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ある日森の中

 4月1日



「…………」


 ここはどこだ?


「……森の、中?」


 見渡す限り木、木、木

 森と林の基準はわからないが、森の中って事でいいだろう


「…………」


 どうしてこうなった?

 今までの事を思い出そう……



 ··············


 3月14日


「本当に近場で良かったのか? (れい)の合格祝いなんだぞ?」


 車を運転しながら、父が聞いてくる


「そうよ、お金の心配とかしてるの? 大丈夫よ! お父さんもお母さんもちゃんと稼いでるんだから!」


 助手席の母が笑いながら言う


「……3人で過ごせるなら、どこでもいい」


 自分は両親に伝える

 共働きだから、家族が揃う事なんて滅多に無かった


「……寂しい思いをさせてたな」

「そうね、少し残業減らそうかしら」


 両親がそんな話をしている


「よし、零! 今日は目一杯楽しむぞ!!」


 父がそう言って笑った

 母も笑う


「……はは」


 自分も笑った

 自分の高校受験の合格祝いだ、しっかり楽しもう


 ーーーーーーーー


 出掛けた先は県内にあるテーマパークだ

 幼少の時に1度だけ家族で来たことがあった

 父に合格祝いに何がしたいか聞かれた時、ここが頭に浮かんだ


「おっ、思ったより空いてるな」

「これなら色々乗れそうね」


 両親と一緒に、テーマパークを楽しんだ

 幼少の時は乗れなかったアトラクションも楽しめた


 ーーーーーーーー


 夕方


 父の運転で帰路を走る

 母は助手席で寝ている

 自分は合格祝いに買ってもらったスマホを見る

 テーマパークで撮った様々な写真をフォルダを作って整理する


 ……とても楽しかった


 キキィ


 車が止まる、前を見ると赤信号だ


「家に着いたら、母さんを運ぶのを手伝ってくれるか?」


 父が聞いてくる


『めんどくさい』

 →『任せて』


「任せて」

「頼もしいな」


 父は嬉しそうに笑う


「っん?」

「?」


 父が変な声を出す


「……おいおい、スピード出してるな」


 前を見ると向こう側から車が来ているようだ、ライトの光が見える


 …………ライトの光がドンドン大きくなる


「!?」


 スピードを全然落とさない!?

 もう交差点の手前だ!


「っ!? 零! 頭を守れ! 」


 父が母を抱きしめる

 目の前に車が突っ込んできた


「!!」


 頭を抱えて屈む

 次の瞬間、凄まじい衝撃が走った



 ーーーーーーーーー


 3月25日


「…………ここは?」

「零! 零! 目が覚めたんだね!!」

「……おじ……さん?」


 身体が痛む

 左を見ると、父方の伯父が居た


「すぐに医者を呼んでくる!」


 伯父が視界から消えた

 周りを見渡す……どうやら、病院の様だ


「……何が?」


 確か、テーマパークで遊んで……

 …………頭が痛い


「零、先生がもうすぐ来るから!」


 伯父が戻ってきた

 少しすると、医者がやって来た

 自分の事を聞かされる


 テーマパークの帰りに、飲酒運転をしていた不良の車と正面衝突したらしい

 幸い、自分の怪我は打ち身程度らしく、あと数日様子を見たら退院できるらしい


「先生、ありがとうございます!」

「では、安静にしてくださいね」


 医者が病室から出ていく


「…………?」


 なんで伯父が居るんだろう?


『父さんは?』

『母さんは?』

 →『2人は?』


「2人は?」

「…………」


 伯父が黙る、気不味そうだ


「…………」


 嫌な予感がする


「零、落ち着いて聞いてくれ……2人は」


 嫌だ

 聞きたくない

 止めてくれ


「死んだよ……」

「!!!」

「零!!」


 飛び起きて、身体を走る激痛に顔を歪める


「零! 大丈夫だ! 君を1人にはしないから!」


 伯父が自分を抱きしめる


 頭がまだ混乱しているが……両親の死を受け入れるしかない


 →『2人はどこに?』

『葬儀は?』

『犯人は?』


「2人はどこに?」

「もう葬儀を終えて、火葬も終わったよ……零が目覚めるのを待ちたかったけど、いつ目覚めるか分からなかったから……申し訳ないけどね……納骨はまだだから、一緒に行こう」


