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コワクな舞踏会

作者: 石神観遥
掲載日:2025/12/31

 両手で抱え切れない大振りな絵画がある。

 どこの舞踏会の光景を描いたものなのか。モデルとなっている実在の舞台があるのか、それとも自由な発想が生んだものなのか。

 舞踏会のために燕尾服で着飾った紳士、真紅、純白、藤紫、桃金、濃紺のドレスの淑女たちは、姿格好は白人調の趣きではあるものの、人種には一貫性がない。黒人、東洋人、アラブ系、混血から、ホモ・サピエンスからは遠くかけ離れた種族まで窺える。

 床一面に敷かれたカーペットは鈍色が強く入った紅を基調としているようだが、模様の規則性を計り知ることは難しい。画家の技量が影響しているというわけではない。

 カーペットの上には無数の棒のようなものがばら撒かれて、邪魔をしているからだ。

 目を凝らさないほうがよいのかもしれない。

 社交場の天井からは大きなラッパ型のスピーカーがいくつも吊るされている。そこから出てくるトーン記号の影が人と人の隙間を徘徊し、華を添えている。

 露出している肌が、足を除いて金色に輝いている参列者が何名もおり、こぞって羨望や尊崇の視線を向けられている。手を打ち、喝采したり、投げキスを放っている者もある。

 隅の方には会場の外が描かれ、受付の様子が垣間見える。

 順番待ちの列がある。並ぶ者たちの表情に不可思議さを感じられなくなってくるかもしれない。怯えや戸惑い、辛苦さを抱いていない。愉快というよりも愉悦であり、陶然と陶酔でできているからだ。

 受付のすぐ脇には、かしこまった衛兵が抜き放った剣を垂直にかざして控えている。

 招待状の確認が先なのか後なのかは判然としないが、舞踏会の会場に入るため、ズボンやドレスの裾を上げている。

 切断を待っているのだ。

 手品師の用意したようなタネも仕掛けもある箱に両脚を入れると、バネ仕掛けで水平方向に刃が滑る断脚装置がしつらえられている。

 ベルトコンベアでもあるのか、箱の裏側から切断したばかりの足が出てくると、それを舞踏会場の床に放り投げている衛兵がいる。

 参列者の二倍の数字と床に撒かれた足は、一瞥をくれただけでも一致しない。

 舞踏会で、床に足を着けている人はいないのかと熱心に探すだけ無駄である。


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