濃霧警報
ドタドタドタ.....ドカン!!
「緊急事態に付き、失礼します!!陛下!!」
兵士が血相を変えて扉を蹴り飛ばして執務室へ入ってきた。
「何事かね」
「魔王の出現と、領内への進攻を確認しました......」
「ただいま現地の守備隊が応戦し、追い返すことに成功しました」
「幸運にも犠牲は出ておりません。重傷者は出ておりますが」
「それは本当か!?!?」
「とりあえず守備隊はよくやってくれた」
「しかし魔王復活などあり得ぬ......」
魔王の出現なぞ、この国建国以来一度も起こらなかった。
過去の統計では、魔王の消滅から誕生までの凪の期間は長くても100年。
だが、この国が建国されてから500年は経過しておる。
「しかし現実です!!」
「陛下は君の報を疑っているわけではないよ。ただ信じたくないだけさ」
「.......」
「ニーサ騎士団長、もうよい。報告ご苦労であった」
「.....はいっ!それではこれにて失礼いたします!」
入ってきた時とは違い、丁寧に扉を開けて退いた。
「ファンズよ、これからワシはどうすれば良いのだろうか」
「この国は魔王誕生を防ぐ結界を守るために、最後の勇者によって築かれたとある。そして結界はワシこの通り無事じゃ」
執務室の机の金庫より決済印を取り出した。
「陛下、この印と結界にどのような関係があるのでしょうか?」
ファンズ宰相の疑問はごもっともだ。
「直接の関係はない」
「だが結界が機能停止した場合、この印が粉々に砕けることになっている」
「まさかそのようなことになっていようとは」
「ですが、希望はあります」
「これまでの魔王に関する歴史には必ず"勇者"なる存在があります。きっと今、この国のどこかに勇者が誕生しているに違いありません」
「勇者か」
「しかし勇者に任せっきりというのも.......軍備も増強せねば」
(勇者はほんとうに居るのだろうか?)
(勇者の力は本当に強いのだろうか?)
(仮に強くても、もし勇者が討ち取られるようなことがあれば終わりだ)
(勇者依存はダメだ)
「おっしゃる通りにございます!魔法戦力の増強を具申します」
「それはダメだ。何事もバランスが大事だ」
「それから魔王に関する情報をもっと仕入れよ。情報は武器だ」
「御意」
そうして翌朝からクリプト王国中で"勇者"の捜索、軍への志願募集が行われるようになった。
(しかし、なぜ守備隊が犠牲を出さずに単独で追い返せたのだろうか、報告を精査しよう)
【報告内容】
・相手陣地は魔族領との間にある森付近
・全体戦力は魔物魔族合わせて3,000ほど
・実際に攻めてきたのは20体の魔物とそれを指揮する一人の魔族
・魔族は魔物を指揮するだけで戦闘には加わらなかった
・魔物を10体ほど倒すと後退し、本陣も森の方向に後退した
・現地守備隊20人が応戦した
・殉職者はいないが、半数が腕や足を失うなど重傷を負った。
・戦闘終了後、空から黒く大きい羽のついた魔族が降臨し、魔王を自称した
・「勇者の芽が出芽した。力を付けるまでに引き渡せ」「我らは戦を望まぬ」と告げたあと消えた
現在、大規模な戦闘は起こっていない。
時折魔物たちの襲撃してきて、町に被害が発生している。
特に子供が良く狙われる。
被害は辺境の町だけではない。この王都でも被害が出ている。
魔族が時々いきなり異空間より現れるので、その場での対応ができない。
当然指をくわえて黙っているわけではなく、国中で対策を取った。
具体的には古書に記載されている古の結界魔法を王都とその近辺の町、村に展開し魔族の出現を防いでいる。それ以来、結界内での異空間からの魔族出現報告は聞いていない。
結界の領域外にある町村の子供たちはどうしているか?
結界領域内への疎開を命じている。
結界領域外から招集した子供たちは、王立保育園、王立学校で保護している。
6歳未満は保育園。6歳以上18歳未満は学校で保護している。
王立保育園には王城のメイドたちを総動員し、世話をさせている。
学校には4人一部屋の寮を設けている。
保育園も学校も、さすがに国中の子供たちを受け入れるにはキャパが足りず、
王都の外ではあるが(結界領域内ではある)、そこに新たに王城規模の学校、保育園を建てた。
これが功を奏したのか、魔王が言う「勇者の芽」の発見と保護ができた。




