第8話戦い
「はあっ!はあっ!」
俺は息を荒立てアフライトの元へ走り出した
背中には体格に見合っていない鞘と右手には重たく大きい剣
これを握っていると父さんはきっと、俺が大人になった時にこれを渡そうと思ってたんだろうな
そして俺は血塗れで血が滴る剣を目線で見る
俺にとって最後の宝物か
一向アフライトは血の魔法を操り無詠唱を使う女魔術師と戦っていた
「おじさん、そろそろ諦めたらどう?」
「……俺が諦める?馬鹿言うんじゃねえよ」
「息が上がってるのによく言えるわね」
メイデンは血の剣を振り下ろす
アフライトは戦鎚で剣の攻撃を受け止めて蹴りを繰り出す為に脚を動かそうとするとメイデンは体力が無くなり力が弱くなっているアフライトを見て強引に戦鎚を跳ね返した
「うおっ!!」
アフライトの右腕は宙高く上がり腹がガラ空きになる
「終わりよ!!!」
メイデンが血の剣を薙ぎ払い血の剣はアフライトの腹に食い込んだ
「手応えが……変?」
「そりゃ鉄だからな」
アフライトは戦鎚を振り下ろしメイデンの顔に迫る
するとメイデンは血の剣の形を変えて横に向かって勢いよく噴射した
その勢いでアフライトの戦鎚を避け転がりながら距離を離し体勢を整えた
「やるな」
「でしょう?」
メイデンがアフライトを見上げるとポタポタと汗にしては以上な量が出ていた
「アンタ……よくもやったわね!?」
メイデンの額に切り傷が入っておりそれはアフライトの戦鎚によるものだった
「お前の若い脳より、俺の剛腕が勝っちまったか」
「しかしなんでお前は盗賊なんかやってるんだ?無詠唱が使えるなら学院でも相当な待遇を受けれるだろ」
「それにお前のその強さも並大抵なものじゃない、一体なにがお前をそこまで陥れた」
「うるさい!!!」
「私の事、何にも知らないくせに!!そうやってベラベラしてる奴が一番嫌いなのよ!!」
メイデンは額から出てくる血を操り手の平に球上の形にし、それを彼女と同じサイズの大槌へと形を変えた
「ぶっ潰してやる!」
メイデンは走り出し飛び跳ねアフライトの頭上から大槌を振り下ろした
ゴンッ!!!!!!!!!!
「ぬうっ!!!!」
アフライトの両腕から金属が軋む音がして歳のせいか骨がズキズキと痛み始めた
そしてメイデンは大槌から弓へ形を変え、戦鎚を蹴り距離を離しながら空中で矢を放つ
ザスッ!!!!!!
血の矢はアフライトの太ももや肩を刺し頬に傷を入れた
「おいおい、頬の傷、まさか外したのか?」
アフライトは頬の傷をトントンと指で叩きながら挑発する
「ええ、りんごみたいに貫いたつもりだったんだけどね!」
血の矢の形は崩れ液状となりメイデンの手元に戻った
「知ってる?血の魔法は毒を持ってるのよ」
「しまった……」
アフライトの体温は高くなり始めクラクラとバランスが保てなくなってくる
「時期に意識を失うでしょうね、それまでに私を殺せるかしら」
そこに到着した俺はメイデンの後ろを取って大剣を振り下ろした
風を切る音が聞こえメイデンは急いで血の盾を作り背後に迫る大剣から身を守った
「うっ!!!!」
俺は血の盾を破壊しメイデンは吹き飛ばされアフライトの目の前まで地面を転がった
「痛い…女の子になんてこと……」
アフライトはメイデンが油断している隙に首に腕を回して首を絞める
「がはっ……!!!!」
メイデンは声が出ず突然の事で混乱して頭も回らず魔術が使えない
次第にメイデンは足掻きをやめて力を失いぐったりと倒れた
「アフライト、まさか殺したんですか?」
「いや、気を失わせただけだ。死んじゃあいない」
アフライトはそう言うと腕を離し戦鎚を腰に下げてメイデンを背中に背負った
「所でその女性は?」
「メイデンって奴だ」
「それと所ではこっちのセリフだ、ミアは何処に行った」
「それが、その……」
俺は血塗れの大剣を背中に隠しアフライトから目を逸らす
アフライトに人殺しだって思われたくない
もし、俺が人を殺したせいで関係に亀裂が出来たら嫌だから
すると予想外にアフライトは俺に近づき肩を掴んだ
「こっちを向け」
俺は恐る恐るアフライトの方を見る
「ミアは無事なんだな」
「一様、遅れてここに来るって言ってました」
「その剣見せてみろ」
俺は渋々アフライトに大剣を渡した
「この剣、昔よくお前の親父が使ってた」
「父さんが?」
「ああ、だからよく覚えておけ」
「人を斬れば血と油が付く、すれば刃は脆くなり錆びやすくなるんだ」
アフライトは俺に布を渡した
「これで拭いてみろ」
俺は布を掴み取り刃に付いている汚れを拭き取った
もしかしてアフライトは俺が奴らに復讐するってことを知ってたんじゃないのか?
