第23話炎と氷
俺達は図書室から出て廊下を渡る
あいつらのあの発言、俺の心は既にぐちゃぐちゃになりかけていた
魔力を持たない種族
そう聞くだけで腹が立ちあの日の事を思い出す
絶対に殺してやる
自分があの日されたように、あいつらの幸せをぶっ壊してやる
「おい、エディ」
ジミーは俺の肩を触り小さく話しかけた
「なんだよ……!」
「落ち着け」
ジミーはそう言って腰に携えているもう一本の短剣を俺に渡した
「ここは狭い、もし大剣が使えなくなったらこれを使え」
「助かるよ」
俺達は寝室に到着し中からはガチャガチャと音がしている
「アイツら気づいてないよな」
「ああ」
そうしてジミーは寝室の扉に手をかけ俺の方を見て頷き俺は頷き返した
ズドォォォン!!!!!!!!!
扉を開けた瞬間突如爆発が起き俺はギリギリで別の部屋に飛び移って火傷は免れた
間一髪だったな……待て?じ、ジミーはどうなった!!?
後ろを振り向くがそこにはジミーはいない
「クソッ!!!やっぱり気付いてるじゃねえか!!」
そして俺は周りを見渡す
「おいジミー!返事をしろ!!」
俺はパニックになる
一人で戦った事もないしなんなら安心できる一人がおらずそれに加えて返事をしないからだ
そうして俺は大剣を引き抜き構える
何処から来るのか、まるで怯える狼のように周囲を警戒した
「坊や、どうしたの?」
そう後ろから声が聞こえ俺は背後に向かって剣を振るう
ガキンッ!!!!!!
そこにあるのは氷の分厚い壁だった
「引っかかったな」
次は俺の後ろから男の声が聞こえる
「原初の炎よ、全てを塵と化せ!!」
「ヘルファイアー!!!!!」
俺に向かって突き出す手の平から青い炎が放出され俺は炎に包まれる
あ、熱い!!!!!!!
「あぁぁぁあああ!!!!!!!」
「焼き殺してやるよ!!!」
痛い痛い痛い!!!!!!!
目が焼けないように目を必死に瞑っていても分かる
全身の皮膚が焼けて一部の皮膚が剥がれて露出しかけている
でも剣を握っている感覚はある
「オラッ!!!!!!」
俺は大剣を上に持ち上げ天井を切り裂きながら思いっきり男に向かって大剣を振り下ろした
「な、なんで動け………!!!」
男は後ろに下がって避けようとするが大剣は男の腕をパックリと引き裂き花が開くように割れた
「うがぁぁぁああ!!!!!!」
当たったのか!!?
すると女が背後から来るのが聞こえた
「あなた!!今助けてあげる!!!」
「い、凍てつく大地の如く、敵を凍らせ、砕けろ!!!」
「アイスクラッシュ!!!!」
女は両手を合わせて手の間から氷の魔法を放った
俺は目を開けて放たれる魔法を避けるが俺の左腕を擦り致命傷は免れた
だがしかし威力は凄まじく指一本が全然動かせなくなるまで左全体が冷え切った
「氷よ!敵を砕け!!」
「アイス………!!!」
俺は両手無しだとまともに扱えない大剣を捨ててジミーに貰った短剣を右手で掴み女に襲い掛かった
「こ、来ないでぇぇえ!!!!」
ザグッ!!!!!!
俺は女の横腹に目掛けて突き刺し女は後ろの壁に寄り掛かる
「はあぁぁあ!!!!!」
俺は無我夢中で女のヘソに向かって短剣を突き刺した
「はがっ!!!こ、降参よ……!!!お願い、坊や!やめて!!!」
俺は短剣を抜き女の胸に向かって何度も刺し続けた
口の中に入る返り血を吐き捨てながら息を荒げて俺は刺し続ける
そして女は荒げた声を出して横に倒れ逃げようと這いずる
「お前が悪いんだ!!お前が俺を殺そうとしたから!!!」
俺は自分を正当化して相手が魔術師というせいで理性が切れていた
歯を強く噛み締め倒れている女性の背中から短剣を突き刺し女の首へ短剣を突き立て狙いを定めてから振り下ろす
血が顔に飛び掛かり短剣を首に突き刺した
まま俺は腕を抑えて倒れている男に向かう
「お、おい坊主、こ、こ、降参だ」
「あ、あれだろ?俺の妻からの暗殺依頼だろ、今までに数回あったからな、まあ家まで入られたのは今回だけだからそこは感心する、だから殺さないでくれ」
「魔力を持たない俺を、人間だって思ってないくせに!こういう時だけ!!!」
俺は落とした大剣を右手で掴み持ち上げる
「こういう時だけ!!!!」
「い、今のお前は、に、人間には見えない!!!」
「悪魔だ!!悪魔だ!!!!」
横にある鏡を見る
そこには全身赤く火傷だらけで血塗れの男が立っていた
そして俺は全身を使って大剣を肩に担ぐ
「ば、化け物め、来るんじゃない!!!」
「や、やめ……!!!!!」
俺は大剣を振り下ろし大剣は男の肩を貫いた
やはり片手のせいもあってか物凄く傷は浅い
「か、神の癒しよ、我が傷を元に戻してくだされ、ああ、天の神よ、この痛々しい傷をどうか………」
「お、オーバーヒール」
男がそう唱え終わると全身が緑色の優しい光で包まれる
「ああああ!!!!!!」
