第11話一度は恋した相手
目の前にいるあの男がメイデンをここまで陥れた男
しかしメイデンが攻撃する前ハッキリと「ごめん」と言っていた気がする
奴には悪気がなかったのか?いやきっと無視して楽しんでいたが罪悪感で謝りに来たに違いない
「め、メイデン!落ち着け!俺は本当に謝りたいんだ!」
男は襲い掛かるメイデンの攻撃を避けながら必死に弁解している
「今更謝罪しても私はアンタを殺すだけよ!!」
メイデンはそう言って剣を振り下ろし男はまたメイデンの攻撃をすんなり避けた
かなり強いはずのあのアフライトでさえも攻撃は受け止めてたって話してたし、あの男一体どれくらい強いんだ!?
「落ち着けって!俺は戦いに来たんじゃないぞ!」
メイデンは剣を薙ぎ払うが男は屈んで攻撃を避ける
「はあっ!!!!!」
メイデンは屈んでいる男に向かって蹴りを入れるが男は腕でしっかりと攻撃を防ぎメイデンの足を掴んで押した
そしてメイデンは押されたせいで後ろに向かって倒れ始める
「くっ……!!!」
「言ったろ、俺は殺す気なんかない」
「なら好都合だわ、そのまま死んで!」
メイデンは地面に頭が着く瞬間地面に手を着き男の顔に向かって全身全力で蹴りをお見舞いした
しかし男は攻撃を頭を動かして避け後ろに下がって距離を取る
「俺は謝りたいんだ、そして俺がやった事を許してほしい」
「うるさい!!!!」
「へえ、じゃあ強引に黙らせるしかなさそうだな」
「黙らせた後はどうせ殺して犯すんでしょ?このクズ野郎」
「出すもんは出さない、ただアンタは俺の謝罪を受け取りな」
メイデンは避けて後ろに下がり続ける男に向かって剣を今のより細いがかなり刀身が長い剣へと変形させ薙ぎ払う
すると男は唱え始めた
「強き鋼鉄よ、我が言葉に耳を傾けたまえ」
「アイアンブレード!!」
男が唱え終わると右手から刀身が鋭くなく敵を死に繋がる傷を付けないなにやら珍しい剣を生み出した
男は迫り来るメイデンの長い剣の攻撃を軽く剣で受け止め次の瞬間メイデンは男の横振りによって吹き飛ばされ木に激突する
「うっ!!!!」
「め、メイデン!」
メイデンってかなり強いはずだよな!?
仕方がない、相手が謝る気があってもメイデンを助けなくちゃ!
俺はすぐ側に置いてある剣を掴み取り鞘から引き抜いた
今回は殺さない!
奴が魔術師だとしても!
い、いや、でもあの魔術師だぞ!!
アイツと同類かもしれない!!!
そうして俺は殺す勢いで父さんとの剣の稽古を思い出し背中が隙だらけの男に向かって剣を振り払った
メイデンも俺が奇襲しているのを見たのか地面を蹴り飛ばし勢いよく男に近づく
「腹殴ったのに全く効いてねえな、一体何食ったらそうなるんだ?」
「死ね!!」
メイデンは剣を振り下ろす
すると男は両手から片手へと剣の持ち方を変えメイデンの全力を受け止め無駄に長い脚で後ろから切り掛かる俺の手を蹴り下ろした
しまった!!!
俺は蹴られたせいでうっかり剣を離してしまい男は左拳で俺の顔を殴り飛ばした
この感覚はそうだ、全力を出した父さんに近いかもしれない
そして離してしまった剣はそのまま直進して男の足に向かって進むが男はタイミングを見計って剣を上に蹴り飛ばし剣は地面に突き刺さった
「はあぁぁあ!!!!!」
そしてメイデンは男が剣を片手持ちにしている今、ここで押し切るつもりで剣を振り下ろし見事剣は下がりガードは崩れた
「!!?」
男の顔には焦りが見えそしてメイデンは剣を振り上げ男の胸を切り裂く
しかし傷を負っている男はバク転をして宙高く舞いながら俺の首に腕を回し俺を一瞬で拘束した
「お、お前本当に傷負ってんのかよ……!?」
「ああ、勿論負ってるぜ」
「それで坊主、どうする?お前は今人質だ」
「このクソ魔術師……!!」
「エディを放せ、ジェイク!!」
メイデンは男の名前を言い男は俺の首元に剣を当てる
くそ!このままじゃあコイツに殺される!やっぱりあの謝罪とやらは嘘だったのか!?
