拠点の街〜コロッコ〜
妖精に言われた道を進むと、明かりが見えてきた
安心した自分は思いっ切り走り出す
「おっとと! あっここ良い!」
妖精が左肩から転げ落ちて、制服の左胸のポケットにスポッと収まった
街の前、門の所にたどり着いた
「止まれ!!」
「!?」
門番と思われる2人の人が槍をこちらに向けてきた
「貴様何者だ! こんな夜中にやってきて、見慣れぬ装いをしているな!」
自分から見て左側の門番が言う
『旅の者です』
『迷子です』
→『…………』
「…………」
いきなり槍を向けられて、何も考えられない!
「何故黙っている! 答えろ!」
「…………」
「あーもー!! こっちは森で蜘蛛に襲われて疲れてるの! ボロボロなの見たらわかるでしょ!!」
妖精がポケットから出てきて、門番に言う
「……妖精? なんだ? 妖精使いか?」
門番が槍を下ろす
妖精使い?
→『警戒しないの?』
『疑いは晴れた?』
「警戒しないの?」
自分が呟く
「妖精は悪党には懐かんからな、少なくとも賊ではないんだろう」
そんなものなのか?
「先輩」
「んっ? ああそうだな、おい身分証とかは無いのか?」
門番に聞かれる
「身分証……」
無くはない
高校の生徒手帳がある
でも、これは異世界では役にたたないだろう……
「無いです……」
「あ~だったら500リッカで街に入れられるが……」
「リッカ?」
「なんだ? 金を知らないわけじゃないだろ?」
金と言われて、ポケットからコインを取り出す
→『これですか?』
『金ならある』
「これですか?」
「なんだあるじゃないか、3000リッカもいらんぞ」
門番に500リッカを渡す
その時に通貨の種類を教えてもらった
門が開く
「この街コロッコは夜間は門をこうやって閉めてるからな、街の外に出るなら明朝から夕方までにするように」
「わかりました」
この街はコロッコって言うのか
「それと、宿ならここを使え」
門番が紙を渡してくる、簡易的な地図だ
印がつけられてるのが宿屋だろう……文字は読めないが
「ありがとう」
「おう!」
ーーーーーーーーー
地図を頼りに宿屋に辿り着く
「いらっしゃい、こんな夜中に来るなんて珍しいね」
店主だろうか? 中年の女性がカウンター越しに言ってくる
→『街に来たばかりで』
『すいません』
「街に来たばかりで」
「そうかい、うちは一泊300リッカだよ、泊まるかい?」
「泊まります」
今は少しでも早く休みたい
「確かに、これが鍵だよ、あとこれも持っていきな」
「……パン?」
「もう夕食の時間は終わってるからね、お腹が空いたままじゃ寝れないだろ?」
「ありがとう」
そう言えば何も食べてない
「後で水を持って行くから」
店主の再びお礼を言って、指定された部屋に行く
ーーーーーーー
「あ〜疲れた!」
部屋に着くや否や、妖精は胸ポケットから出てきて、ベッドに座る
→『本当に疲れた』
『全然余裕』
「本当に疲れた」
自分も椅子に座り、机にパンの入った籠を置く
すぐに眠りたい所だが、折角貰ったパンだ
食べてから寝よう
『食べる?』
→『どれくらいいる?』
「どれくらいいる?」
パンを持って妖精に聞く……食べるよな?
「掌くらい」
妖精が机の上に飛んでくる
パンを千切ってわける
「おっ? 妖精かい? 珍しいねぇ」
店主が水を持ってきてくれた
「妖精用のコップは流石に用意してなくてね」
「平気平気」
妖精はコップに注いだ水に何かする
すると水が球の形になって浮いた
妖精の前に水球が来ると、妖精は吸うように水を飲む
「はは、器用だねぇ!」
店主は笑う、そして自分を見る
「朝食はちゃんと用意できるから楽しみにしてな! あと風呂は無いから、水浴び用の水と布、それと水浴び場を明日教えるよ」
『助かります』
→『ありがとう』
「ありがとう」
店主に礼を言うと、どういたしましてと言って出ていった
ーーーーーーー
食事を終えて、就寝の準備をする
……歯ブラシとか無いのだろうか? 売ってるなら買っておこう
そして寝る
妖精は自分の枕元で眠っている……寝返りとかで潰さないようにしなくては……
············
「?」
白い空間に立っている
真っ白で何も見つからない
前に歩くと進める……進んでいるのか?
