14話
感情は重けりゃ重いほど可愛い
そして入院してから何日かが過ぎ、ようやく俺は退院を許可された。
二度目の退院。
嬉しいはずなのに、妙に現実味がない。
現在、俺と響は病院一階のロビーで秋山を待っていた。
平日の昼間。テレビでは昼のバラエティが流れている。ちょうど『笑っていいとも!』がやっている時間帯だ。
……いや、普通に学校ある時間だよな?
俺は隣を見る。
響は当然のように俺の膝の上に座っている。
「響、いつまで膝に乗ってるの?」
「……ダメ?」
上目遣い。
「まぁ、良いけど」
周囲の視線が少し痛いが、今さらだ。
それより問題は金だ。
今年の入院費、やばくないか?
スマホで見た請求予定額を思い出し、胃がきゅっとなる。
貯金が音を立てて消えていく未来しか見えない。
……命が助かった代償にしては高すぎないか?
☆
……東海林さんの膝、あったかい。
病室のベッドより、ここが落ち着く。
本当は後ろから抱きしめてほしい。
でも、ここはロビー。人もいる。
……じゃあ、私から後ろ向いて抱きつこうかな。
でもそんなことしたら、嫌われるかもしれない。嫌われるのは、怖い。
「響、どうしたの?」
「……うん?」
「さっきから同じ方向ずっと見てる」
……そんなに見てたかな。
今なら言えるかな。抱きしめてって。
でも
「……なんでも、ない」
その瞬間、頭に温もりが落ちる。
撫でられている。もっと撫でてほしい。
でも、そろそろ来る。
☆
自動ドアが開き、見慣れた金髪が入ってくる。
秋山だ。
「東海林君、歩けるの?」
開口一番それか。
「歩くのは問題ない」
「なら良かった。それじゃあ帰ろうか」
普通に学校サボってるよな、こいつ。
「てか、俺いない間ご飯どうしてた?」
「レンチンって最強だよね」
即答。
安心したような、してないような。
秋山は料理が壊滅的だ。レンジの方が安全なのは事実だ。
「じゃ、帰るか」
「……うん」
響がようやく膝から降りる。
立ち上がると、背中が少しだけ引きつる。
まだ完治ではない。
俺の右に響、左に秋山。
横三列。廊下いっぱいだな。
「秋山、明日から学校行った方がいいと思う?」
「行った方がいいと思うよ。響君も含めて」
「……東海林さんが行くなら行く」
即答。
この子、俺がいなかったらどうなるんだろう。少しだけ、不安になる。
自動ドアを抜け、外の空気を吸う。
久しぶりの外。
そのまま、俺たちは神社の方へ歩き出した。
「東海林君、また神社?」
「御神籤まだ引いてない」
二度も入院しておいて、運勢を確認しないのも怖い。
「……私も、引いてない」
「じゃあ響も引くか?」
「……うん」
石段をゆっくり上る。
傷口がじわりと主張してくる。
賽銭を投げ、鈴を鳴らし、引いた御神籤。
俺は吉。、響は大吉。
「……大吉」
小さく、でも少しだけ嬉しそうに言う。
「俺が吉で、響が大吉か」
俺の人生、本当に吉止まりなんじゃないか?
死にかけて、生き延びて、また日常に戻る。
それが吉なのかもしれないけど。
神社を出て、スーパーに寄る。
カゴを持つのは秋山。俺はまだ荷物の持つのはダメらしい。
響は俺の袖を掴んだまま離さない。
「……東海林さん?」
「ん?」
「……おかえり、だね」
「ありがとう響、秋山はここに暮らそうとしるよね」
「勿論だよ」
これは親にあとで怒られるだろうが、今は今を噛み締めようかな。
ヤンデレ男の娘にする気はないです




