7話
うちの学校、文芸部なんてなかったな……
秋山が家に泊まったあの日から、数週間が経った。
学校生活にもそれなりに慣れてきたが、相変わらず教科書もノートも持っていっていない。
何を学んでいるのかは分からない。
だがまあ、多分なんとかなる。
人生もだいたいそんなもんだ。
そして今、俺は部室にいる。
所属しているのは、先輩二名と俺、秋山、響。
先輩二人は今日も安定してイチャイチャしている。
活動内容は主に恋愛。
部活名を恋愛研究会に変えた方がいいんじゃないか?
俺たちは暇すぎてUNOをしていた。
家に転がっていたやつを持ってきたら思った以上にハマっている。
「秋山、最近何日連続で俺の家に泊まってる?」
「今日で七日目だね」
「一週間かよ」
いつの間にか、俺の部屋に秋山の荷物が増えている。
「あれ、定住する気?」
「東海林君のご両親から了承は得てるよ」
抜かりない。
「家帰らなくて平気なのか?」
「心配してくれるの、東海林君だけだから」
「……なるほどな」
秋山の親は放任主義を通り越して無関心に近い。
だからこいつは俺の家にいるのかもしれない。
「二人って……いつから仲良いの?」
UNOを配りながら響が小さく聞く。
「中一からだな」
「その頃、僕には東海林君しかいなかったし」
「高校なんだから友達作れよ」
「私も……いない」
「なんで友達ゼロが三人集まってんだ?」
類は友を呼ぶとはよく言ったもんだ。
そんな時、部室のドアが開く。
「智樹いる?」
「部長ならあそこでイチャついてます」
俺が指差すと、先輩二人は慌てて離れた。遅い。
「生徒会の雅さんか」
「ちょっと二人借りるね」
「活動内容バレたんじゃないですか〜?」
「来たら話す」
有無を言わさず連行された。
部室に残る俺たち三人。
「……居なくなっても変わらないね」
「元々何もしてないからな」
「部費って何に使ってたのかな」
「秋山、それは知らない方がいい」
「これからは……本、買おう」
「本なら俺の家でよくない?」
三人同時に頷いた。
結局、川崎駅で降りてもどこにも寄らずそのまま帰宅。
高校生活って、もっとキラキラしてるもんじゃないのか?
「秋山、ベッドの上固定ポジなの?」
「秋山さんは……いつもそこ?」
響が首を傾げる。
確かに、ゲーム中も読書中も秋山はなぜか俺のベッドの上だ。
「嫌なら降りるけど?」
「別に嫌じゃない」
というか、もう定位置みたいなもんだ。
秋山は靴を脱ぐと自然にベッドに上がり、俺の枕を抱えて本を読み始めた。
……それ俺の枕なんだけど。
響にはSwitchのソフトケースを渡す。
「好きなのあるか?」
「これ……やってみたい」
「どうぶつの森か」
ゲーム経験なさそうなのに意外だ。
起動しようとした時、電話が鳴った。
妹からだ。
嫌な予感しかしない。
廊下に出て出る。
「いきなりなんだ?」
『可愛い妹が電話したんだよ?』
「用件は?」
『もうすぐ家着くから』
「は?」
『会いに来たよ〜』
プツッ。
嫌な予感が確信に変わった。
部屋に戻ると、響はソフトを眺め、秋山は俺のベッドで静かに読書。
この平和はあと何分持つのか。
ピンポーン。
「僕が出るね」
秋山が走っていく。
そして。
バンッ!!
勢いよくドアが開く。
「おにーちゃん!来たよー!」
「うるせぇ!」
「え、知らない女の子いる」
「言い方やめろ」
犯罪者みたいになるだろ。
妹は部屋をぐるりと見回す。
ベッドの上の秋山を見る。
Switch前の響を見る。
そして俺を見る。
「……お兄ちゃん」
目が怖い。
「秋山さんと泊まってるの?」
「何か問題あるのか?」
「……へぇ」
声が低い。
秋山はにこにこしている。
響は固まっている。
俺だけが状況を理解していない。
「響、ゲームするぞ」
「う、うん……」
現実逃避開始。
だが妹の視線は痛いほど突き刺さっていた。
嵐の予感しかしない。
妹キャラって出すとかちょっと困る




