第10話旅立ち
風呂に入ろうとしたら先に入っていたメイデンの裸を見てしまい怒られ一息ついた後
俺は自分のベットに入って天井を見つめながら明日のことを考えていた
明日、俺はアフライトに事を説明してここを出てメイデンと共にバケストラ王国へと旅に出る
単純なはずなのになんだか緊張してきた
それにしても冒険か
……必ず仇を討ってやる
そうして天井を見ている内に瞼が重くなってきた
気付けば日の出が見れる時間帯に起きており俺はベットから起き上がる
俺があくびをして体を伸ばしていると突然扉が開きビクッと体を驚かせた
「だ、誰」
「ごめんエディビックリさせちゃった?」
「メイデン、心臓に悪いですよ……」
「と言うかどうしてここに?」
「どうしてってアンタ、旅の準備出来てるの?」
「アフライトに言うの緊張し過ぎてすっかり忘れてました…」
「だと思った」
「食料だとか野宿だとか、それは私が慣れてるから安心して、あとお金のことも私が管理するから」
「じゃあ俺が荷物に積めるのって服と魔物が出た時用の武器?」
「あと地図もね」
メイデンはポケットからクシャクシャの地図を俺に渡し俺はポケットにそれを入れる
「俺、この先上手くやって行けると思います?」
「それは分からないけど、まあ上手くやっていけるんじゃない?」
「そうですか?じゃあ俺はアフライトに事を言ってきます」
「幸運を祈るわ」
「そこまで重大じゃないし言わなくてもいいですよ……」
そして俺は荷物をまとめたバックを手に持って事前に玄関先に置き俺はアフライトがいつもいるリビングへ向かった
途中ミアの部屋を通り過ぎる
旅立つ前に挨拶でもしようかと思ったが泣きつかれたら行く気を失せるかもしれない
そうミアの泣き顔を考えたら胸が苦しくなってミアに最後の挨拶をするのはやめることにした
そうして俺はリビングへ訪れる
食卓のアフライトがいつも座っている椅子にはいつも通りアフライトが座っていた
俺はアフライトの対になっている席に座る
「どうした、こんな朝早くに起きて」
俺はアフライトの目を見る
何故だろう
アフライトの目は先を見ているような目をしている
いいや、何か既視感がある
まるで俺自身の目を見ているような……
緊張のし過ぎで俺おかしくなったのか
「アフライト、俺強くなる為にバケストラ王国に旅立ちます」
「それで強くなった皆んなを殺した"アイツ"に復讐する」
「……お前には覚悟が出来ているのか?人を殺める覚悟が」
「もう二人も死なせてしまったんです、嫌だけど今更ですよ」
するとアフライトは席を立ち上がった
やはり断られるのだろうか
俺がそう心臓を高鳴らせているとアフライトは俺の椅子を掴みアフライトの方向に向かせた
アフライトは俺に目線を合わせる為に屈んで話す
「エディ」
「はい」
「俺はある男を見た事がある」
「昔の話だ、少しいいか?」
「聞きますよ」
俺がそう言うとアフライトは話し始めた
「昔、俺は傭兵団に所属していた。その時
に同期がいてな、そいつはある戦争で目の前で仲間が死んだのを見て心的外傷後ストレス障害になってしまったんだ」
「その後そいつは戦えず傭兵をやめた。俺は自然や薬とかで治ると思って側に寄り添う事はしなかった」
「なんせ奴は心が強い奴だったからだ、まあその仲間想いのせいでああなっちまったんだろうな、あいつは2年後自ら命を断った」
「あの時、寄り添っていれば今頃生きていたのかもしれない」
「俺が言いたいのはエディ、お前にはそんな想いをしてほしくないからだ」
「苦しんでほしくないんだ。俺を辛くさせないでくれ」
その話を聞いて少し心が揺さぶられる
だが復讐心だけは微動だにしない
「俺なら平気ですよ」
「……約束出来るか?」
「はい」
「ミアにはなんて?」
「皆んなに為に旅に出るって言っておいてください」
「………わかった」
アフライトが放ったその言葉はなんだか寂しそうな言い方だった
そしてアフライトは立ち上がり俺と共に玄関先まで向かう
玄関の扉は開いており外にはメイデンが荷物を持って俺を待っていた
俺は事前に置いていた荷物を背負い玄関先から外へ足を一歩踏み出した
そして俺はアフライトがいる後ろを振り向く
「いってきます」
深呼吸した後俺はアフライトにそう言う