暫く歩くと……
「やぁ、いらっしゃい」
「…………」
人が居た
男か女かわからない、中性的な人だ
→『誰だ?』
『どっち?』
「誰だ?」
「初めまして、明光 零君」
自分の名前を知っている……
「私はこの世界の神様さ!」
「…………」
『神様?』
『正気?』
→『いかれてるのか?』
これを言うには勇気が足りない……
『神様?』
→『正気?』
『いかれてるのか?』
「正気?」
「正気だよ」
自称神は笑っている
その自称神が何の用だろうか
「何の用って顔してるね、まあ時間もあまりないし、簡潔に説明しようか」
自称神は真剣な顔をする、これはちゃんと聞いたほうが良さそうだ
「先ず、君をこの世界に呼んだのは私だよ」
「!?」
「はい落ち着いて、理由を言うから」
→『落ち着けるか』
『……わかった』
「落ち着けるか」
「そらそうだ、でも怒るのは話が終わってからにしてほしいな」
座らさせられる
「君を呼んだのはこの世界を救ってほしいんだ」
→『世界を救う?』
『……何を言ってる?』
「世界を救う?」
自分は只の高校生だ、世界を救うなんて出来るわけない
「今、自分じゃ無理だって思ったでしょ?」
「…………」
「そう思うのは仕方ない、でも私は君じゃないと救えないと思ってる、君だから救える!」
「?」
「勿論、私からある程度の助力はするよ、例えば……」
自称神は自分の胸元に触れてくる
自称神の手が光り、自分の中に何かが入ってきた
「これで、君は魔物使いになった、倒した魔物や理解しあった魔物を君の力として使えるようになった」
→『魔物使い?』
『?????』
「魔物使い?」
「この世界には多くの魔物がいるからね、取り敢えず今回は契約の力だけ……一気に力を渡したら君の身体が壊れるからね」
さらっと恐ろしい事を言った
「更に大きな力は君が成長したら授けていこう」
「契約の力……」
「零、これからこの世界には7つの厄災が訪れる、君はこれから出会うであろう仲間達と共に、厄災を退けてほしい」
→『厄災?』
『仲間達?』
「厄災?」
「私の未来を見る力で見た、世界を襲う災害さ」
どんな災害かは教えてくれないのか?
「悪いけど教えるのは難しいね、口で言っても伝わりにくいし……」
「仲間達?」
「君がこれから出会う絆だよ、その絆が君を強くする」
イマイチ、ピンとこない
「これからわかるさ……おっともう時間だ」
意識が遠退く
「零、私は君を見ている、見守っているよ」
………………
ーーーーーーーーー
「っ!?」
飛び起きる
「妖精王様!!」
妖精も同じタイミングで飛び起きた
「…………」
「…………」
お互いに見つめ合う
今見た夢の事を彼女に話すか?
→『話す』
『話さない』
「少しいい?」
「うん、わたしも話がある」
彼女は自分の事情を知っている唯一の存在だ
隠し事はしたくない
ーーーーーーーーー
夢で見た自称神の事を妖精に話した
「魔物使いに7つの厄災……あんた妙な事に巻き込まれたね」
妖精は同情的な目で見てくる
「まあ、わたしもあんたの事あまり言えないけど、わたしの方はね」
妖精が語りだす
彼女の夢で妖精王と言う、妖精で1番偉い人が現れたこと
その妖精王が自分の手助けをするように命じた事
『大変だな』
→『似たようなものだな』
「似たようなものだな」
「ほんとにね」
妖精は笑う
「まぁ、妖精王様の命令なら逆らう訳にはいかないし、わたしも一緒に居てあげる」
『頼もしいよ』
→『もうイタズラしない?』
『足を引っ張るなよ?』
「もうイタズラしない?」
「してあげようか?」
2人で笑い合う
「そうだ、レイ、わたしに名前を付けてよ」
「名前?」
「名前を付けられたら、わたしはもっと強くなるし、あんたの魔物使いの力も使えるんじゃないの?」
『倒した魔物か理解しあった魔物を君の力として使えるようになった』
自称神はそう言っていた
理解しあった魔物……妖精も魔物扱いなのか?
『ピンク』
→『スモモ』
『ヨウセイ!』
『イタズラムスメ』
「スモモ」
「スモモ?」
妖精の色がピンクで桃が浮かんだ
モモよりもスモモの方が語呂が良い様に感じる
「スモモ……スモモ……うん気に入った! これからわたしはスモモだ!」
妖精……スモモは嬉しそうに飛ぶ
彼女との間に絆を感じた
……!?
身体の中から力を感じる
……これが自称神の言った絆の力なのだろうか?
「レイ! お腹すいた!」
スモモは胸ポケットに入って言う
取り敢えず、朝食と水浴びを済ませよう
そしてこれからの事を決めていこう
自分達は部屋を出た