第72話受けた傷
「うがぁぁああ!!!!!!」
麻酔なしで腹を鋭いナイフで切り裂かれ内臓を取られ、回復魔法で再生、次はその内臓を突き刺しどう痛みを感じるかを研究
失った血は回復魔法で元の状態に戻る為、死にはせず、自分の鋼の精神が裏目に出て気を失う事も出来ずもし気を失ったとしてもすぐ水魔法で起こされる
しかし、回復魔法は傷を癒すだけ、痛みは引かず痛みで眠れず3日程痛みで起きている日が続く事もあった
「エディ、迎えに来たよ」
そうアストレアの懐かしい声を聞いて俺は安堵した
「てか、どうやって俺の場所知ったんだよ」
「エディから微弱な魔力を感じるの、それを辿って来た」
微弱な魔力?まさかだとは思うが……
俺の脳内には1ヶ月に一度に行われる巨大で先端が尖った魔石で胸を貫かれ強制的に魔力を流されるあの屈辱的な実験を思い出した
「なにか心当たりはない?」
「………ねえよ、お前もその姿なんだよ」
「色々工夫すればこうなるのよ、ほら、私が出口案内するから着いて来て」
「そ、そんなこと言われてもな……」
俺を閉じ込めているこの空間には入り口も出口もない、魔法を使って開けるらしいがそれを除けばただ空気を入れ替え太陽や月の光が入るだけの隙間しかないただの拷問部屋
「この部屋、魔法で作ってるのね、じゃあ……」
アストレアは魔法で作られた部屋の床に手を置いて目を瞑り集中し始めた
すると数秒で銀行の金庫の扉が開くように何もない場所から扉が現れ開かれた
「ど、どうやった?」
「上書きよ、わかりやすく言えば書いた文字より濃い文字で同じように上書きしただけ」
「つまり、私の魔力による支配によってこの部屋の主導権は私になったって事」
「こういう類の魔術はこうやって完封出来るのよ」
そうしてアストレアが先に少し開かれている扉の隙間から外に出るとアストレアは廊下を見渡し警備がいないか確認する
「やっぱり、ここから出れないって確信してるから誰も警備付けてない」
「ラッキーだな」
「ええ」
俺が扉を開き廊下に出る
ここは………
実験が終わりここに連れて来られる時にうろ覚えだが知ってる
アストレアを先頭に廊下を歩いていると別れた箇所が出て来た
「うわっ、どうしよ………私が右行くからエディはここで……」
「左の通路だ。右に行けばアイツらの"研究材料"がある」
「左?わかった」
アストレアは恐る恐る左へ向かうと1人も警備に見つからず下へと続く階段を見つけた
全く…ここもあんまし変わってねえな
デットがそう言い目の前に現れた
「この階段にある鉄格子の窓がある、直されてるかもしんねえが取れやすくなってるぜ、俺の昔の仲間がそれで逃げた」
ありがとう、デット
「俺も生きてここから出なきゃいけねえしな、お前の為じゃねえよ」
デットはいなくなりアストレアは宙に浮かびながらこの一方通行で見つかれば逃げ場もないこの階段を見ていた
「エディ、ここは避けましょ、逃げ道がなさすぎるわ」
「いや、平気だろ」
「え?」
俺はアストレアの前を通り階段を降りて行った
「ちょ、エディ!」
デットが言っていた通りこの鉄格子は少し緩い、一様修復はしたんだろうが劣化したのだろう
ぐっと弱っている自分でも外せるくらい壁は脆く鉄格子を引っ張るとバリバリと剥がれてぶち抜くと俺1人は入るくらいの大穴が空いた
「早く行かねえと、こんなん見つかっちまったらやべえ」
アストレアを先に行かせ俺はアストレアに手を引っ張られながら大穴をギリギリで潜り抜け王城の屋根に辿り着いた
「エディ、外に出れたのはいいけどさ、どうやってここから降りる?私は空飛べるけどさ………聞いてる?」
「外だ」
「ずっとずっと、あの小さな鉄格子越しからしか見えないあの景色を、俺はこんなにも見てるんだ」
そっか、エディはこの景色を見るのに1年……2年かかってるもんね
「………まだ脱出したわけじゃないよ、ここ、エレーミアから出なきゃ」
「ああ」
そうして俺は脱出する為に辺りを見渡した
「降りる場所なくね?」
「そうね」
「どうすんだよ、また戻るか?ってかお前がここに来るまでの道に行こうぜ、そしたら外出れるだろ」
「アホか、飛んで来たんだよ。それと私が今からこの壊した窓を直して証拠隠滅したら通路を確認して出口を見つけるから、大人しく待ってて」
「わかった、捕まんなよ、頼りにしてるぜ」
「任せなさい!」
そうしてアストレアは鉄格子の窓を直し俺はこの屋根で待つ事にした
満喫できなかった夜空を見てるだけで時間が過ぎていきバレないかヒヤヒヤしながらもアストレアは帰って来た
「お帰り、着いて来て」
二度手間だったがまた鉄格子を壊して直し証拠隠滅するとアストレアが案内する道へ向かう事になった
俺は信じて着いて行くが確かに警備は誰1人来ない
しばらくして俺とは違う別の牢屋には警備はいるにはいるが隠れるだけでサクサクと進め辿り着いたのは書庫室だった
「どうしてここに?」
小声でアストレアに聞くとアストレアは窓を指差した
「あそこから出ると荷馬車があるの、そこに身を潜めてエレーミアから出れるの」
「わかった」
「それともう一つ気を付けてほしいのが……」
「子供が、こんな時間になにしてるんだ?」
本棚から顔を出したのは明かりを持ったこの書庫室の管理人だった
俺達はギリギリで身を潜め隠れることができ管理人が頭を掻いて辺りをキョロキョロと見渡しキョトンとした顔をしながら帰って行った
「バレてないよな……?」
「うん……」
アストレアはフワフワと浮かびながら飛んで行き荷馬車に飛び移れる窓まで辿り着くと何を閃いたのか管理人が座っている後ろの花瓶を蹴り飛ばし花瓶を落とした
バリンッ!!
