第75話修行
「ぐはっ!!!」
円状の室内で特訓をしている魔道具の鎧を身に纏ったカストルフォスは剣も扱えるようになろうとバストラーゼに剣術を教えてもらっておりバストラーゼの槍の一撃でカストルフォスの鎧にヒビが入り鎧は自我を持ってまるで危険だと察知したのかカストルフォスから分離してシールドとなった
「もー!すぐこうなるじゃん!」
「フォスちゃんのその鎧、特殊な魔道具だから不思議ね」
「この鎧、まるで人間みたいなんだよねー、私が戦闘続行したいのにいつもこうやってやばくなるとシールド張るの」
「そりゃ困ったもんだね……というか、ヒビ入っちゃったけどいいのか?」
「全然平気だよ、勝手に治るもん」
数十秒するとシールドとなっていた鎧は剥がれ落ち各部位の鎧となって地面に転げ落ちた
「そういえばメイデン?さんだっけ、あの人達も修行してるの?」
「ああ、もう一つの訓練場を使ってね、確かメイデンとジミーとリュークとボレアスバレスが訓練に参加してるはず」
カストルフォスは鎧をネックレスに変え首にかけるとバストラーゼと休憩がてら座りながら世間話をする事にした
「ねえ、メイデンさんってあの珍しい血の魔術使うんでしょ?あとで話聞きたいなー」
「やめときなー、ああ見えて結構面倒臭そうだぞ?」
「話してみなきゃわかんないでしょ?それにボレアスバレスとリュウ爺が稽古つけてくれるだなんてラッキーだね、その2人」
バストラーゼは閃いたのか立ち上がりカストルフォスに手を差し伸べる
「その2人の稽古、見に行こうか?」
「いいね!」
カストルフォスが手を取るとバストラーゼは引っ張りこの部屋から抜けて外の訓練場へと栄養補給の飲み物を片手に歩き出した
「バストラーゼ、ジミーって人はどんな感じなの?」
「有名な暗殺者なんだって、魔道具を駆使して戦うらしいんだけど今回は道具を除いて戦ってるよ」
「魔力がないんでしょ?どうやってボレアスバレスとリュウ爺を相手にしてるんだろ……」
「意外にメイデンさん頼りだったりして!」
「確かに、あるかもね」
バストラーゼは笑いカストルフォスもキャッキャとはしゃぎ2人の戦いを想像しながら王城から出た
「私さ、アストレアちゃんとバーニスちゃん気になってるんだよね」
「あー、アンタと気が合いそうだもんね、歳同じっぽいし」
「2人は?誰と特訓?」
「トマソンと、最小限で最大限の魔法を放つように修行してるんだってさ」
カストルフォスの頭の中に最後の精鋭が思い浮かぶ
会議には参加せず戦いにだけ顔を出しいつの間にか姿を消している戦魔の男
「………あの人、来てるの?」
「あのサボり魔ね、イミシェルって人と一緒に稽古だってさ」
「あれ?なんか数足りなくない?もう1人いたような………」
「ミアでしょ?あの子は明日からフォスちゃんと一緒に参加する予定だよ」
「そうなの!?挨拶しとけばよかったー、でもどうして明日?」
「それがね……ミアはエディと、なんというか、恋仲?わかんないけど複雑なんだって」
「私、ミアと初めて会った時、私と同じ境遇だなって感じて話して仲良くなったんだ。それで相談してくれたんだけどエディがかなり酷い事を言って、それから引き篭もりがちなんだって」
「エディ……恋仲……酷い事……」
「そう、まさかあのしっかり者?まあちゃんとしてる奴が女の子に酷い事言うだなんてねー」
「う、うん」
バストラーゼはカストルフォスの右の向こうを見て指を差した
「ほら、あれがメイデンとジミー」
「え!どれどれ!?」
カストルフォスは腰ぐらいのフェンスから身を乗り出し草一本も生えていない地面で2人に対して1人立っている者がいた
「あれって……」
ジミーは息を荒くして2人を見つめておりリュウ爺は体力の限界で動けそうになくボレアスバレスも体力が限界に近づいていた
「ジミー……じゃったか?思ったより強いんじゃな」
「ジジイに負ける程弱きゃねえよ」
ジミーは変形自在の魔道具であろう短剣をしまい倒れているメイデンに手を差し伸べた
「ほら立てよ、弱虫」
「だまれ………!」
メイデンはジミーの手を受け取り立ち上がった
カストルフォスはフェンスを乗り越え4人が汗を拭いたりメイデンの魔法で全員の傷を癒やしたりしている所に走ってやって来た
「リュウ爺!戦ってどうだった?」
カストルフォスがリュウ爺の元へやって来るとメイデンやジミーは戸惑いボレアスバレスもまたかとため息を吐いた
「両方とも大した事ない、俺にかかれば弱いもんじゃよ。まあそうは言ってもカストルフォスは挑むんじゃないぞ?」
「えー?手合わせしてみたいなー」
ボレアスバレスはリュークの右肩から手の甲まで短剣で切り裂かれたような傷をカストルフォスの目に映らないように自然に体勢を変えている姿を見てその傷をつけたジミーを見つめる
この男、先程一体何をした……?
