輝くパーティクル世界
目の前の湖面の上で、水を使った演舞をしている人は私の愛する夫。
私の夫は水属性の大魔導士で恐らくこの世界で一番の存在。
誰からも尊敬される憧れの的だ。
その一方で不思議な人で、勇者パーティの誘いや宮廷魔導士という仕事を悩む間もなく辞退した。
だけど、私や娘の為となるとどんな苦難であろうと立ち向かい、必ず帰ってきてくれる。
彼とは実は生まれる前からの知り合いで、この世界で唯一私の前世を知っている。
いや、厳密には前世の私のことは知らない。でも知っている。
私もまた、彼の事を生まれる前から知っている。彼も私と同様転生者だ。そしてこの世界で彼を真に理解できるのはこの私だけ。
いつか私達のことを娘に伝えよう。
扉の先は辺り一面がパーティクルで埋め尽くされている。
白色に輝く格子かつ帯状のパーティクルの床が形成されている。
恐らくこれは異世界へ通ずる道なのだろう。
道の両側では、パーティクルの流れ星や打ち上げ花火が絶えず現れては消えてを繰り返している。そんな中、時折魚や動物が泳いでいる(もちろんこれもパーティクル)。
時折道を横断してくるが、当然捕まえられない。
背景に流れている、哀愁と勇ましさを感じる音楽とシンクロして点滅を繰り返している。
案内役なのだろうか、目の前に白く輝く蝶々がいる。
先へ進むにつれて、音楽が哀愁成分が薄れ勇ましさが増してきている。
それに伴って、道の両側のパーティクル演出も派手さが増してきている。
演出の迫力があまりに大きく、自身に変化が起きていたことに気付かなかった。
パーティクルが自身に少しずつ集まってきていて、徐々に人の形となっていた。
これは異世界での成人後の姿である。
そんなことを知ることもなく、流れゆくパーティクルライブの中をひたすら前進し続けていた。
しばらく前進を続けると、道が途切れた。
道の終端に草原を表しているのだろう。緑色のパーティクルが辺り一面に広がっていた。
目線を前方に向けると木々、いや森に囲まれた湖があった。
湖のほとりに足を踏み入れると、美しくも勇ましい、そしてどこか哀愁を感じる曲が聞こえてきた。
(これは・・・ハープの??)
(音の発生源に行ってみよう)
音が聞こえてくる方向に、湖に沿って歩いていくと、そこには見知らぬ女性がハープを奏でていた。
(演奏が終わるまで待とう)
パーティクルのシンクロもあって、身体が勝ってに揺れていた。
(あれ、身体がある・・・いつの間に!?)
こちらの存在に気付いたのか、音楽が止まった。
「こんにちは!」
「こ、こんにちは」
「素敵な演奏でした!!」
「あ、ありがとうございます......!!!」
「ところでどうしてここで演奏を?」
と質問したところ、彼女が湖の方に無言で指をさした。
その示す先には、湖があったが、少し変であった。
湖が割れているのである。
(いや、そもそもパーティクルだから割れるも何もないんだけど)
「さっきね、近くに行ってみたの」
「そしたら奥に扉があったの」
「これから先に進むともうパパママのところには戻れない、そう私の感が告げているの」
(もう死んでいるんだけど。そういう問題じゃないよな)
「だからね、ここで覚悟を決めようと」
「そのハープは?」
「これね、生前、大好きなパパが買ってくれたの!良い音色がするのよ!!」
「このハープをね、次の世界にも持っていきたくて、パパの形見なの!!」
「神様にお願いして、現世にあるハープのコピーを作ってもらったの。それからね、壊れないようにしてくれたの!!それからね、このハープ大きくて持ち運びできないから、魔法でいつでも出し入れできるようにしてくれたの!!」
「落ち着いた?」
「ううん......あともう少しかな」
「大丈夫ですよ!!だって私も一緒だから!!」
「ここであったのも何かの縁。これからの世界で私と一緒に歩いていきませんか?」
彼女の顔が急に赤くなった。
(し、しまった!!初対面なのに、これ、プロポーズじゃん)
「前世のこと、話せる人が近くに居るのは......嬉しい」
「よ、よろしくお願いいたします!!」
それから私達は手をつなぎ、湖に向かって歩み始めた。
ただしくは湖の隙間に、だけど。
「それじゃあいこう!!」
「はい!!」
扉を開いた。




