第78話野戦大合戦その2
ボレアスバレスは最前線にて遠い目の先にあるエレーミア神聖国を見ていた
「………」
風が当たりボレアスバレスの長いしなやかな金色の髪が風で横に流れ戦争前の静かさと風が吹く音だけが響いていた
「ボレアスバレス様、戦闘員全員出撃可能です」
「わかった、直ちに配置につけと言っておいてくれないか?ジェリラ」
ボレアスバレスの右腕である女性、ジェリラはボレアスバレスの指示に従い皆が待機している所へ向かって行った
そうして準備が整い全員が配置に着き陣形を整えると数万の敵が待ち構えているエレーミア神聖国へボレアスバレスは剣を引き抜き前へ突き立てた
瞬時に軍楽隊がトランペットやラッパを吹き開戦の合図を出し鐘や太鼓が鳴り響く
「断罪の鉄槍」
バストラーゼがそう呟き詠唱を完了させると後ろの方から爆音が鳴り響き相手からすれば数千の矢が降り注いできたように見えた
「結界を張れ!!」
穴埋めで入団した十騎士の男は軍に指示を出し兵士全員が上へ魔法結界を張った
だが矢の様子はおかしい、普通の矢と同様だと思っていた物が近づいて来るにつれて奥へそして広範囲に、大きな槍だったとわかったのは発射されてから2秒だった
「うそだろォォオオ!!!」
ズドォォォン!!!!!!!!!!
十騎士の男は降り注ぐ大きな槍に押し潰され結界を張っていた兵士達も次々に蹂躙されていく
そしてあまりの数のせいでエレーミア神聖国が誇る自動探知で破壊する撃墜装置でも反応出来ず降り注ぐ槍に破壊され神聖国を覆う結界も数百は防げたが残りの数千で破壊されて神聖国中に大きな槍が国の全土を覆い尽くしていた
「凄え有様だな、こりゃ」
チョコは流星群のように降り注ぐ大槍を王城の広いバルコニーから見て指先に魔力を集中させる
「やってみるか」
チョコが指先に溜めて放った魔力弾は別れ大槍に向かって突き進み一瞬で破壊して魔力弾は勢いを知らず大槍を貫いた
「これで終わり………」
チョコは放った魔力弾で神聖国全土を覆い尽くす大槍を破壊し尽くしたがまだ後ろの方に残っており最後の千程の大槍は神聖国の全てに破壊の限りを尽くしていた
「バカ猿の魔力が消えた、あの大槍に殺されたか」
「ライアード、お前が一番恐れてたバストラーゼ仕業だぜ……ほんとあそこでしっかり殺しておくべきだったな、てか凍らせたのに生きてんのがおかしいか」
玉座に座って余裕で外の景色を見ているライアードは肘をつき本当に退屈そうにしていた
「ライアードは行かねえのか?話聞いてんのかよ」
バルコニーの柵から身を乗り越しているチョコは後ろにいるただ座って敵を待っているだけのライアードに言った
「私はここで奴らを迎え撃つ、いくら数万の兵士が私の前に現れようがそれは黒蟻同然、雑魚なのだよ」
「それに奴らに私というとっておきの絶望を与えたいだろう?」
「アンタ……前々から思ってたが随分尖った性格してるよな」
そうしてバルコニーから飛び降り建物の屋根から屋根へと飛び移りながら王国壁外へと向かって行った
一方壁外の野戦ではエルドリア勢力が大いに優っており大槍の雨のせいなのかエレーミアの前線は壊滅的に陥っていた
「はあっ!!!!」
ボレアスバレスは最前線を突っ切っていて馬上だろうがなんだろうがどんな武器だろうがどんな魔法だろうが止められる者は戦場に誰1人いなかった
馬に乗って向かっていていてもボレアスバレスは剣を振るい武器を叩き落とすのと同時に手首を切り落とし敵の隙がある内に通り過ぎた背後から敵の首根っこを切る
1秒にも満たないこの動作で何千のも敵を葬ってきていた
そしてその男に立ち向かう男がいた
「お前!一番強い奴だろ!!」
男は身体強化魔法を使い馬から大きく飛び上がるとボレアスバレスの頭上から大斧を振り下ろした
ボレアスバレスは馬を扱い別の方向に移動し回避しようとするが間に合わず男が狙っていた馬の首を切り落とした
ボレアスバレスはコントロールを失い転倒しそうなるが飛び上がって地面に着地した
すると目の前には氷の塊が自分に向かって突き進んできておりボレアスバレスが剣で弾くとすかさず男が追撃を与えボレアスバレスは避け後ろに下がった
「2人か………」
「俺の名はジャガイ!貴様、名乗れ!」
「騎士長ボレアスバレス、エルドリア精鋭部隊のリーダーだ」
「ほほう!なんという肩書き……一体どれ程の強さなのか気になる所だ!」
