近付く驚異
5月5日
取り敢えず、何か情報を手に入れたい
そう思って、ギルドに顔を出す
「どうなってんだい! 何か恐ろしい事が起きてるのかい!?」
「ラード村もアッサム村も無くなってんだぞ!」
「ギルドは何もしないのか!!」
「お、落ち着いてください! 現在調査中ですから!!」
多くの人が受付で騒いでいた
アヤメさんを含めた受付の人達が必死に対応してる
「おっ、レイ」
「モーリンさん」
→『この状況は?』
『苦情?』
「この状況は?」
「レイは知ってる? この1ヶ月の間に、コロッコから西の村や街が消滅してる話」
「消滅?」
「文字通り消滅、人も建物も作物も、全部跡形も無く消えてるんだって」
「それで、その話を聞いた人がギルドに?」
「そういう事……これは今日は仕事は受けられなさそうだ」
「…………」
西の方で村や街が消えてる……これが厄災?
ギルドの方で情報を手に入れるのは、今は無理そうだ、日を改めよう
ーーーーーーーーー
宿屋に戻ると、マイヤに買い物に誘われた
特に用事もなかったから、一緒に買い物に行く事にした
ーーー商店街ーーー
「あったあった、本当に仕入れてた」
マイヤは大量の鍵が着いた箱を買ってきた
→『それは?』
『アンティーク?』
『ゴツいな……』
「それは?」
「これ? 鍵開けの練習用の道具、ほら、ボクは中級までの鍵しか開けれないから……今はまだ困ってないけど、これから必要だから、上級や超級も開けれるようにならないとね」
『熱心だな』
→『頼りにしてる』
『自分も覚えないとな……』
「頼りにしてる」
「うん!」
マイヤは嬉しそうだ
彼女と絆が深まるのを感じる
「ねえレイ、どっか寄っていかない?」
→『甘い物でも食べよう』
『お茶でも飲む?』
『帰ろう』
「甘い物でも食べよう」
「やった!」
マイヤとお店で軽食を楽しみ、宿に戻った
ーーーーーーー
夜
夜ならギルドも落ち着いてるかと思って、覗いてみる
「アヤメちゃ〜ん、書類仕事終わる気しないんだけど〜」
「終わらせないと明日もっとキツイですよ! 明日は冒険者の人達の対応もしないと! またクエストが受けれないなんて出来ませんから!」
「うわ〜ん!!」
どうやら修羅場の様だ
そっとしておこう
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宿屋に戻って、スモモを誘って酒場に来た
自分もスモモもジュースを貰う
「へぇ~夜だとこういう店があるんだ」
スモモは珍しそうに周りを見渡す
トンッとスモモの前にジュースが置かれる
グラスはスモモよりも高さがある
→『飲みきれる?』
『入れそうだな』
「飲みきれる?」
「うーん、多分大丈夫!」
スモモは風魔法でジュースの球を作り、少しづつ飲んでいく
器用だな
「魔法の技術を磨くのにはピッタリだね」
スモモはジュースを飲みながら言う
どうやら、魔法関係の力が向上したようだ
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5月6日
ギルドに行ってみる
すると、受付が分けられていた
5カ所ある受付、そのうち3つが市民の話を聞いていた
アヤメさんともう1人はクエストを受付ているようだ
適当に討伐クエストの依頼書を取り、アヤメさんの受付に行く
「あっ、レイくん、クエストですね?」
→『大丈夫ですか?』
『疲れてる?』
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ〜」
ギリギリだな……
「クエストは、討伐クエストですね」
受領の印鑑を押していくアヤメさん
「アヤメさん、街の消滅って本当ですか?」
「現在調査中、私も詳しくは知らないんです」
「そうですか……」
どうやら、まだ情報を手に入れるのは無理みたいだ
それなら、今は鍛える事に集中しよう
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コロッコの森
「ゴースト!」
ゴーストが火の魔法でスライムやスパイダーを蹴散らす
「ゴーストって幽霊だから物理効かないんだね」
スモモが、ゴブリンの攻撃をすり抜けてるゴーストを見ながら言う
「火の魔法も使えるから、戦略が広がるな」
自分も初級の火の魔法は使えるが……
威力は低いし、ゴーストに任せた方が火力がある
ゴーストは楽しそうに魔物を蹴散らしていく
そして、目標数の素材を集めた
帰りの道中で、スパイダーと契約した
魔物とは出来るだけ多く契約したい……
ーーーーーーーーー
アヤメさんにクエスト完了の報告をし、報酬を貰う
そして宿屋に戻った
夜、物音がするから、廊下に出る
シルクさんが部屋から荷物を運び出していた
→『手伝いましょうか?』
『私物ですか?』
「手伝いましょうか?」
「ううん、大丈夫……」
シルクさんの顔は少し暗い
「おっと!」
「っと!」
階段でバランスを崩したシルクさん
駆け寄って、腕を掴み抱き寄せる
「やっぱり手伝います」
「ごめんね、ありがとう」
2人で荷物を1階に運ぶと、出入り口にギルドの職員が居た
「こちらです」
「お預かりします……」
ギルドの職員にシルクさんは荷物を渡す
帰っていく職員
「今のは?」
「お客さんの荷物……元お客さんかな」
→『逃げたんですか?』
『元?』
「逃げたんですか?」
あれっ、でもここって料金前払いだよな?
