16話
依存がどんどん加速する
四時間目が終わり、俺と秋山は隣のクラスまで響を迎えに行った。
そして今、三人並んで食堂へ向かっている。
……問題は、食堂がどこにあるのか知らないということだ。
校内地図なんて貰っていない。
というか、入学式に行ってない時点で察してほしい。
「完全に初日から来なかった俺が悪いんですけどね」
「自覚はあるんだね」
「…私も…来たことない」
「僕も場所だけ知ってるけど初めてだよ」
全員初見。
なんだこの探索パーティ。
廊下を曲がった先に、やたら主張の激しい看板が見えた。
「デカデカと書く意味あるのか?」
「迷子が多いんじゃない?」
「…何が…あるかな」
「響、お金持ってきてる?」
「持って…きてる」
「無くても東海林君が奢ってくれるよ」
「まぁそれくらいならいいけど」
「…泊めてくれてる…から私が払う」
「自分の分は自分で払うよ」
「東海林君のことだから体で払えとか言いそう」
「言わん」
「冗談だよ」
「…私は…東海林君が…そういうなら」
「やめろ。ここで言うな」
周囲の視線が痛い。秋山がくすっと笑う。
「響君、依存してない?」
「どうしてこうなった」
「嫌われるよりはいいでしょ」
それはそうだが。
食堂の中は思ったより広かった。
券売機はなく、注文してその場で払う形式らしい。
「俺、日替わり定食」
「僕はオムライス」
「…醤油ラーメン…」
カウンターで受け取り、会計。
気づけば俺は二人分も払っていた。
……まぁいいか。
席は秋山が端っこを選んだ。
俺の隣に響、向かいに秋山。
「日替わりって何周期なんだろうな」
「データ取れば分かるよ」
「…ラーメン…美味しい」
響は小動物みたいに少しずつ麺を啜る。
秋山は味噌汁から手を付けている。
俺は鮭をほぐしながら、周囲を観察する。
普通の学生生活。
入学式も出ていない俺が言うのも何だが。
「…今日一緒に…帰りたい」
「五時間目終わったら三人で帰るか」
「また響君の教室前集合?」
「担任に捕まらなければな」
「…無断…欠席」
俺は秋山を見る。
「同じヘマはしないよ」
反省してない顔だな。
「…東海林さんの両親には…入院のこと言ったの?」
箸が止まる。
「言ってない」
「大丈夫なの?」
「多分」
「絶対大丈夫じゃないよ」
「…私も…そう思う」
親に連絡がいってない保証はない。
だが、何か言ってくるとも思えない。
それが一番、面倒だ。
響が急に静かになった。
見ると、うとうとしている。
「響、眠いなら寝てていいぞ」
「…寝ると……二人と話す時間…減る」
「僕ら逃げないよ」
「話したければいつでも話せる」
「…えへへ…ありがとう」
そのままテーブルに突っ伏して眠った。
……入院中、あまり寝てなかったのかもしれない。
俺は無意識に、そっと頭に触れた。
秋山がじっと見ている。
「ねぇ東海林君」
「ん?」
「響君のこと、僕達あんまり知らないよね」
「……」
言葉が詰まる。
親のこと。家のこと。あの日のこと。
全部、俺だけが知っている。
「親とか、見たことないよね」
「まぁ……色々あるんだろ」
曖昧に濁す。
秋山はそれ以上追及しなかった。
「夜ご飯どうする?」
「俺が作る流れだな」
「カレー?」
「飽きた」
「じゃあ響に聞くか」
「響君の好物って何だろう」
……確かに知らない。
俺達は、案外お互いを知らない。
それでも一緒にいる。変な関係だ。
「このまま帰る?」
「学校抜け出すな」
「中学で何回もやったよね」
「その度に怒られたな」
「高校では平穏に」
「無理だと思う」
俺もそう思う。
刺されて、入院して、復帰初日で遅刻。
平穏とは。
「そろそろ起こすか」
「響、起きて」
揺すると、目を開ける。
「…おはよう」
「二回目だな」
三人で食器を返却口へ。
食堂を出る。
今は、三人並んで歩いている。
……この先もまぁ、なんとかなるか。
多分。
もし「面白かった」「続き読みたい」と思ってもらえたら、ブックマークや評価(☆☆☆☆☆→★★★★★)してもらえるとめちゃくちゃ嬉しいです!次の更新のやる気になります。