 どうやら、両親は既に火葬されたようだ……

 最後のお別れも出来なかった……


「犯人は?」

「捕まって今は留置所の筈だよ、目撃者も証拠もあるから、間違いなく刑務所行きだね……あのクソ野郎」


 伯父から殺気が漏れてる

 会ってないが、犯人はよっぽど酷い人物の様だ


「取り敢えず、零は身体を治すことに集中して、詳しい事は退院してから話そう」

「…………」


 伯父の言う通りにしよう


 ーーーーーーー


 3月30日


 退院し、家で伯父と話す

 葬儀の間に親戚の話し合いがあり、伯父が自分の保護者として面倒を見てくれるらしい


「高校への手続きは済ませてるから、1日の入学式には問題なく出れるよ」


 伯父はそう言うと、色んな物をテーブルに並べる


 高校関係の書類

 遺族関係の書類

 通帳?


『これは?』

 →『通帳?』


「通帳?」


「えっと、君の両親が君に残したものだよ、2人の生命保険と君のお父さんの任意保険で入ったお金だよ……確認してごらん」


「…………!?」


 通帳を開く

 物凄い大金が振り込まれている


「それだけあれば、高校生活も大学への進学での困らないと思う、なんだったら数年は働かなくても暮らせるんじゃないのか?」


 こんな大金があっても……両親が居ない……


「零、いきなり両親を奪われて辛いと思う、でも……いや、だからこそ君は幸せになるべきだ! それが2人の望みだと俺は思うよ」


 伯父から心配されてる気持ちが伝わる


 →『大丈夫』

『辛い……』


「大丈夫」

「……俺、近くに引っ越すから、何かあったら頼ってくれよ?」


 →『一緒に暮らさないの?』

『わかった』


「一緒に暮らさないの?」

「……ここは、君の……君達の家だよ」


 ……そうだ、伯父も弟を失ったんだ

 伯父は自分も辛いのに、自分()の事を気にかけてくれている

 自分もこの人みたいな大人になりたい



 ーーーーーーーー


 3月31日


 退院した後の整理や、入学式の準備も済んだので、両親の納骨に向かう

 車は自分が怖かったので、電車にしてもらった


 納骨を無事に終えて、両親に別れを済ませる


 駅に戻って、帰ろうとした時……ふと行きたい場所が浮かんだ


「どうしたんだ?」


 伯父が自分を見る


「……」


『テーマパークに行きたい』

 →『先に帰ってて』


「先に帰ってて」

「…………あっ、わかったよ、気を付けて」


 伯父は察してくれたようだ


 ーーーーーーーー


 テーマパークに1人でやって来た

 ほんの数日前に家族で来たところだ


 テーマパーク内を歩く

 そして、ベンチに座る


 スマホを取り出す……昨日修理から返ってきたスマホだ

 フォトを開き、写真を見る


 母がメリーゴーランドに乗っている写真

 ジェットコースターに乗ってる自分と父を遠くから母が撮った写真

 お化け屋敷の出口でへたり込んでる父と父の頭を撫でる母の写真


 ポタッ


 画面に涙が落ちる


「…………」


 もう2人が居ない

 その事実を実感する


「……」


 涙が止まらない


 ··········


 ようやく落ち着いた自分は家に帰った


 ーーーーーーーー


 4月1日


 高校の入学式、伯父が保護者として一緒に来てくれた

 お決まりの入学式の看板と一緒に写真を撮ったり

 中学からの友人と雑談したりして過ごした



「じゃあ俺は帰るけど、零も遅くなる前に帰るんだぞ?」


 伯父はそう言って帰宅した


 自分は中学からの友人と暫く過ごしてから、帰路についた


 そう、帰宅する最中だった


 ···············


「…………」


 思い出しても意味がわからない

 何故街中から森の中なのか……


「…………」


 実は夢を見てるとか、そんなオチではないだろうか?


 プニッ


 頬をつねる

 痛い


 夢ではないようだ


 ヒュウウウウ!


 風の音

 そして何かの鳴き声も聞こえる


「……」


 このままここに居ても埒が明かない

 取り敢えず歩こう



名前 明光 零

レベル1


勇気 1 臆病者

知識 1 世間知らず

技術 1 不器用

話術 1 コミュ障

器  1 心狭い

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