そして俺は奴の腰に下げてある短剣を掴み取ろうとした瞬間だった
「メイデン、お前が一番分かってるんじゃないのか?」
「お前は俺に勝てない」
ジェイクは鼻でメイデンを笑うと首元に当ててある剣は電気を帯びながら消え去っていった
そしてジェイクは俺を突き放しメイデンの胸へ飛び移る
「エディ大丈夫!?」
「う、うん、なんとか」
甘くて良い匂い……
メイデンは俺の無事を確認した後ジェイクを睨みつけ言う
「なんで解放したの」
「言ったろ、俺は殺し合いをしに来たわけじゃない、謝りに来たんだ」
「それにその子の命は助かった、敵意はない、そうだろ?」
「……確かにそうね、だけどどうして今更私の目の前に現れたわけ?」
「謝罪がしたいからだ」
「本当にあの時はすまなかった」
ジェイクの言葉にメイデンは戸惑いを隠せない
「……はあ」
「本当に今更よ」
「それで?魔法学院に戻るわけ?アンタならそうするだろうし、さっさとハーレム味わえる場所に戻ったら?」
「戻らねえよ」
「は?」
「学院を自主退学したんだ」
「は!?ほ、本当に言ってるの!?」
「将来が保証されてるのよ!?バッカじゃない!!?」
「確かに俺は学院では一番強いし、なんなら"魔大十騎士"に入るだろう、分かると思うが俺はイケメンだしな」
「だが俺は女を傷つけちまった、怖かったからさ」
「言いにくいが当時お前は女から結構嫌われてた、なんせスタイルいいし無詠唱が使える天才だからな」
メイデンはムスッとし始め剣を強く握り始めた
「……回りくどいよな、簡単に言うと……」
「俺は周りに嫌われたく無かった」
「それでメイデン、アンタを切り捨てたんだ」
「だから本当に申し訳ない。罪悪感で死のうとも思った、母に誓おう」
「だから許してくれ」
「……ほんと、変わらない、そういうバカな所」
「絶対に許さないけど殺す気は失せちゃった、話は終わったしアンタは帰ったら」
「そ、それが、その」
「俺鈍臭いのは知ってるだろ?金落としちゃった」
「ど、どうするんですか?メイデン」
メイデンはしばらく考えた後俺に言った
「エディは引き続き私のテントで寝る、ジェイクはここから離れた場所に行って」
「サバイバル訓練する時、俺炎扱えないの知ってるだろ?だから、ね?頼む!」
「じゃあその焚き火近くの地べたで寝て」
メイデンの事だから攻撃して強引に離させると思ったんだけどな
なんだかんだ言っときながらメイデン優しいのな
するとジェイクは俺に近づき目線を合わせる為に屈んだ
「そこの坊主もいいよな」
俺はイラッときた
「正直俺はお前みたいな魔術師が一番嫌いだ、世間の評価も知ってるだろ」
「え?そうなの?」
俺がそう言うとメイデンは俺の耳元で囁いた
「大半の魔術師は教育で自分は崇拝されてるだとか教えられてるから知らないのよ」
「そ、そうなんだ」
「それで坊主、いいか?」
「メイデンには近づくなよ、あと俺にも」
「ありがとう!」
話してみた感じ完全に悪い奴じゃなさそうだ
それでも学院時代はメイデンの事は話さず勝手に罪悪感を感じて謝りに来た
もしメイデンが俺だったらコイツが目の前にいるのが耐えられない
今でも"アイツ"とこの男が重なって仕方がない
……それにしても気になることがある
会話の途中で出てきた"魔大十騎士"とか言う言葉だ
魔術師について分かるかもしれない
しばらくして俺とメイデンはテントの中に入り寝る事となった
だがメイデンはジェイクを警戒しているのか中々目を瞑らない
それを見ているとメイデンが視線を合わせてきた
「私が見張っておくから寝てもいいのよ」
メイデンはそうして俺の頭を撫でる
俺、女性経験少ないのにどうしてこう密接な空間で話しかけて頭を撫でてくるのかね
俺はちょっと緊張しながら話した
「気になることがあって」
「ん?なに?」
「魔大十騎士ってなんなんですか?」
するとメイデンは驚いた表情をして答えた
「……そういえばエディの所は義務教育がないのよね、それでも両親からは聞いたことないの?」
「多分ですけど俺の父は冒険者だったんです、母は堕落した貴族でその間に俺は生まれた」
「二人とも駆け落ちだったしこの暗い世の中をよく知っていたから俺にあまり知ってほしく無かったんだと思います」
「なるほどね、だから分からないことが多いのね、それで魔大十騎士についてだけど奴らは魔術師の頂点に立つ10人を示してる」
「それぞれ最強クラスの奴ら、悔しいけどあのジェイクよりかなり強い相手よ」
「……俺は絶対しませんけど聞いていいですか?」
「うん」
「その10人を全員殺せばどうなります」
「多分魔術師の時代は終わるんじゃないかな、最も権力を握ってる人達だし、全員殺されたとなると大抵の魔術師じゃ殺した奴には勝てない」
「………」
「エディ、変な事考えちゃダメよ、絶対に勝てない相手だから」
「分かってます」
「そうだエディ、アンタの村を滅ぼした奴が使ってた魔法とか分かる?」
「ええ、氷の魔法を使ってました」
「思い出さなくてもいいけど村はどんな感じだった?私は結構悪党と組んでたから魔術師には詳しいのよ」
そういえば俺は復讐する相手の名前も姿も知らない
後々調べようと思っていたが好都合だ
しかしあの残酷な場所を思い出すのか…
俺は思い出したくないがあの村の背景を頭の中で思い描いた
「物凄い山の破片みたいに大きな岩の氷が地面に突き刺さって村を壊滅させてました」
「……!」
するとメイデンは目を大きく開かせて驚く
「それほどの魔力量を兼ね備えてる魔術師……」
「どうしたんですか、分かったんですか?」
「多分その魔術師は凍てつく王ライアード」
「魔大十騎士の一人よ」