5話
そろそろ書く事ないね。前書き
「二人とも……何か用?」
さっきまでこちらを警戒するように見ていた女子が、ついに声をかけてきた。
黒髪、やや低めの声。
落ち着いた雰囲気だけど、目は鋭い。
「読書部って珍しそうだなって思って来たら、君がいたから観察してた」
「東海林君と同じ理由だよ」
「……いたから見てたってこと?」
「そういうこと」
「二人とも……頭おかしいよ」
ど真ん中ストレート。
変化球なし。
地味に刺さる。
隣を見ると秋山は、
(何が問題?)
みたいな顔をしていた。
……教育を間違えたかもしれない。
「とりあえず中入っていい?」
「私も……入る」
「外から見たら変な三人組だね」
「ちゃんと秋山も入ってて偉い」
「それ褒めてる?」
「多分……違う」
「二人とも……早く入ろう」
俺たちは読書部のドアを開けた。
そして――
部室の中では、
男女が膝の上でイチャイチャしていた。
……空気、重っ。
俺は秋山とさっきの女子の顔を見た。
二人とも、ほんのり引いている。
数秒遅れて、向こうも俺たちに気づいた。
遅くない?
どれだけ自分たちの世界に没入してるんだ。
「智樹〜新入部員?」
「今日から見学会の週だろ」
どうやら男の方が智樹らしい。
「……帰るか?」
思わず本音が出た。
「あれ、私まだ名前言ってないよね」
「聞いてないな」
「川島響。よろしく」
「東海林。こっちが秋山」
「秋山です。よろしくお願いします」
向こうのイチャコラ組が今度はこっちを観察し始める。
さっきまで俺たちがやってたことを、
今度はやられているだけなんだが……妙に腹が立つ。
「三人とも見学で来たってことでいいか?」
「帰るか」
「マック寄る?」
「私も……ついて行こうかな」
「三人マック、悪くないな」
「おーい!?話聞いてる!?」
「え?イチャイチャ終わったんですか?」
「そんなにしてたかな〜?」
「秋山、東京湾って深いかな」
「多分バレるよ、事故に見せるなら橋だね」
「二人とも……発想が物騒」
「俺、この三人部活に入れたくないんだけど」
「私と智樹、殺されそうだよね〜」
「秋山、嫌がらせでここ入る?」
「ありだと思うよ」
「二人がいるなら……入ろうかな」
「俺、一応部長なんだけどな?」
「よし、決まりだな。帰るか」
読書部、わずか五分で撤退。
マック、そして夜
結局その後、三人でマックに二時間居座った。
そしてなぜか
秋山はそのまま俺の家に来ていた。
いや、来たというか、居座っている。
「秋山、今日は何する?」
「東海林君はいつも何してるの?」
「入院前はゲーム」
「昨日以外で何ある?」
「スマブラ、マリカ、太鼓」
「王道だね」
「外れ引きたくないからな」
ゲームは高い。
つまらなかったら精神的ダメージがでかい。
「ねぇ東海林君」
「ん?」
「今日、迎えに行ったでしょ」
「そうだな。助かった」
「ならさ……撫でて」
「……は?」
「撫でて欲しい」
ベッドに座る秋山。
俺は黙って、そっと頭に手を置いた。
撫でる。
目を閉じる秋山。
……なんだよこいつ。
女の子みたいな顔するな。
最後に撫でたのは
中学の、あの日。
体育館裏。
ナイフ。
血。
俺は少し刺されて、
ナイフを奪って、
暴れないように抱きしめて。
ずっと撫でていた。
秋山をいじめていた連中は、
誰も教師を呼ばなかった。
俺も警察に行かなかった。
病院も面倒で行かなかった。
今考えると、頭がおかしい。
でもあの時、秋山は泣いてた。
「もういい?」
「うん、ありがとう」
「嫌なことあった?」
「違うよ。撫でて欲しかっただけ」
「情緒不安定かと思った」
「それは何年も前だよ」
風呂に向かう秋山。
一人になった部屋で、俺は天井を見た。
あの頃と比べれば、
今の秋山はずっと穏やかだ。
あの日のナイフの重さは、
今もたまに思い出すけど。
夜
ゲームをして、気づけば十時過ぎ。
秋山は自然にベッドへ転がった。
「東海林君、一緒に寝よう」
「拒否権ある?」
「ないよ」
「知ってた」
俺は隣に横になる。
二人で寝ても狭くないベッドでよかった。
「おやすみ、秋山」
「おやすみなさい」
静かな夜。
読書部の変人も、窓側最後列も、全部ひっくるめてなんだかんだで、悪くない一日だった。
終わり方が僕夏の日記




