アナタを捨てる奴よ
「ロクネ!早く魔法を使いなさい!」
「……」
「自分に使うのよ!」
その日の晩になる。里奈と夢波の身体は完全に戻っており、それは里奈の治癒魔法によるものだった。ボロい住処、魔法少女ハウスに戻る。ハテ子は居場所のない二人を住まわすことにしていた
「本気でミスをしたわ……」
ハテ子は思い詰めた様子でこたつに足を入れていた。二人は心配そうにし、こたつへ足を入れていた
「私は気にしてないよ……一歩違えばもう死んでたような人間なんだし」
「私も気にしなくていないですよ……たしかに、痛かったですが……いや、すいません」
「嬉しい言葉ね……後は、蝶々がどう飛ぶか……ね」
しんみりとした空気の中、夢波は声を上げた
「ハテ子!あの服ダサい!今から変えよ?」
全てを諦めた様子でハテ子は全身の力を抜いた。夢波の明るい表情を見ていると、そうするしかなかった
「今その話が出るのね……そうね、あの服は、嘗ての友達がデザインしたものよ」
「そっか、だったら……仕方ない……よね」
ハテ子は立ち上がる
「変えるわよ。アイツのデザインなんて使ってたら、縁起が悪いわ。それに、それをこんなにも若い娘に着せるなんて、アタシにはできない」
え……何かあったのかな
「いいわ、新規デザインの募集よ!」
って言われると難しい……
「その、もっと色を可愛らしくしたらどうですか?今は……何か、オシャレの欠片も感じられ……いや、もちろんハテ子さんのご友人のデザインも……」
「いいわよ、アイツは気にしなくて。ただ、同じサークルにいただけよ」
「そう……なのですね」
「可愛らしい色となると……そうね、赤はアタシだから、夢波は緑で、里奈はイエローとかどうかしら?」
「え、ハテ子赤だったの?」
そんな中、ノックが鳴り響く。ハテ子は少し安心した様子で、扉の方へ歩いていく。夢波は里奈へ訊く
「ね、誰だと思う?こんな夜中に」
「さて……少し迷惑ですね、こんな夜間に」
ハテ子は扉越しに訊く
「あっら、どこの創作物かしら?」
ハテ子にだけ届くような、そんな小さな女の声が返ってくる
「この中に里奈はいるか……いや、いることは分かってる」
「いないわよ、繋ぎ役が!アナタは騙されているのよ……」
「何を言ってんだ?」
「さて、アタシは何を言ってるのか。それより、夜にインターホンってのは失礼だと思うわよ?」
「まだ二十時だ」
ハテ子は部屋に向け、丸い玉を軽く投げた
「ハテ子、これなに?」
夢波が触れようとすると、煙が噴き出てくる
「ちょ、ハテ子?!」
すぐに白い煙は部屋中を包んだ
「ハテ子さん?!」
「ここからは有料会員様限定よ」
扉が開き、すぐに閉まる音がした。ハテ子は近所の公園へと向かった。広めの公園だが、時間帯的に人は殆どいない。ハテ子が片手に抱えるのは、長く桃色の髪をした女だった。目は赤く、背の高い細みの女。強く縄で縛られており、そのままハテ子は地へと降ろした
「ゴキブリコイコイよ」
部屋の入り口前の床には強くボンドが塗られており、女はそれを踏み動けなくなっていた。縛り、ここまで連れてきた
「まるで読まれたみたいじゃねえか?私の行動が……何をした?」
「機密よ。そんなことより、取り引きをしましょ。アナタには奴を裏切ってもらうわ」
「奴……?」
「アナタを捨てる奴よ」




