第73話光る太陽
「ふはぁ〜」
朝早くから残業させられている運転手は寒い風を浴びながらあくびをしていた
ブチッ!
「あっ……」
荷馬車の車輪で道にいるカエルを轢き殺しガタンと荷馬車が少し揺れ運転手は鼻をほじる
「こんな雑貨屋で売ってそうなもん運ばせるんじゃねえよ……全く、朝早くから……お前も大変だな」
運転手は馬を見ながら馬に向かって鼻くそを投げ飛ばしまた鼻をほじる
俺は覆われている布から出てゆっくりと立ち上がり同時にアストレアも荷馬車の隅っこから出て来た
そして運転手の側にある酒瓶を手にし割ると一瞬で運転手の首元に当てた
「今すぐ止めろ」
「うわっ!!!!」
運転手は驚き声を出すがアストレアの魔女の力によって体を硬直させられアストレアの操り人形となり手綱を引っ張り荷馬車は
道の端で止まった
「お前、いつの間にそんな力身につけてたんだ?」
「魔力が少ない相手なら出来る技よ、2年間必死に頑張ってたからね」
俺は割れた瓶を投げ捨て荷馬車から降りる
あそこからかなり離れたな
人気が少ない森の中、空を見上げ見えるのは神聖国と自由を手にして初めて見た光、太陽だった
眩しい光が俺の目を焼き満足できずに俺はすぐ太陽から目を逸らす
「それでいつになったらその姿から元の姿に変わるんだよ」
「これは仮の姿みたいなものだから、私の体の中に入らないと。丁度ここから数百メートル移動したら私達の隠れ家に着くから着いて来て」
アストレアがもし助けに来てくれなかったら俺は……自ら死んでいたかもしれない
待て、なぜコイツらは俺がピンチな時にいつも来るんだ
あの時、アフライトの時もそうだった、俺の"魔術師殺し"を止めるついでに俺を助けに来た
「………まだ俺を止めようとしてんのか」
「ええ、当たり前でしょ、だから着いて来て」
コイツら正気かよ
「俺を止めちまったらこの世界は終わるぞ、貴族や十騎士だけが支配するクソみたいな世界にな」
「人を殺すのをやめてほしいのよ」
「殺すしかアイツらを止める方法はない」
「もう人が死ぬのは……!」
アストレアはイラつき怒りを露わにした
「アストレア、俺側につけ」
「は!?」
「ジェイク側について何がある、俺の殺しを止めちまったら俺達は終わる。逆に俺につけば名声、威厳、なにもかも全てが手に入る」
「魔女のお前なら尚更だ、魔女達は狩られなくなりあんなクソ狭い自分だけの世界に引き篭もることもなくなる」
「お前の母親が死んだ理由はなんだ?魔女差別から生まれた魔術師達のせいだろ、俺の母の様に犯され、好き放題され終わりには殺される」
「昔、ジェイクとメイデンの仲間を殺したんだってな………魔女である皆んなを守る為だろ」
「ッ………!!」
「もう"二度と"母の死骸の下で生まれ落ち、魔女である自分を責める事をしたくないのなら俺につけ」
「で、でも……」
「ジェイクと共にしてから何を得た?魔女差別はなくなったか?なくなってないだろ」
「もし、仮にだ、俺が勝ってもお前がまだ差別されるのであれば……俺の発言、行動で全てを変える」
「そんなの不可能よ!500年前から魔女差別の意識は………!!」
「魔術師達が間違っていると、この全世界に思い知らせたのは誰だ!!この俺だ!」
「だから聞けよ、俺につけよ、俺の右にいるだけでいい……全てが手に入る」
「まだ俺が死ぬ未来を見てるんだろ、俺が死ぬならお前の野望は消え二度と叶う事はなくなる」
「俺はあの牢屋で死のうとも考えてた、お前が一歩遅かったらそうしてた、この未来を作ったのはお前だ、アフライトの時も俺をああせず魔術で殺せばよかった」
「放っておけばいいものを、お前は無意識に俺を救いこの未来の道まで切り拓いた。闇魔術師のバーニスを憎んでたんだろ、まだ野望は途絶えてないはずだ」
「………私が魔女差別をなくしたいのは本当、でも……ねえ、私があなたにつけば本当になくなるの?」
「ああ」
「わかった、でも隠れ家には来て」
俺は頷きアストレアの案内でその隠れ家とやらに向かう事となった
エディ……何処にいるんだろう……
飲食店にいるカストルフォスは魔力を使ってエディから流れ出ているはずの魔力を検知しようと椅子に座って目を瞑っていた
いつもならここにいるはずなんだけどな……
まさか、本当にあの人達が助けたの?それか……いや、もし死んじゃったら急に魔力が途絶えるはず
この感じは……
「エディの居場所、カストルフォスも分からないのかい?」
相席していたトマソンは不思議そうにカストルフォスを見つめる
「エディの魔力が墨汁を水に垂らして薄い黒みたいに薄くなってる、言いたい事わかる?」
「ああ、それにその表現で言うと彼は上手くその場から離れたか、もしくは微弱な魔力だから上手く見つけられないか……」
「そうなのかな、死んじゃったとかないよね?」
「2年間も生かしておいて今更殺しはしないだろう」
もしかして、前出会ったあの人達が助けてくれたのかな……?
