第118話 金の偽物
Side:ケアレス・リード
金の偽物を作る魔道具が欲しいと強く念じる。
扉が現れた。
「いらっしゃい」
「おう、ようこそ」
シングルキー卿と戦士風の女がいた。
店員にしては強そうだ。
護衛かな。
まあ良い。
とりあえず関係ない。
私はこれまでのいきさつを話した。
「あたいは、そういうのは許せない性質なんでね。ぶっ飛ばしたくなる」
「私もだ。しかしそうもいかない。辛い所だ」
「だよな。分かる分かる」
「なるほど、紋章入りの短剣を預かってきたと。貸しひとつというわけか。差し出せる対価としては上出来だろうな。いいよ、作ってやる」
「恩に着る。私の短剣も差し出そうか」
「そこまでしてもらったら、貰い過ぎだ」
「そういうと思ったよ」
「石を金塊に見せかけるか。金メッキかな。金、金、ピカ♪金、金、金♪ピカ、金、ピカ、ピカ♪金、ピカ、ピカ♪。ピカ、金、金、ピカ♪ピカ、金、ピカ、ピカ♪ピカ、金♪金♪ピカ、ピカ♪金、ピカ♪金、金、ピカ♪。これで良いだろう。悪用はするなよ。もっともまともな所ならすぐに金メッキとばれる」
核石が、トンカチの柄にはめ込まれた。
溜石と導線も柄に付けられ完成だ。
「成功は因果応報の魔道具しだいだ」
さて、作戦実行だ。
ファラボスとバドガイのパーティに出る。
贅沢の極みのパーティを見ると吐き気がする。
「お招きありがとうございます」
バドガイに挨拶する。
「ふむ、招待客のリストにあったかな」
バドガイは不審に思ったようだ。
「ファラボスの友人でして、ファラポスから招待状を貰ったのですよ」
「あいつはパーティなど開くなと言っていたが、友人を呼ぶなど、どんな風の吹き回しだ」
「さあ、存じませんな」
十字架の形をした、因果応報魔道具にさり気なく触る。
首飾りに仕立ててあるからな。
十字架には宝石も埋め込んである。
貴族が着けても問題ないように仕立てた。
よし、因果応報に掛かったぞ。
「金の塊があるのだが、特別に市場価格の半値で売りたいがどうだ」
「ほう、何か裏があるのか」
「ここだけの話、金鉱脈を発見した。だが、分かるだろ。王に報告すれば税金でかなり持っていかれる」
「ふむ、そうか。そういう話なら買おう。貴殿が捕まっても問題ない。金を買っただけだからな。罰せられるのは貴殿だけだ」
石を金メッキした物を出した。
「鑑定しろ」
専門家が呼ばれて魔法で鑑定する。
表面は金だから、金という判定が出る。
「金に間違いありません」
「そこで、相談なのだが、領地の住民を雇いたい」
私はバドガイにそう申し出た。
「ふむ、隠し鉱山に使うのか。良いだろう」
「助かる。住人には前金で金塊を払う」
「ふむ、ますます良いな」
完全に掛かった。
私は住人に偽の金塊をばら撒いた。
住人はバドガイの所に金塊を売りに行った。
上手くいった。
因果応報のせいなのか、バドガイ達は住人が鉱山に行ってないのに疑わない。
密告する住人もいない。
石ころが金になるし、騙している相手が憎い領主だからかな。
「やった。金塊を売って腹一杯食える」
「すぐに金は隠した方が良いぞ」
「俺はクズ麦に換えた」
「おうそれなら、差し押さえても売れないな。おまけに安くて腹いっぱいになる。味はいまいちだが」
住民なりに頭を使ってあの手この手をしているようだ。
「未払いの税が貯まると、魔法契約者にされて売られたりしないのか?」
私は聞いてみた。
「王国法で禁止されているんだとよ」
なるほど、住人を消費するようなことは流石にできないらしい。
「となると、差し押さえか」
「ああ、めぼしいものはほとんど持っていかれた。スプーンひとつさえ残ってない。食器は木の葉と土を焼いたのなんかを使っている」
「いましばらくの辛抱だ」
「おう、みんなにも言っておくよ」
住人が持って来る偽の金塊でバドガイのお金は減っていく。
他所へ金塊を売りに出さないかと言えば、私はある噂を流した。
国王の密偵が金塊を調べている。
バドガイにも危害が及ぶかも知れないと。
最低でもばれたら裁判になると。
今は大人しくしておく時期だと思ったのだろう。
金塊は他所へは売ってないようだ。
因果応報魔道具の威力を思い知った。
悪行はすまい。
そう改めて心に誓った。
住民は腹いっぱいになって幾分顔色が戻ったようだ。
笑い声や、笑った顔も耐えない。
「住民に配った偽金塊だけでも、リード卿に相談した甲斐がある」
「ケアレスと呼んでくれ。もう友だろう」
「そうだな。ケアレスにはどう報いたら良い」
「別に要らないさ。民衆の笑顔が報酬だ。報酬なら貰う手立てはある。別の所からだ」
因果応報魔道具を私自身に使えば良い。
だがそれはすまい。
危機に陥ったときにやると決めている。
今回はバドガイに売った偽金塊の金だけで十分だ。
「ケアレスは本当の英雄だ」
「そんな大層なものじゃない。悲しんでいる顔より笑顔が好きなだけだ。意地悪などする奴の気が知れない」
「同感だ」
さあ、作戦を第二段階に進めようか。




