命日まで魔法少女
こんな私に先はない
飛べば全てから解放される
制服を着た黒い髪の長い女。学校の屋上から飛び降りる寸前だった。風は強く吹き荒れ、その静けさを風の音が包んだ。運動場に人はおらず、空は灰色だった。女が一本前に足を運ぶ
「散るのね」
その声がすると、スッと身体が止まった。オネエ口調な男の声であり、聞こえた後ろの方へと顔を向けると、長い赤髪をした男がベンチに座っていた。派手な身なりをしており、頭には藤と紫の斜線が交互に入る長方形の帽子まで被っていた。明らかに学校にいてはいけない男は足を組み、まるでここが自分の学校だと主張するよう堂々としていた
「えっと……」
「飛ぶの?魔法少女になるの?選びなさい」
言葉の意味は理解できても、意味は理解できなかった。女は回答に困り果て、しばらく静かな空間が続くと、男はビニール袋から、可愛い桃色のステッキを取り出した。先端には大きな桃色のハートが付いており、言葉の通り魔法少女の武器に見えた
「素敵なステッキよ」
「え……はい」
男はステッキを女に回転させて投げた。女は受け取ろうとするが、回転をしており手を滑らせた。ステッキは屋上から奈落へと散っていった。その場の空気は最悪な物であり、男は呆れた様子を見せた
「散ったのね」
「ですね……」
袋から、もう一本ステッキを取り出した
「今度は取りなさいよ」
手渡しなら確実なのに
男はステッキを回転させ投げた。今度は上手くキャッチをしホッとしていると、男は立ち上がり女の方へ歩いた。思っていたよりも背は高く、死んだような目をしていた
「それを受け取った……魔法少女になることを選んだのね」
「でも、一回目は取れなか」
その声を遮った
「アタシはハテ子よ」
「えっと……中西夢波です」
「死を選択したことで、アナタは裏世界とリンクしたわ。これで、裏世界の物が見えるはずよ」
「裏世界の……者?」
夢波は何かのごっこだと思っていた
「魔法少女の資格ありよ。なするかしら?」
どうする?ってことだよね……?
この人に付き合ってから死のうかな
ちょっと、面白そうだし……
「その……魔法少女って具体的に何をするんですか?」
ハテ子は小さく溜息を吐いた
「A世代?B世代?何か知らないけど、若い子は細かいのよ。具体的に教えてだの、契約書がないと不安だの、昭和の子だったらね、迷わずに選択してるわ」
たぶんZ世代って言いたかったのかな?
それに、この人も結構若いよね?
夢波は少し引いていたと同時に、ハテ子は呆れた様子で両目を閉じた
「えっと……いくつなんですか?」
「退屈よ。魔法少女がいないなんて……折角、仲間になる魔法少女を二人も用意していたのに」
ごっこにそこまで……
ならないと私が悪いみたいじゃん
「分かっ……た」
ハテ子は右目を開いた
「それはつまり、アタシたちと共に悪を始末する覚悟ができている……そういうことね?」
え、悪と戦うなんて聞いてない……
ほんとにごっこ……だよね?
「そ、そうです……」
「なら、命日まで頼むわよ」
え、死ぬまでやるの?