アフライトの目を見ると俺の心を悟った目をしている
「エディ」
「はい」
「お前が迷ってるならそれは間違いだ、俺は全くお前が進もうとしている道を責めたりしない」
「……わかりました」
「家に戻るぞ」
そうして俺はアフライトとメイデンと言われる女性と共に家に戻る事となった
着くや否やミアはソファーに座っており俺と少し話し暖炉の前にメイデンを寝かせ倉庫の死体やそのことについては何も言われずアフライトは淡々と掃除をしてリビングへ戻って来た
「目覚めたか?」
「まだ、本当に生きてる?」
「ああ」
「ねえアフライト、この人って……」
「俺達を襲った盗賊の頭だ」
「じゃあ追い出そうよ!何かあったじゃ……」
「その女性は深い傷を背負ってる」
「それに盗賊とか奇行に走った理由を知りたいからな」
「奇行?例えばなんです?」
「彼女は無詠唱魔術師だ。無詠唱を扱えるのであれば学院では高度な技術を教えてもらえるからな」
「学費も補償してもらえるし、周りから見れば憧れになれる存在さ」
「だが盗賊をしている。何か魔術師との間に何かあったんだろう」
アフライトはそう淡々と話す
魔術師
アフライトはそう言った
殺しも何もかも遊びで行う卑劣な生物
俺はアイツらを人間だとも思ってないし目の前にいるこの女に殺意が湧いて来た
あの魔術師だ
俺が恨んでいる魔術師だ
「魔術師めッ!!!!!」
気付けば俺は剣を握り締めてメイデンの首に剣を突き立てていた
俺は2回も敵意を向ける者を殺した
守る為だと言っても、もう殺しで怯むような男じゃない
「エディ!!!」
するとあの温厚なアフライトから予想も出来ない怒号が聞こえた
俺の体は固まって腕が動かない
「エディ!やめてよ!!」
ミアは俺の剣を奪って渾身の拳が俺の頬を殴る
「エディ!魔術師が嫌いなのは私も分かってる!でも全員がそうって決まってないでしょ!?」
「………そう、だよな」
それでも目の前にいるこの魔術師は……
いや、この人の仲間を殺してるんだ
俺もアフライトも
「ごめん」
「エディ!」
するとアフライトが明らかに怒っている足音を立てて俺に近づいた
「必要もなく命を奪うな!これじゃあ恨んでる魔術師と同じだ!!」
「………!」
「奴はもう戦えない、だから必要もなく命を………」
アフライトはいきなり瞼を閉じて倒れた
「アフライト!?」
「大丈夫!?アフライト!」
ミアがアフライトの体を揺さぶる
すると後ろから音が鳴り俺は振り向いた
そこにはメイデンと言われる女性が立っていて俺を獣のような目で睨む
俺はゾッとして目力だけで殺されるかと本気で思った
だがメイデンは巻かれている頭の包帯や自分が寝ている時の枕を見ると俺に目線を合わせるかのように屈む
「アフライト!アフライト!」
「そこの女の子」
「な、なに……?まさかあなたがやったの?」
「まあ、そうだけど……その男は無事さ、今は一時的に意識を失ってるだけ」
「メイデンさん、ですよね?どういうわけか話してくれませんか」
メイデンは髪を整え始め答える
「ああ、私はその男に血の魔法で攻撃した。血の魔法は毒を持っているからしばらくするとそうやって気を失うの」
「大丈夫、安心して、命に別状はない。あと5分もすれば目が覚めるわ」
「そ、そう、ならよかった」
「あの、メイデンさん」
「なに」
「あなたは優しい。なんでこんなことをしてるんですか?」
「ッ……!!!!」
やばい!なにかマズイ事でも言ったのか!
「………お金が欲しいからよ」
「経緯なんか何一つないわ」
「じゃあ私はこれで」
そうしてメイデンは立ち上がり玄関まで歩いて向かうがよろけて壁にぶつかった
「メイデンさん!」
「気安く呼ばないで」
「ご、ごめんなさい」
「……ちょっと怒っただけよ、名前はそのままでいい」
そうしてメイデンはミアの横に座りアフライトの状態を見る
「仕方ないわね」
「この者に安らぎを、ヒール」
メイデンの手の平から緑色の優しい光が出てしばらくするとアフライトの目が開いた
「女……」
「おじさん、こんな所で倒れてないでこの女の子を安心させてやりな」
「よかったアフライト、元気そうね!」
「それにありがとう、お姉さん」
「別に礼なんかいらないわ」
「本当に私はこれで……」
「待て」
「なに」
「その頭の傷じゃあふらつくだろ。しばらくここに泊めてやる」
「は?」
「解毒してくれたお礼だと思っててくれ」
「おじさんもしかして私のこといい奴だとか思ってる?」
「レディーファーストだ。ただし変な真似したらタダじゃおかねえがな」
「待ってください、アフライト正気ですか!?」
「言っただろ、必要な殺しはしない」
「で、でも」
「ふん」
そうして家にもう一人気まずいが増えた