ジャガイと名乗る男は顔全体を覆う兜にブリーフパンツ、そして赤に十騎士を象徴とする剣と翼がある紋章のマントを羽織っていた
そして魔法で作られた氷の塊で土埃が舞っている所に女性が現れる
「ボレアスバレス………懐かしい名前」
「貴様、タルタレーゼか、十騎士の穴埋め如きが私に勝てるとでも?」
「ヌ?知り合いなのか?」
「ええ、アイツは最悪の大悪党よ」
タルタレーゼの脳内にはボレアスバレスに捕らえられ懲役で刑務所を過ごしていた記憶が思い浮かんだ
そしてボレアスバレスも同様思い出し剣を構える
「ねえ、ボレアスバレス、ずっとあなたの戦いを見ていたんだけどさー………」
「魔法、使えなくなっちゃったの?それとも手札を見せないように使ってないだけ?そ、れ、と、も?亡国事件であなたの魔法が子供達を焼き殺しまくったあの日から?」
「ッ…………」
「なに!?子供を焼き殺しただと〜?許せない奴だ!全く」
「ほら、私援護じゃなきゃ戦えないんだからさ、さっさと戦って」
「はいよ!お嬢様!!」
ジャガイは風魔法を使い一気にボレアスバレスとの距離を詰めると大斧を地面を切り裂きながらボレアスバレスに向けて振り上げた
ボレアスバレスは少し顔を動かし一歩も歩かずに斬撃を避けカウンターとして剣を横に振るった
剣はジャガイの胸を切り裂き血が噴き出る
「は、速えーな………おったまげたぜ……」
するとジャガイの後ろにいたタルタレーゼは簡単で詠唱なしで出来る氷の塊を放ちジャガイの胸を貫き勢いを落とさないままボレアスバレスに向かう
ザンッ!!!!
氷の塊を一刀両断し二つになった氷の塊は水となると形を変え尖った氷の塊となり背後からボレアスバレスに突き進む
「無駄だ」
ボレアスバレスが剣を振るい氷を風圧で消し飛ばし左に来る攻撃を手で受け止め地面に落とした
「早く立ちなさいよ!ジャガイ!!」
「は?」
タルタレーゼがそう言うとジャガイは立ち上がり無詠唱で回復魔術を使い一瞬で風穴と切り傷を癒すと首の骨を鳴らし後ろにいるタルタレーゼに言う
「チッ、不意打ちしようと思ってたのによ、話しかけんじゃねえよ」
「あ、そうなのね、ごめんなさいねー」
「ならもう明かしちゃっていいんじゃない?」
明かす?一体なにを………
ボレアスバレスが困惑しているとジャガイが話を始めた
「俺達2人はボレアスバレス……お前特攻の特別な十騎士なんだよ」
「なに?」
「穴埋めでもなんでもねぇ、ただお前を殺す為だけに選ばれた。タフな俺と俺を援護するお嬢様」
「単純だが強いとは思わねえか?」
ジャガイは急速にスピードを上げるとボレアスバレスの間合いに一瞬で入りボレアスバレスが反応する前に大斧を振るいボレアスバレスを吹き飛ばした
「嬢!」
「わかってるっての!」
ボレアスバレスの背後に氷の壁を生み出しボレアスバレスはそこに激突するとジャガイと距離があまり離れていないせいで追撃が加えられ最硬度を誇る鎧を拳で砕かれてしまった
「いってぇな!!!」
ジャガイの拳がパックリ割れるとまた瞬時に治され隙ができているボレアスバレスに向けて大斧を横に振るい切り裂いた
「硬てぇ!!?」
身体強化魔法でボレアスバレスの肉体は鋼になっておりジャガイの大斧を通じてジャガイ全身に衝撃が走り大斧に亀裂が入り砕けてしまった
そしてボレアスバレスが屈み下から剣を振り上げジャガイの腕を切ると数十の小さな氷の塊がジャガイの体を貫通しながらボレアスバレスに襲い掛かる
ドスドスドスッ!!!!!!
剣で氷の塊を弾き叩き落とすが同時に襲い掛かる氷の塊に対処ができず脚や腹、肩にめり込み貫かれ激痛が走った
「くっ………!!!」
後ろに下がって距離を取ろうと足を動かした時だった
「俺!完全復活!!!」
ジャガイは拳を握り締め思いっきりボレアスバレスの顔に向けて拳を振るうとボレアスバレスは吹き飛ばされ転がって行った
「感覚アリ!!」
ジャガイは倒れて頭から血を流しているボレアスバレスに近づき腹に蹴りを入れ宙に浮かせると足を掴み勢いよく地面に叩きつけた
「しっかり仕留めなくちゃな、お嬢様、凍らせてくれないか」
「時間掛かるけどいいの?その間に起きたら私なにもできないわよ?」
「もうこんな傷を負っているんだ、動いたとしても俺に勝てるわけがない」
地面に倒れているボレアスバレスにタルタレーゼは氷の魔法を使いカチカチに冷凍し始めた
一方、ボレアスバレスは走馬灯を見ている感覚に陥っていた




