表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

暗転

ある家族が街はずれにある湖のほとりで散歩している。

「みてみてパパ!!」

「なんだい?」

「湖に向こう岸の山、綺麗!!!」

「ここはね、霧が晴れてきた今見える景色が一番なのよ~ね、あなた!!」

「そうだね。君たちここで待っていなさい。パパがもっと良いものを見せてあげる」

「久々に見れるのね!!」


私は湖に向かって歩いた。


「ママ?パパが水の上を歩いてる!!え!?どういうこと!?」

水面を歩いている様子を見て我が娘が驚いていた。

「パパはね、凄いの!!でもね、秘密よ?誰にも言っちゃいけない良いわね?」

「わかったわ」

「それで、パパは何をしてるの?」

「まぁ見ていなさい」


(そろそろ良いかな)

水深5mと言ったところだろうか。


「そろそろ始めるぞ!!ママ、音楽頼む」

「わかったわ!!」

妻はどこからともなく大きなハープを取り出して演奏を始めた。

「私が愛する妻、娘へのプレゼント、題して「闇と光と水」!」


噴水のように水面から水が吹きあがった。

ビー玉サイズの水玉を光の反射を利用して輝かせたり、湖底の泥を活用して色を付けたり。

そう、これはあの時俺が見たショーの再現。


草木や動物を表現したり、音楽にシンクロさせてみたり。



「いつみてもあなたの水上ショーは綺麗だわ!!」

「パパすごい!!」


(良き人生・・・最高に幸せだ)

(思えば前世から色々あった。本当に大変だった)


(今日も一日頑張った。疲れた。帰るぞ!!!!)

俺はしがない会社員で、工場勤務をしている。

(さて、、、夜ごはんどうしようかねー......)

ロードバイクにまたがり、夕食の内容を考えながら道路を走っていた。


俺は今、工場のあるこの町で一人暮らしをしている。

町は、ほとんど山の麓、と言っても過言ではない場所に位置していて、自動車での移動が基本だ。

だが俺は違う。

夢を叶える為、老後資金を蓄える為、自動車を持たずロードバイクで生活している。

おかげ様で新卒3年目で500万円を貯めることができた。


(コンビニ弁当は楽だが、コストがかかる)

(自転車生活を始めて明らかに食事量が増えた)

(自炊以外ないっしょ!!)


「今日の夜ごはん何しようか」


もちろん、後続車や対向車には細心の注意を払っている。


「ちっ!坂道で赤信号か・・・しかも最前列じゃなくてど真ん中。今日はついていないな」


いくら軽いロードバイクであっても坂道発進はエネルギーを使う。

長い車列のど真ん中だから、信号切り替わってもすぐには「Go!」とはならない。

動き始めても最初はノロノロ。

実は自転車の方が初速度は早いのだ。

前方車両との衝突、後続車両による追突の危険性を考慮し、ペダルを踏みこんでは地面に足を付ける。


(やっと流れがスムーズになってきたな・・!!!信号も青のままだ!!)

「Let's Go!!!!!!!GOGOGOGO!!!」


その時である。

対向車が右折を開始。

「え、あ、、え、やば、、、、、」


宙を舞った。

(受け身!!!!!!間に合え!!!!)


脳からの指令により身体は動いた。

なんとか受け身の姿勢で地面に倒れ込むことに成功した。

しかし運が悪かった。

ここは橋。

コンクリートの柱に頭を思いっきり激突させてしまったのだ。

ヘルメットは着用している。

だが当たり所が悪かった。


その日、手術むなしく、俺は病院で死んだ。





(ここはどこだろう・・・・?)

(夢を見ているのだろうか?)


真っ暗な空間にぽつんと一人。


(不思議な空間だ。寒さも、空腹も、立っているときの疲労感もない)


しばらくすると、目の前でパーティクルライブが始まった。

そのライブでは色とりどりのパーティクルで、草木や動物、星と様々なものが表現されている。

背景に流れている曲は聞いたことがないもので、ボーカルはない。吹奏楽やオーケストラの生演奏でもなく、天才がDTMで作った曲、そんな感じ。パーティクルが音にシンクロして点滅し、心が躍る。


(そろそろクラマックスかな)


これまでの記憶の画像が複数パーティクルに合わせて流れてきた。

最期は映画のエンドロールのように、これまでに関わった人物名が流れ、最後に「総資産」が表示されてライブが終わった。


パーティクルライブ終了後に死亡直後の映像が映されて、色々と知ることができた。


(そうか、俺は死んだんだな)

(というか、俺の人生の価値、安すぎないか・・・)


死後、両親が対向車両ドライバーに対して賠償金5億円を吹っ掛けた。

しかしそのドライバーは任意保険未加入で、手に入ったのは自賠責分のみの3,000万円。事実上の亡き寝入りを余儀なくされた。


賠償金と保有資産の価値合計が人生の価値だとすると3,500万円。


・・・・・俺の人生は3,000万円の価値だった。なんという安い人生。いや保有資産分を合わせれば3,500万円か。それでも安い。あと結婚して子供欲しかった。来世はもっと上手く生きよう。




((君の願い、叶えてあげよう))



どこからともなく、声が聞こえてきた。

パーティクルが集まってきて、人型を成した。

その姿は初恋の相手にそっくり。


((この姿は君の記憶の奥底にある人物に合わせている))


((これまで生きてきたところとは別の世界へ君を送る。君たちの世界で言うところの異世界転生になるのかな?))


(どういうことだ??)


((君は今、身体がない。意識のみある状態だから発言することはできない))

((心の声は聞こえているけどね))


(心の声が聞こえるなら会話も可能では!?)


((一度しか言わないからしっかり聞いてね))


(無視か)


((君がこれから行く世界は剣と魔法の世界。君の適正は水だね)

((生前なんとなく水に対して愛着なかった?))


(確かにプール大好きだし、好きな色は青系、特にスカイブルーが好きだった)


((適性はね、魂の紐づけされるの))

((魔法のない世界では意味をなさないけど))


((私が今回あなたにプレゼントするのは、高い適性強度と前世の記憶よ))

((前回転生のお詫びもかねてね))


(前回転生!?どういうこと!?)



((さぁ、いってらっしゃい!!))


目の前が真っ暗になり、短めのパーティクルライブが始まった。

最期にパーティクルの扉が形成され、吸い寄せられた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