アフライトは無愛想な顔をしていながらもしっかりと俺の目を見て言う
「ああ、いってらっしゃい」
そうして俺の復讐の一歩がようやく始まった
数時間後
木下で雨宿りをしていた所の森、それよりももっと深い場所に俺達は今いる
俺はメイデンの後ろを追いかけながらポケットにしまってあった地図を開き読み取る
この森を北に進むと辿り着くのか
するとメイデンはいきなり立ち止まり俺はメイデンの背中に顔をぶつけた
「い、いきなり止まらないでくださいよ!」
「……エディってさ、魔術師全員殺そうと思ってるの?それとも君の故郷を滅ぼした魔術師一人を殺そうとしてるの?」
俺は言葉が詰まった俺は皆んなを殺した魔術師に復讐したいと思ってる
だけど眠ってる時にメイデンを殺そうとしたのはハッキリ覚えてる
理由は魔術師だからだ
薄々気付いていたが心の底からからくるこの想い
俺は魔術師全員を根絶やしにしたい
自分がそうしたいのは否定したいがメイデンを殺そうとした時に気が付いていた
だがこんな事を今正直に話せばメイデンは怒り俺は一人で行く羽目になるだろう
………こういう時は嘘を付くしかなさそうだ
「魔術師一人に復讐するに決まってるじゃないですか」
「ならよかった」
「もし違う答えを出していたらどうしていたんです?」
「……その時は、分からない」
「まあ君は私が思っている答えを出してくれると信じていたから」
「よし、あともう少し進んだらキャンプを建ててそこで休憩でもしましょう」
「分かりました」
そうしてメイデンと俺は数十分森を進んで行くと森はますます濃くなりコンパスがないと方向感覚が狂ってしまいそうな場所であった
自分一人だったら発狂するな、この場所
そしてしばらく進むとメイデンはバックを下ろして立ち止まった
確かに木とか障害物はなくて平らな場所だからうってつけなんだろう
「ここにキャンプを?」
「ええ、それでエディにはテントを建ててもらうわ」
「お、俺やり方知らないですよ?」
「ほ、本当?」
「残念ながら、はい……」
「あちゃー、これは参ったね」
「私、リスとか蛇とか捕まえなきゃいけたいんだけど……まあ食料はあるし、今日で建てるの覚えてよね?」
「はい!」
メイデンは食料を確保しておきたいのに俺のせいで現地調達は出来ず二人で協力してテントを建てる事となった
テントは俺がしくじったせいで少し時間がかかったが完成した
一つのテントで二人なのは勘弁してほしいな……
そして暗くなり始めメイデンは木材を用意して火の魔法の呪文を唱えると木材に火をつけた
やはり魔法という文明が進んでいるおかげなのか食料である非常食は意外に美味しく虫などは混入していなかった…はず
そうして火を囲んで夜中明かりでゆったりしていると草むらの方からガサガサと聞こえてきた
「メイデン、動物ですかね?」
「エディ私の後ろにいてちょうだい」
「は、はい」
なにやらただならぬ雰囲気
メイデンは手の平を少し切って血を流し剣を作って音が鳴る方向に構える
「おいおい、こんな所にいるって事は悪か?それとも善か?」
「何者?」
草むらからは見た通り190ある背丈をしている軽装の鎧が特徴の男がやってきて暗闇で顔は隠れている
「その後ろにいるのは彼氏?歳の差カップルはいいね」
そうして男は一歩足を踏み出し暗闇から顔を現した
「夜はどんな………」
男がそう言いかけた時男は口に何か詰まったのか疑うほど黙り始めた
「お前まさか、ご、ごめん!あの時は……!!」
男がそう言おうとした瞬間メイデンは剣から投げナイフへと形を変えて数本を躊躇なく男に投げつけた
男は見習いたくなるほど凄い動体視力でナイフを避ける
「エディ!」
「うわっ!!!」
メイデンは投げナイフを投げ終わると宙を飛び俺の服を掴んで大きく後ろに下がった
「メイデン!?一体なにが……」
「あの男よ!あの男が言わなかったの!」
「アンタが証言してくれてたら、今頃私は、こ、こんな酷い火傷傷も!こんな刺し傷も無かったのよ!!」
ま、まさかあの男が?
今まさに目の前にいる男が?
メイデンがこうなる原因となったあの男なのか?
「落ち着いて、メイデン少し話そう!」
「黙れッ!!!」
そうしてメイデンは男の後ろの木に突き刺さっている投げナイフを液状にして回収しまた剣と形を変え男に切り掛かった