カストルフォスが悩んでいると後ろからある1人の男が来た
「やあ、2人とも」
そこに幻術を扱うブルセンバルグが入りトマソンの隣に座った
「ブルセン、どうして私達の場所が?」
「たまたま見つけてね、この店に入ったまでだよ」
「ブルセン、急にエディの微弱な魔力が検知できなくなったの、あそこから逃げたのかな?」
「エディが逃げた?あの神聖国の監獄からかい?」
「多分ね」
「そこからエディの居場所がわからないと………私の友達に魔力探知が得意な人がいるんだ、彼に連絡して聞いてみようか?」
「えっと、その人って……」
「フリッツか?もう動ける状態に?」
「ああ、私の治癒魔法と医療チームが頑張ってね」
「へえ、あんなに火傷していたのに、連絡できるならしてくれるか?」
「いいとも」
ブルセンバルグは魔法の手鏡を開いて自分の顔を写す
しばらくしても手鏡にはフリッツの顔は写らずブルセンバルグは顔を傾げて手鏡をポケットへ直した
「どうやらお忙しいようだ……」
「それは残念だ」
無事だといいな………
そうカストルフォスは考えながら手元に置かれているイチゴミルクを飲んだ
場面は切り替わり森の奥地、一つの綺麗に整備されている館があった
そして皆が集まるリビングにてジェイクは膝を着いていた
「お前ら!一体自分達が何してんのか分かってんのか!」
俺側についたのはジェイク以外のメイデン達
「私は……もうエディと離れたくない」
ミアは俺の腕にしがみつきながら言いミアが俺側につく理由がしっかりとわかる
メイデンはかつての魔術師にされたいじめを言ってなくそうと説得しイミシェルはミアを守る為、ジミーは今回のバーサラックが生み出した俺の分身の件で完全に俺側の考えになったらしい
バーニスは薄々俺側につこうと考えていたんだとか
ところがジェイクの考えは変わらず奴が暴れる所をバーニスが闇魔術で拘束しジェイクは身動きが取れなくなっていた
「そいつは人殺しだ!俺達が集まった理由はそのバケモンを止める為だろ!なんでそいつ側についてんだよ、皆んな!!」
「俺は全世界の人々の為に十騎士を殺す、バケモノ呼ばわりするなら好きにしろ」
「全世界の人達の為とか関係なく人間を殺す事自体が……!!」
「ジェイクも早く気付いてよ!!」
ミアがジェイクの顔を叩き言った
「私達がずっとエディの足を引っ張って来た……バケストラ王国も桜道も、崩壊したのは協力しなかった私達のせい!」
「私達が元からエディと一緒に戦ってたらこうはならなかったのよ!」
「だからジェイク……!」
「うるせぇ!!俺は、俺はエディ、お前を……!!!」
「お前は小さい星だ、そして俺は皆を照らす太陽」
「………は?」
「お前は俺の陰でひっそりといればいい、だから邪魔すんな」
そうして俺は外、エルドリアへ戻る為に歩き出し皆は後ろから着いて行った
「待てよ!皆んな!よく考えろ!俺達、俺達ずっと同じだっただろ!」
「アストレアはなんでエディに着いて行くんだよ!!」
「同志を守る為よ、別に人殺しをしたいとかじゃない。ただ、同志を守りたいだけ」
俺は足を止めて後ろにいるジェイクに振り向いた
「ジェイク」
「なんだよ!さっさと行けよ!」
「皆んな俺の為にいるんじゃない、俺を利用して目的を果たそうとしてる。だからありがとうジェイク、こいつらを態々集めてくれてありがとな」
「おかげで手間が省けた」
「この………」
「このクソエディ!!!!」
ジェイクは唇を噛み締め血が流れる
そんな男に俺は背を向け去って行った




