第12話新たなメンバー
俺がこの世で最も憎む魔術師
奴は最強の10人の中の1人だった
「じゃ、じゃあ、どうやって俺は復讐すればいいんだ……?」
「一つは諦める」
「もう一つは諦めない」
「この選択は単純そうに見えるでしょ?エディは実感して分かってると思うけどアイツらはあのジェイクより実力は遥かに上なの」
「1人1人が国家を滅ぼしかねない、そんな奴をエディは相手にするのよ」
「あ、諦めるわけには……」
俺は怖い
ジェイクは確かにかなり強くて今の俺じゃあ勝てないだろう
だがライアードはそれ以上に強くて殺しに容赦がない
でも、それでも、俺は復讐をしなくてはいけない
……でも今回は相手が上過ぎるんじゃないのか?
「や、や、やっぱり、俺……」
「ちょっと外の空気を浴びましょ」
「うん……」
そして俺とメイデンはテントから出てジェイクが近くで寝ている焚き火近くに座る
俺は燃え上がる炎を見つめる中で思う
諦める
その言葉が頭に浮かんだ
また俺は諦めるのか
俺は生まれ変わったと思ってた、文字通りでも、だが違う俺は前世の俺みたいにまた逃げてしまう
何も変わっちゃいなかったんだ
今考えればほとんど計画もないし無謀だ
しかも今回は相手が悪過ぎる
魔法が使えない俺じゃあどう足掻いたって勝てない
でも俺はもう、二度と前世の様に背中を向けて逃げたくはない
弱虫には戻りたくない
「俺は諦めない」
「そのライアードとか言う奴を殺すまで俺は絶対に諦めない」
「エディ……」
「その魔大十騎士とかやらに匹敵する程の戦士とかいるだろ、この世の中に1人ぐらい」
「確かにいるわ、剣聖だとか勇者だとか」
「でも……」
「俺がそう成れる保証はない、でしょ、分かってる」
「でもやってみなくちゃ分からないだろ」
「俺は絶対に母さんや父さん、死んだ皆んなの仇を討るんだ」
「もう、エディったら」
「まあその力を付けてくれる人がいるってなら期待は少し出来そうね」
「メイデン……」
「でも倒した後はどうするの、きっと指名手配されるわよ」
「その時に考えます」
「じゃあ遅いしもう寝ましょ、旅は続行で明日は早いわ」
「はい」
そうして俺は立ち上がって焚き火の前から立ち去りテントの中に入って眠りについた
アイツ結構度胸あるじゃん
盗み聞きしていたジェイクは微笑み寝返りをうってから眠りについた
そして日が昇り朝となった
「うっ……」
朝早く起きて俺はすぐ異変に気付く
物凄く体が痛い
バケストラ王国に向かう為に結構歩いたからか?違う
ジェイクとの戦いで?勿論違う
「寝てた所が地面だからか……」
そう思い体を起こそうとすると自分の胸にメイデンの脚が乗っかかっていた
「メイデンのせいかよ」
寝相が悪い奴め
俺はメイデンの脚を退けて体を起こしテントから出た
「うおっ」
テントから出るとジェイクが全裸になっておりなんだか全身が濡れている
「おっ、エディだっけか、ガキなのに起きんの早いのな」
そしてジェイクは全裸で俺に近づいてくる
「く、来んなよ!」
「俺の事、そんなに嫌ってんの……?ショックだぜ……」
「お前が全裸だからだよ!このホモ野郎!」
「ん?ああ、俺朝早く水浴びしねえと気が乗らない性格なんだ」
「せめてアソコは隠せよ、朝から変なもん見たくないんだよ」
「それと前日の俺の強化魔法みたか?」
「?、なんか聞いたことあるけど、なにそれ」
「お前は魔術師について知りたいみたいだから教えてやるよ、魔術師の中には近接を得意としてる奴もいる」
「その得意な奴らが使っているのが身体能力強化魔法だ」
「だからメイデン、あそこまで追い詰められてたのか」
「そうそう……」
「お前、メイデンには敬語なのに俺はタメ口か……まあいいけどさ」
「メイデンは?起きてないのか?」
ジェイクはそう言いながら股間を手で隠して仁王立ちして自然乾燥を待っている
今月は12月だぞ?
「まだ寝てるよ、朝早いって自分が言ってたのに」
「しゃあねえ!俺が起こしに……行っちゃダメか、お前が起こしに行け」
「はーい」
俺はテントを開けて寒い空気をテントの中に入れる
「メイデン、起きてください」
「うぅ……分かった……」
メイデンはゆっくり起き上がり這いつくばってテントから出てきた
「ジェイク、アンタ服着なさいよ……」
「それは後でだ、それとここら辺に美味い果物屋はないか?いちごが食べたい」
「ああ!国で食ったあの……ストロベリー……なんとかが食べたい!」
「朝からうるさい……!」
メイデンは靴を履いてジェイクの股間を蹴り上げた
そうして俺とメイデンの準備が終わった後ジェイクとは別れてバケストラ王国へ向かう事となった
「メイデン」
「なに?」
雪がチラチラと降り始めそれと同時に森を抜けた
「気に触ったら申し訳ないですけどジェイク、あいつ話してみたら結構親しみやすいですね」
「………ああ見えて付き合ってた時期あったから分かるわ、まあクソ野郎には変わりないけど」
「クソ野郎は余計だが、いい男だろ?」
「うわっ!!」
俺が後ろを振り向くとジェイクがしっかり服と軽装の鎧を着て立っていた
「来ないでジェイク」
ジェイクはメイデン周りを回って立ち止まり妙なポーズとった
「俺も興味が湧いた」
興味が湧いた?俺の旅の事か
待て!こいつには話してないぞ!?