俺は叫び噛み付くように男に飛び掛かった
馬乗りになり俺は男の顔に向かって右拳を振り下ろす
「ふぐっ!!!ま、待て!!私を殺せば、貴様は………」
右拳を何度も振り下ろし殴り続けるあまり拳の皮が擦り剥け血だらけになる
拳が使えないなら頭を使う
「はあっ!!!!!」
何度も何度も男に向かって頭突きをして自分の額が徐々に傷付く
「もう!!二度と!!!家族に手を出すな!!!二度と!!!!」
俺は疲れ果てぐちゃぐちゃになった男の顔に向かって頭を突っ込む
そうしてゆっくり呼吸をする
あの異常に昂った怒りの感情
俺は肉片が付いた顔を上げてよろけながら鏡が掛かっている壁に寄り掛かり鏡で自分の顔を見る
「し、仕方なかったんだ、俺はアイツらに家族を殺されたんだ」
俺は二人の亡骸を見る
女は首を抑えて絶命しており男は顔がぐちゃぐちゃで性別が判断出来ない
それにしても全身が痛い、風を浴びる度に激痛がして加えて血生臭くて頭痛がしてくる
「アイツらのあの発言、俺は聞いてただろ?コイツらは人間じゃない、怪物だ」
「だから、俺がやった事は絶対に間違ってない」
「"正義の殺しだ"」
鏡にいる自分に問い掛け頭のおかしい行動を取り続ける
すると後ろから肩を掴まれ思いっきり壁に叩きつけられた
「エディ!!!!」
そこにはジェイクの時より怒りに満ちている全身血だらけのジミーがいた
「じ、ジミー!無事だったのか!」
「テメェなにやってんだ!!!夫の方も殺しやがって!!!」
「そうだよ!!殺されかけたから殺したんだ!!!!」
動きかけている左拳を握り思いっきりジミーの顔を殴り飛ばした
ジミーは後ろに下がり口の中が切れたのか血を吐き出す
「ジミーが言いたいのはこの女は本当は殺しちゃダメだけど危機的状況になればやむを得ず殺してもいいって事だろ!!?」
「………ああ、それとお前には殺す勢いでやってくれなきゃ死んでしまうからな、誇張して言っただけさ」
「てかまず、お前は俺に感謝したらどうだ!?この二人を殺したおかげで俺も死んでないし、瀕死のアンタも助かった!!そうだろ!!」
「それでも!それでも文句があるならお前を殺してやる!!!」
「エディ、確かにお前のおかげで俺は助かった、だがなんとかしてこの部屋から出て逃げ隠れ出来ただろう」
「それに夫を殺さなくてもよかったはずだ、降参していただろ」
「ああ、していたさ、でもコイツは命乞いをする色んな人間を殺して来たんだ」
「自業自得だ」
「………今のお前、かなり自己中だぞ」
「そうだよな、夫を殺しちゃったから依頼は未達成、命より大切な事かよ」
「もういい、こんだけ苦痛を与えたのなら妻の方も許してくれるだろう」
「それでも今回の事は絶対に許さない。この過ちを成功に変えろ、エディ」
そうしてジミーは手を伸ばし握手をしようとしてきた
ムカつく奴だな、馴れ馴れしい
……でも、冷静になれば俺の方が確実に悪いよな
夫を生かすのも出来なかったし、迷惑かけちゃったな
そうして俺は腕を伸ばす
「冷静になれば確かに別の道があったかもしれないな」
俺はジミーの握手を受け取りしっかり握る
「俺こそ、お前に付き添ってやれなかったからな、6割お前を見れなかった俺の責任だ」
「ほら、急いで帰るぞ、騒ぎを聞きつけて兵隊がやってくる」
ジミーは部屋の外に出始めようと後退りし始めた
「や、やば、なんか………」
俺は疲れ切ったのか傷が深過ぎたのかその場で倒れてしまい意識が遠のき目の前が真っ暗になっていく
気付けばアストレアの膝の上だった
「……一瞬で移動したのか?俺」
「ふふふっ、気絶したら驚いちゃうでしょ」
「な、何にも聞こえなかったし、ジミーが運んでくれたのか?」
「ええ、それで?ビックリした?」
「う、うん……それで、ここは?」
「リビングのソファー、ジミーは今自分の部屋のベットで寝てるわよ」
「ジミーの手当てはいいのかよ」
「火傷だけだったし感染しないように魔法の消毒して包帯巻いただけ、そしてエディは幸運にも気絶してたおかげで消毒する時の痛み感じなかった」
「よ、よかった……」
俺はアストレアの膝からゆっくり頭を上げて体も起こす
「全身の火傷と左腕の一時的な凍傷、手と額の怪我、エディの体って本当に凄いわ、エディの年齢関係なく普通だったら死ぬもん」
「そ、そんなに、まあ全身火傷だしな」
「そうだ、髪の毛は無事だよな?」
「エディがギリギリで大剣を構えてたおかげでね、それが障害物になって少しは防いでくれてた」
「俺の剣も無事?」
「無事よ、そうだ、ジミーが態々剣の手入れしてくれたんだから後で感謝しなさい」
「うん」
「それとエディ?暗殺の依頼、台無しにしたらしいじゃない」
「あっ………」
それからと言うものアストレアの魔女の力で体を地面に拘束され何時間もの説教をさせられた
俺は前世のおばあちゃんを思い出した




