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第120話 黒いドラゴン

Side:シナグル・シングルキー


 ゴブリンのスタンピードが起こった。

 ボスはゴブリンキングではなく。

 黒い魔力結晶のドラゴン。

 頭に、暗黒のダークと思われる奴が乗っている。


 このドラゴンはスタンピードしたゴブリンの魔力で出来ているに違いない。


「みんな、ゴブリンなぞには負けないぞ」

「おう」


 戦いが始まった。

 矢が魔法が、冒険者達から放たれる。

 ゴブリンは次々に死んだが、数が減ったようには見えない。


 マギナが杖をかざし、炎の壁を作った。

 炎の壁が前進する。

 黒いドラゴンが黒い霧のブレスを吐いた。


 炎の壁は消えた。

 今まで黒い霧は光を吸収するだけだったのに。

 魔法まで吸収するようになったのだな。


 マギナは炎弾の連射に魔法を切り替えた。

 黒い霧のブレスは細かく対応できないようだ。

 ゴブリンを包んでしまうとゴブリンも冒険者達がどこにいるか分からない。

 冒険者達は黒い霧を魔力結晶に変える魔道具を持っている。

 見える冒険者と見えないゴブリンではどっちが不利なのかは言うまでもない、


 だから、相手は黒い霧で包む戦略は取ってこない。

 マギナの連射はゴブリンを効率よく葬った。


 俺とソルと冒険者達は、近距離戦闘でゴブリンの波を食い止めた。

 限がない。


 窒息魔道具を使うと、ゴブリンが次々に窒息していく。

 ドラゴンが黒い霧のブレスを吐いた。

 窒息するのが止まった。

 窒息魔道具の効果も魔法に含まれるらしい。


 こいつは困った。

 どうやらちまちまゴブリンを倒すしかない。


 冒険者達に疲れが見える。


 疲労回復の魔道具を作ろう。

 『fatigue recovery』で歌は『温泉気分、温泉気分、ゆったり、温泉気分♪温泉気分、ゆったり♪ゆったり♪温泉気分、温泉気分♪ゆったり、ゆったり、温泉気分♪温泉気分、温泉気分、ゆったり♪温泉気分♪。温泉気分、ゆったり、温泉気分♪温泉気分♪ゆったり、温泉気分、ゆったり、温泉気分♪ゆったり、ゆったり、ゆったり♪温泉気分、温泉気分、温泉気分、ゆったり♪温泉気分♪温泉気分、ゆったり、温泉気分♪ゆったり、温泉気分、ゆったり、ゆったり♪』だな。


 10個の疲労回復魔道具を作ってポーション係に渡した。

 これで疲労なしに戦える。


 永遠の続くかと思われるゴブリンの前衛を倒しきった。


 黒いドラゴンをやるか。

 俺が前に出ると、黒いドラゴンが前に出てくる。

 そして、俺に矢が雨あられと降って来る。


 ソルが進み出て。


「あたいに任せな。はぁ!」


 ソルが俺に当たりそうな矢は全て薙ぎ払った。

 手始めにドラゴンを構成している黒い魔力結晶を魔力旨味に変える。

 だが、変えたのは黒い魔力結晶に飲み込まれた。

 黒いドラゴンはどんどんと大きくなる。


 仕方ない。

 魔法が駄目なら。


 『collect carbon dioxide』、二酸化炭素収集だ。

 空気中の二酸化炭素を集める。

 これなら、収集した二酸化炭素はブレスでは消せないはず。


 歌は『CO2、集まれ、CO2、集まれ♪CO2、CO2、CO2♪集まれ、CO2、集まれ、集まれ♪集まれ、CO2、集まれ、集まれ♪集まれ♪CO2、集まれ、CO2、集まれ♪CO2♪。CO2、集まれ、CO2、集まれ♪集まれ、CO2♪集まれ、CO2、集まれ♪CO2、集まれ、集まれ、集まれ♪CO2、CO2、CO2♪CO2、集まれ♪。CO2、集まれ、集まれ♪集まれ、集まれ♪CO2、CO2、CO2♪CO2、集まれ、集まれ、CO2♪集まれ、集まれ♪CO2、集まれ、集まれ♪集まれ♪』だ。


 作ってすぐに起動した。

 ゴブリンの後衛がバタバタと倒れる。

 黒い霧のブレスで包んだが、窒息は止まらない。

 二酸化炭素は消せないからな。

 二酸化炭素は重いので、ドラゴンの頭の上には届かないが、魔力の供給が止まって、黒いドラゴンの成長が止まる。


 俺は黒いドラゴンを魔力旨味に変えて、ダークに因果応報魔道具を使った。

 ダークがドラゴンの頭から落ちて来た。


「マギナ、風の魔法で毒の空気を散らしてくれ」

「ええ」


 マギナが杖を振ると風が吹いた。

 落ちて来たダークが暗闇に包まれる。


「我が名を騙った愚か者、感覚すら失われる暗闇で未来永劫生きるが良い」


「手の感覚も、味も、何にない。俺は生きているのか? 何だ、分からない。誰かこの闇を晴らしてくれ」

「因果応報だな。暗闇を使って悪さをするからそうなる」


「ああ、何も聞こえない。筋肉を動かしている感覚さえない。俺は寝ているのか。立っているのか。気が狂いそうだ」


 こいつはこのまま放っておこう。

 邪神教団の教祖はまだ出て来ないのかな。

 出て来たらそれで終わるのに。


 魔力旨味のドラゴンは皆で分けた。


 冒険者ギルドの酒場で、打ち上げだ。


「みんな缶ビールは手に持ったか」


 缶ビールは物々交換魔道具で日本から取り寄せた。

 今日ぐらい構わないだろう。


「おう。手が重いぞ」

「冷たくて手が凍っちまいそうだ」

「早く飲ませろ」


「今日は俺のおごりだ。存分に飲み食いしてくれ。乾杯!」

「くぅ、このビールって酒は美味いな」

「冷えているせいもあるのかな」

「これがSSSランクがご愛飲の酒か。確かに格が違う」


 みんなビールを気に入ってくれたみたいだ。


「お疲れ様です」


 ピュアンナが挨拶に来た。


「ピュアンナは部外者だが、俺の関係者だ。存分に飲んでくれ」

「まだ業務がありますので」

「くぅ、美味い酒だ。あたいは寝る前に毎晩この酒が飲みたいぜ。なあ、シナグル良いだろう♡」


 ソルが珍しくねだってきた。

 どうしようか。


「飲んだくれると妹弟達がソルのことを軽蔑するぞ」

「それは勘弁だ」


「あの毒の空気の魔道具について喋りなさい」


 マギナには聞かれると思ったよ。


「あれが危ないものだと分かっているだろう」

「それにしては散らした後に汚染がないですね」


 ぐっ、鋭い所を突いて来る。


「とにかく駄目だ」


「シナグル、焼き立てのパンを持ってきたよ」

「ありがと。ほら、マギナもパン食えよ。好きだろ」

「そんなことでは騙されません」


「正解を人に聞くとは魔法使いらしくない」

「分かりました。自分で調べろということですね」

「そうしてくれ」


 うん、パンが美味い。

 魔力旨味から酒が作れればきっと美味いだろうな。

 でも糖分ではないから無理か。


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