「もしかして着いてくるつもり?てか盗み聞きしてたのね」
「そ、それは悪かったよ、でもあのクソ野郎の騎士をボコりに行くのは賛成だ」
「俺もアイツらは嫌いだしな」
「嫌う理由でもあるのかよジェイク」
「勿の論だ、俺はある日奴らから招待され、当然俺は最終選抜まで生き残り見事1人に輝いた」
「仕事の見学をした時だな、あそこは地獄だ、人殺しには加担させられるし定期的に罪のない奴を冤罪で殺したり」
「学院でも偶に暴力沙汰を起こしてる貴族とか魔術師もいたが比にならない」
「俺が会った中じゃ死姦したりする頭のネジかぶっ飛んでる奴がいる」
「そんな行動を起こしても正義が成りなっている、なんせ正義の味方で英雄だとか言われる連中だからな」
「まあしっかりと仕事はするさ、ドラゴン討伐して村の人を救ったりだとかな、それぐらいしかいい記憶がない」
「まともな奴はいるにはいるがヤバい奴らは俺の経験人数ほどいる」
「アイツらだけじゃない、近くにいる奴らもイカれてる」
「なんで誰も疑わないんだよ」
「そりゃそうだろ?俺だって仮入団するまでは教科書に書かれていた通り正義の味方だと思ってたからな」
「話がズレたな」
「俺は人を殺したりするのは怖いし、魔大十騎士の一員を殺そうとしたりなんかはしないがお前が起こすどんちゃん騒ぎには興味がある、だから着いていきたいってわけだ」
「俺が剣の稽古にも付き合ってやるしいいだろ?エディの旦那」
「俺は別に強くなればなんでもいい、でもメイデン姉さんの許可が下りたらな」
「ね、姉さんって恥ずかしいよ……」
「メイデン、頼むぜ?こんな世の中だし女と子供だけじゃあ襲われる」
「でもアンタは……」
「確かに俺は最悪なことをした」
「今度は絶対守ってみせる」
「周りなんか関係ナッシングだ」
「食費とか宿代とか、全部アンタが負担してよね」
「よしっ!んじゃあガキ行くぞ!」
ジェイクは俺の肩に腕を回して歩き始めた
「きょ、距離が近いって!!」
「お前身長デカいな?年齢いくつだ」
「13です」
「メイデン170くらいだったろ?越してるんじゃないのか?」
「気安く話しかけないで」
「は、はい、にしてもエディはこんな貧弱な体してるからな……恵まれた身長してんだ活かせよ?」
「なら太る為にご飯奢れよ」
「いいぜ」
そして俺の旅にジェイクが加わった
メイデンは不機嫌そうで可哀想だがこいつは強い
道中はかなり安全だろうし心配事が減って良かった
……でもこう見えてメイデンを裏切った奴だ、しっかり見極めないと
そうして歩いているとジェイクはメイデンの隣に行きメイデンが見ている地図を覗き見する
こいつ……!!
ジェイクはメイデンの腰に手を回そうと腕を動かしていた
だがピタリと止め腕を自分の背中に回した
「メイデンさん、何処に向かってるんだい」
「……ここからバケストラ王国は結構離れてる、駅馬車もここらじゃ見当たらないし近くの町に行こうとしてるの」
「ここらの町って、名前は?」
「フラワーって場所」
「………冗談?」
「なあジェイク、メイデンがお前の為にわざわざ冗談言うと思うか?」
「それもそうだな、マジで言ってんのか」
「なによジェイク?なにかマズイの?」
「聞いてねえのかよ、最近そこに行く道にヤベェ盗賊がいるんだ」
「結構問題になってて新聞じゃあ……」
俺達から見て前方
そこから馬の足音が聞こえてきた
「奴らは死体を引き摺りながら馬を走らせていてバレット一味って奴らだ」
「まさかアイツらじゃないよな」
目の前に現れたのは屈強な男達が馬に乗っている姿
後ろにはなにやら跳ねてバタバタと動いている死体があった
「おい!獲物だ!!」
「俺達の縄張りに入った愚かな人間共め!殺してやる!!」
「女もいるぞ!?久々に発散出来そうだぁ!!」
5人の男はそう大声を出しながらこちらに走って来た
「エディ!準備は出来てるか!?」
「エディの心配は私がするからアンタは黙ってて!」
「は、はい」
メイデンは手の平を切り血を剣へと変える
「殺しは無しな、強き鋼鉄よ、我が言葉に耳を傾けたまえ」
「アイアンブレード」
ジェイクの手元はバチバチと電気が走り人を殺さない刃がない剣を生み出し構えた
「皆んな魔法使えていいな」
そして俺も剣を引き抜き構えた