「ううん、死んだの」
「!?」
「結構あることだよ、クエストに行って死ぬ事なんて」
シルクさんの表情は暗い
「こればっかりは何回やっても慣れないね」
『慣れるべきじゃない』
→『……自分達は死にませんから』
「……自分達は死にませんから」
「うん、約束ね」
シルクさんはそう言って微笑む
彼女の事が少し分かった気がする
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5月7日
モーリンさんに魔法を習っていた
しかし……
「うーん、私じゃこれ以上教えるのは無理かな……初級なら全部いけると思ったけど、無理矢理教えて事故を起こすわけにはいかないから」
『すみません』
→『剣とは違いますね』
「剣とは違いますね」
「魔法は適性もあるからね、初級なら普通は誰でも覚えられるけど、中級からは自分に合った属性を極めていくからね」
自分が他の初級魔法を覚えられないのは、何か理由があるのだろうか
自分に才能が無いだけかもしれないが……
「これあげる」
「手紙ですか?」
「王都に居る、私の師匠あての紹介状、それをギルドに出したら師匠と会わせてくれるから」
「モーリンさんの師匠ですか?」
「そうそう、私と同じダークエルフ、師匠なら何があっても対応できるから、レイくんにちゃんと教えられると思うよ」
「ありがとうございます」
紹介状を受け取った
いつか王都に行けたら、モーリンさんの師匠に会ってみよう
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夜
スモモと部屋で過ごしていた
そう言えば、面白そうな本を買ったな……読んでみるか
『基本的な会話術』
挨拶から始まり、挨拶で終わる
相手の目を見て話しましょう
そんな当たり前の事が書いてある
当たり前の事だが……自分は実践できてるだろうか?
自らの行いを考えさせられた
話術がシッカリと上がった
話術が『つたない』になった
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5月8日
ギルドに顔を出す
今日もやっぱり多くの人が押し寄せていた
アヤメさんは今日は市民の対応役の様だ
どうしたものか……
「うわ、なんだこの騒ぎ!?」
出入り口の方で声がした
久し振りに聞く声に振り返る
「おっ、レイ! この騒ぎは?」
王都に行っていたリュゲイさんが自分に駆け寄る
自分は状況を説明した
「あ〜それでか……まあ、こんな騒げるならこの街はまだ大丈夫だな……間にあったみたいだ」
間に合った?
リュゲイさんが言うと
バン!!
大きな音をたてて、出入り口の扉が開いた
「おいおい! なんでギルドにこんな集まってんだぁ〜?」
初めて見る男性が入ってきた
ドスンドスンと大きな足音を立てる
その男性の後ろから、2人の女性が入ってきた
男性はギルドを見渡して、アヤメさんの受付に行き
ドン! と机を叩く
「冒険者じゃない連中が、なんでここに居るんだぁ?」
「『エルメン』さん、市民の方を驚かせないでください」
「エルメン? 炎の剣士エルメンか!?」
市民の1人がそう叫ぶと、ざわざわとギルド内が騒がしくなった
エルメン? 誰だ?
「あの、Aランクのエルメンか!」
「てことは、後ろの2人もAランクの!!」
市民の人達がそう騒ぐ
説明ありがとうございます
「俺様の事がわかってるんなら、お前ら帰れ! 何かあって来てるかもしれないが……全部俺様が解決してやる!! さあ帰った帰った!」
エルメンさんがそう言うと
Aランクが言うならって言いながら、市民の人達が帰っていった
あっという間にギルド関係者だけになった
「エルメン、良い演技だったぞ」
リュゲイさんがそう言ってエルメンさんに近付く
「そうか? あっ、アヤメちゃん机凹ませちゃって悪いね、修理代後で払うから」
「必要経費で上に申請しておきますから大丈夫ですよ」
「あれ? さっきとちがくない?」
スモモが胸ポケットから顔を出して言う
「レイ、こっち来てくれ、紹介する」
リュゲイさんに呼ばれる
「エルメン、この子が前話したレイだ」
『初めまして』
→『レイ·アケミツです』
「レイ·アケミツです」
「あぁ、俺様はエルメンだ、リュゲイから活躍は聞いてるぞ」
握手する
力が強い……
「エルメン、痛がってる」
「っと悪い」
「弟がごめんね」
2人の女性がエルメンさんの前に出る
「アタシはエルメル、エルメンの姉よ、僧侶やってるの」
「ヒューム、魔法使い」
「よろしくお願いします」
この人達もAランク……今の自分から見たら、かなり上の人だな
「所で、3人はリュゲイさんが連れてきたんですか?」
