

「それは仕方ないわね。人には他人に触れられたくない品という物があるわ」

「叩いたのは謝る。でもテアにも分かってほしい」

「そうね。今すぐにでも謝りに行くのね。こういうのは時間を置いたらいけないわ」

「うん」


 テアちゃんの家に行く。

 扉をノックするとテアちゃんの兄のジュピが顔を出した。

 テアちゃんの所は大家族。


「何?」

「テアちゃんに謝りたいの」

「おーい、テア、友達だぞ」


 テアちゃんが現れた。


「さっきはごめん」

「ううん、いいの。次は私も人形を触ってもいい?」


 困った。

 駄目と言ったらきっと喧嘩になる。

 でも触られるのは嫌。

 ああ、テアちゃんにも人形があれば良いのよ。


「うん、必ずテアちゃんの人形を用意する」


 家に帰り、お母さんをどう説得しようか悩んだ。

 当たって砕けろよ。


「お母さん、新しい人形を買って」

「もうふたつもあるじゃない」


 くっ、手ごわい。


「お手伝いするから」

「ええ、何かお手伝いするたびに銅貨1枚よ」

「うん」


 表通りのお店に行って魔道具人形を見た。

 値札のゼロは5つ。

 ということは銅貨たくさん。

 私にも買えないのは分かる。


 マイスト工房に行くと、マイストさんと、シナグルお兄さんは仕事中だった。

 大人しく仕事が終わるのを待つ。


「スイータリアちゃん、今日はどうしたの。やけにしおらしいね」

「魔道具人形がもうひとつほしいの」

「うーん、修理ならやってあげるよ。市を探すんだね。掘り出し物がきっと見つかるさ」


 市場はお母さんと何回も来たことがある。

 入っちゃいけないとは言われてない。

 路地とかは決められた道しか入ってはいけないことになっている。


 マイスト工房とテアちゃんの家の道は入っても良いことになってる。

 市場もそのひとつ。


 市を隅から隅まで探す。

 私が買えそうな人形はない。

 その時、ボロボロの人形が目に留まった。

 むごいことに魂がない。

 魂がはめ込まれていた跡はあるのに。


 人形が痛いと言っているように思えた。

 シナグル兄さんなら治してくれる。

 嘘は言わない人だから。


 ええと、5という数字が値札に書いてある。


「これで足りる」


 私はポーチから銅貨5枚を出した。


「おうまいど」


 人形を手渡された。

 マイスト工房に戻る。


「人形が見つかったみたいだな。見せてみろ」

「治る?」

「こりゃ重症だな。割れた溜石と布が要る」

「持って来る」


 溜石は魔石だから、冒険者ギルドならきっとあるはず。

 冒険者ギルドは表通りだから、行くことができる。


 冒険者ギルドの中を覗くと怖そうな人達が一杯。

 ここで諦めたら人形は治らない。

 平気よ。

 生活依頼を受けてくれた駆け出しの冒険者はみんな優しかった。

 その人達が大きくなっただけ。


 なるべく目立たないようにギルドの中に入る。

 でも、みんなに睨まれた。

 帰れ帰れという声が聞こえてくるよう。


 受付まで勇気を振り絞ってなんとか辿り着けた。


「すいません。割れた溜石ってありますか」

「あるわよ」

「売って下さい」

「困ったわね。割れた溜石は魔道具ギルドに卸すことになっているの」


「おう、困っているようだな。割れた溜石なら俺が持っている。ほらよ」


 小袋を投げ渡された。

 慌てて受け止める。

 中を覗くとたくさんの魔石の欠片が入っていた。


「いくら?」

「良いってことよ。こんな強面だが、俺は子供に優しい男だ。家に帰ると娘もいるしな」

「ありがとう」


 家に帰り、お母さんに要らないぼろ布を貰った。

 これで治るのね。

 マイスト工房に行くと、シナグルお兄さんが待っていた。


「材料が揃ったみたいだな。じゃあ箱に入れろ」


 木箱に人形と割れた溜石とぼろ布を入れる。

 木箱についている魔道具を起動させてから開けると新品の人形があった。


「これ、もらってもいいの」

「ああ」


 魔道具人形を起動すると。


「鳥は飛ぶ♪空高く♪どこまでも♪夢は広がる♪空高く♪どこへでも♪……」


 歌声が工房に響いた。

 テアちゃんの家に行き、ドアをノックする。


「これあげる」


 出て来たテアちゃんに人形を押し付けた。


「こんな高いもの貰えないよ。それに家に置いておくと兄さん達に壊される」

「じゃあ、私の家に置いておく。でもこれはテアちゃん専用だから」

「ありがとう」

「じゃあまたね」


 仲直りができた。


「スイータリア、その人形どうしたの」

「銅貨5枚で買った。それでシナグル兄さんに治してもらったの」

「まあまあ、迷惑を掛けて。こんどお礼をしないとね。お礼の品物はスイータリアが買うのよ。お手伝いしてお金を貯めてね」


 うん、シナグルお兄さんに贈り物をしよう。

 何が良いかな。

 テアちゃんと一緒に考えよう。

 テアちゃんにもお手伝いしてもらって、いくらかお金を貰いましょう。

 そうすればあの人形はテアちゃんが買ったも同じ。


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