「うわぁあ!!!」
管理人は余程ビビりなのか叫びながら書庫を走って外の廊下へ出て行った
「早く……!エディ……!」
「あ、ああ……!」
管理人の叫びに驚いている所をアストレアに呼ばれて俺は立ち上がり窓に駆け寄った
「おいおい、どうしたんだよ」
そう廊下から聞こえた
2年経った今でもわかる、こいつは………
肩程長い髪に不貞腐れている態度
十騎士の1人だ
「ゆ、ゆ、ゆ、幽霊!!!幽霊!!!」
「は?まあいいや、見てやるから後ろいとけ」
「は、ぁい………」
十騎士の男は書庫室に入り俺は一刻も早く窓から飛び降りようと開けようとした
「アストレア、隠れろ」
「なに?開かないの……!?」
「ああ、だから言ってんだよ」
アストレアはすぐ側の棚の本の隙間に隠れアイツがこっちに来る前に俺は管理人が使っている机の下に隠れた
テクテク歩く音が聞こえ見渡したのか十騎士の男は溜め息を吐いた
「異常はねえよ、書庫に用事あるから戸締りは俺がする、鍵寄越せ、お前は帰っていいよ」
「はい!わかりました!」
管理人は帰って行きこの場には俺とアストレア、そして力がわからない十騎士の男だった
「………もう誰もいねえから、出てこい」
そう言われて出る奴がいるかよ……
すると十騎士の男は溜め息をまた吐きあくびをしながら飛び移ろうとしていた窓に腰掛けた
「俺の名前はチョコ、無詠唱魔術師であり扱う魔法は重力そして高密度の魔力の塊を放つ」
「エディ……だっけか、よく助けに来る仲間がいるもんだ、羨ましいぜ」
チョコは鍵のかかった窓を管理人から取った鍵で開きガラガラと開けた
窓からは外の匂いが入り涼しい風が俺の肌を潤す
「よくバレずにここまで来れたもんだ、そこにいるちっこい奴のおかげみたいだな」
「………本当にいるよな?いないんだったら気晴らしにその机、俺の魔法で木っ端微塵にしてもいいって事だよな?」
「俺は敵じゃない」
チョコは自信なさげにいい俺は内心疑いながらも俺は机の下から出た
「チッ」
俺はアストレアの方を見てアストレアは躊躇しながらも頷きゆっくりと窓から外へと逃げようとしていた
「殺さねえよ、その妖精みたいな奴とさっさと逃げろ」
「は?何言ってんだお前?」
「戦いたくねえんだよ、面倒くせえし死ぬのは嫌だしよ」
「だからさっさと逃げろ」
「………俺を、逃すって言うのかよ」
「ああ」
俺はチョコの方を見ながらゆっくりと窓へ近づきチョコは俺が近づく度に後ろに下がって窓への道を開けてくれた
そしてアストレアは外に出て荷馬車に移り俺も窓から飛び降りようとした時だった
「ライアードは氷の魔法は使わねえ」
「アイツは魔術師でも十騎士でもない……奴はただの化け物だ」
「知ってるよ」
俺は窓から飛び移り荷馬車に飛び移った
荷馬車には布が被せられていて荷物も多い、この中に隠れれば見つかることもないだろう
そして俺とアストレアは荷馬車に隠れ数時間後荷馬車は動き出し運転手を襲う機会を伺っていた