アヤメさんが聞く
「ギルドマスターに頼まれてな、呼んでもらえる?」
リュゲイさんが答える
アヤメさんが裏に行き、少ししてから大柄な男性を連れてきた
「来たか! エルメン! エルメル! ヒューム!」
「よお!おっさん! 相変わらずでけえな!!」
エルメンさんがそう言うと、エルメルさんに殴られた
「ギルドマスターに失礼でしょうが!!」
「姉貴、杖で殴るのはねえだろ……」
「相変わらずだな!」
ギルドマスターが受付を越えて、こっちに来た
そして真剣な顔をする
「リュゲイから聞いたな? お前達の力を借りたい」
「ある程度は聞いたが、詳しい情報が欲しい……俺様達を呼んだんだ、何か掴んでんだろ?」
一気に空気が変わった
「ここで話すの?」
ヒュームさんが聞く
「今回は多くの人手が必要だからな、この場にいる冒険者にも説明がてら聞かせたい」
「よし! おい周りの連中も集まれ! 金儲けだぞ!」
エルメンさんが言うと、傍観してた他の人達も集まってきた
そして、ギルドマスターが口を開く
「さて、この1ヶ月で街や村が消えてる話は知ってるな?」
「西からどんどんコロッコに近づいてるんだろ?」
「消えた現場を調べたが、本当に何もかも無くなっていた、しかしコレだけが見つかった」
ギルドマスターは懐から葉っぱを取り出した
少し欠けてる
「これ、まさかそういう事?」
ヒュームさんが葉っぱを受け取って言う
「流石だな、それだけでわかったか」
自分は全然わかりません
「この葉っぱの噛み跡………『カヴァレッタ』」
ヒュームさんがそう言うと、周りがざわついた
「カヴァレッタって何です?」
リュゲイさんに聞く
「虫の魔物だ、群れで行動して、食物を食い荒らす」
「カヴァレッタの蝗害だって言うのか! 奴等が食うのは草とかだろ? 村が消える理由になるか!」
1人の冒険者が言う
「おい、お前ランクは?」
エルメンさんが冒険者に聞く
「Cランクだが?」
「なら知らないか、カヴァレッタは弱い個体だと草木しか食わないが、強い個体が群れを率いると、岩や動物も食うようになる……人間もな!」
「ひっ!」
冒険者が尻餅をつく
「つまり強力な個体がボスとなり、次々と村や街を襲っている」
「そして、その群れの数は通常よりも増えてると考えるべきね」
ヒュームさんの後にエルメルさんが呟く
「それで、俺達と多くの冒険者か」
「そういう事だ」
「レイ、わかったか?」
リュゲイさんが聞いてくる
『大丈夫です』
→『正直いまいち……』
「正直いまいち……」
「ならまとめてやる、今回の村や街の消滅はカヴァレッタという魔物の群れによる蝗害だ」
カヴァレッタの群れが、村や街を襲い、作物も家も人も全て食べたって事
「そして、食べて栄養を得たカヴァレッタはその数を増やした」
ドンドン増えていったと
「その蝗害は恐らく次はコロッコを襲う」
この街に襲ってくると
「だから、エルメン達と皆で力を合わせてカヴァレッタを討伐するって事だ」
「なるほど、わかりました……でもどうやるんです? 普通にしてたら、自分達も食べられません?」
外壁も機能しないだろう
「そこで、アタシの力を使うの!」
エルメルさんがいつの間にか目の前に居た
「力?」
「アタシは大きな結界を張れるの、魔力で作った結界はカヴァレッタでも破れない」
「その結界で街を覆う、そして結界の中からカヴァレッタを攻撃し、俺様と何人かで群れのボスを探して始末する、そういうこったろ?」
エルメンさんが言うと、ギルドマスターは頷く
「村や街が消えた日から計算して、コロッコが襲われるのは11日だ! 10日までギルドの方で参加する冒険者の募集をする! 皆の力を貸してくれ!!」
11日……自称神が言ってた日付と一致する
カヴァレッタ……それが今回の厄災で間違いない
「アヤメさん、自分も参加します、受け付けてくれますよね?」
「はい受け付けます……レイくん、無理はしないでくださいね?」
「出来る限りの事をしますよ」
「おっ、レイやる気あるな! ほらお前ら! こんな子が参加するんだ! まさか逃げるなんてしねえよな!!」
エルメンさんがそう言うと、他の冒険者も参加を表明していった
ーーーーーーーーー
ギルドから出る
11日までにカヴァレッタ対策を自分達も考えよう
名前 明光 零
レベル17
HP 212/212
MP 100/100
勇気 2 なくはない
知識 2 それなり
技術 1 不器用
話術 2 つたない
器 1 心狭い
絆
イタズラ妖精 スモモ ランク3
ギルドの受付 アヤメ ランク2
冒険者の剣士 リュゲイ ランク2
宿屋の看板娘 シルク ランク3
盗人の少女 マイヤ ランク3




