アタシたちの部屋よ
その後案内されたのは、かなり古い二階建ての廃墟だった。ハテ子はそこが家と言わんばかりに入っていく。夢波は入るのを躊躇っていた
「早く入りなさい。今日からここがアナタの住処よ」
「ここ……が……」
「自宅には帰さないわよ?緊急出動するかもしれないのだし」
緊急出動……それっぽい
ハテ子の後をついていくと、明らかに一つおかしな部屋の扉が見えた。扉には『魔法少女ハウス』と張り紙がしてあり、ハロウィンのような装飾もあった
「なにこれ……」
「アタシたちの部屋よ」
ハテ子が扉を開くと、その先は全て座敷であり、こたつの上にミカンが幾つか、そしてパソコンがあるだけの粗末な部屋だった
「言い換えるのなら本部よ」
ハテ子はそう言うと帽子を外し、机に置いた。そしてこたつに足を入れ、ミカンの皮を剥はじめる
「その……」
夢波は何かを言いかける
「ミカンはね、甘くないのよ」
「甘いよ……」
ハテ子はミカンを一切れ、夢波に差し出した。夢波はそれを受け取り、口の中へ入れた
「酸っぱい!」
「言った通りね」
「これが例外なんだよ!」
ハテ子はそのミカンに視線を向けていた
「弾かれた者……アナタは弾かれたのかしら?この社会から」
夢波は視線を逸らし、その和やかな雰囲気は消えた
「それって話さなきゃダメ?」
「あら、聞いてほしいんでしょ?助けてほしいんでしょ?それとも、心の準備が必要かしら?」
ハテ子が横目に夢波を見ると、鞄が顔へ直撃した
「可哀想な私を救おうとか考えてるわけ?大きなお世話だから!何私を分かった気になってるの!ハテ子に私の何が分かるの!」
ハテ子は無表情だった。出会ってからずっと
「家庭では勉強しかさせてもらえず、学校ではいじめられ、先生からは酷いセクハラを受けている。そして不良に弱みを握られていて、お金を貢がなければ身体で払わされるから、頑張ってバイトをしているのよね」
「え……?」
なんで……知ってるの?
夢波は力が抜けたよう、その場に膝から崩れ落ち床に手をついた。ハテ子は座りながら手の力で身体を前進させ夢波に近づくと、優しく頭を撫でる
「アホね。相談窓口に相談すればいいのに」
「なにそれ……」
夢波からは涙がこぼれ落ちていた。夢波はハテ子に強く抱きつき、泣き叫んだ
「私さ、もうダメだよ!このまま、ハテ子と一緒に逃げたいよ……なんで私のこと知ってるのか知らないけどさ……助けてよ……」
「あらあら……」
しばらく経つと夢波は涙を拭き、ハテ子と二人でこたつに入っていた。夢波はハテ子に強く肩を寄せており、目元は涙を擦った跡が赤く残っていた
「なんで……知ってたの?」
「極秘よ」