メイデンとジミーが同時にリュークを襲う時、リュークが刀を使いメイデンの血で使った剣を弾き体勢を崩しボレアスバレスがそこへ助太刀に入ってメイデンの腹を斬りつけようとした瞬間、リュークはジミーの剣に深い傷をつけられていた
「カストルフォス、私はリュークと少し話がしたいから少しいいかい?」
「リュウ爺と話したいから早く戻って来てね?」
「善処するよ」
そしてボレアスバレスはリュークを連れて少し離れた座れる場所にやって来た
「なんじゃ、俺の心配ならするな」
「違う、あのジミーとやらの力だ」
「あれは偶然じゃ、俺が力量を見間違えたせいで起きた……」
「あなたが?そんなはずはない」
ボレアスバレスはリュークの傷を慣れない回復魔法で治しながらジミーを見る
「あいつ……エディより強くないか?」
「フンッ、それだと俺はエディより弱いと?あんな暗殺者如き、まぐれに決まっとるわ」
あのジミーとやら、もし本当にまぐれだとしたら……どうやって魔力で身体を強化し、並大抵の力では傷もつけれない騎士クラスを凌駕するあの身体に、こんな深傷を負わせられるのだ?
一体、何者なんだ
「私は無詠唱魔術を扱えて、魔力を大幅に消費するけど自分の血だけじゃなく敵の傷から流れる血も操れるの」
「へー!他には!?」
「自分の血を武器に変えたり……敵に向けて拘束できたり?回復もできるぐらい」
「すっごーい!!」
「カストルフォス……だっけか?血の魔法ってのは初めて見るだろ」
「うん!天性の才能ってやつだよねー!いいなー」
向こうでカストルフォスが楽しそうに喋っている
本当に楽しそうでなによりだ、仲間の調和は私が一番願っているからな
だから早くリュークとエディの仲も良くなってほしいものだ
ボレアスバレスはリュークを見て思う
リューク、この人は血の魔法使い見た事あるのか
ボレアスバレスは騎士として、国を代表する最強として何年も生き続けて来たが血の魔法使いは今日で生まれて初めて見た
そんなボレアスバレスはふと、メイデンの攻撃を弾いたり対策に慣れているリュークを不思議に思った
「リューク」
「なんじゃ」
「メイデンとの戦いにかなり慣れていたみたいだったが、血の魔法使いと戦った事が?」
「………俺の戦いを見てるくらいならしっかり奴らと戦っとけ」
「あ、ああ」
リュークはベンチから立ち上がると服についた土埃を叩き落としカストルフォスやメイデン達がいる所へ向かって行った
「あの術は500年前、古き友が使っていた術だ。よく手合わせをしていたから覚えておる」
「古き友……」
ボレアスバレスから見た立ち去って行くリュークの立ち姿は威厳やなにもかも捨ててただ寂しげな後ろ姿だけが映った




