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魔術師殺しの転生者  作者: とまてるの
第一章旅立ち編
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第1話転生

「出て行けクソ野郎!!!」


「恥知らず!!!」


「ふぐッ……!!!!!」


俺は数人に押されて家を追い出された

うぅ…いくらなんでも腹を蹴るのは違うだろ!

そう思いつつ俺は素足で外を歩く

高校でいじめを受けてから不登校になり中退してから約20年

俺は何もせず仕舞いには今さっきのように親や親戚に追い出された

俺って何をするために生まれてきたのだろうと思いながらも俺は立ち上がる


まあいいこれからどう生きていこうか考えよう

まず生活する為に仕事を探さないとな

でもどうやって仕事を探そう

俺には住居もないし…

それにしても腹が痛すぎる

腹というより胸か?絶対骨折れてるだろ

そうして俺は深夜で薄暗く寒い商店街へと入った

ここも随分変わったみたいだな

ここに来るのは中学生以来か

当時は友達も多かったんだけどな

それとしばらく運動してなかったせいかすぐ息が切れる

ぐっ………

深呼吸したら胸がもっと痛むぞ

俺は手を膝に置き吐いた息が白くなっている

今の季節だからかかなり寒い

顔を上げると目の前には2人の男に囲まれている女性がいる


可哀想だ

あんなに怯えて自分より大きい相手に無力

俺だったら漏らすだろう

………

俺は正義感が強いが関係ない

それでも俺はあの女性を守らないと思った

こんな俺でも存在価値があると証明したくて自分の中で無意識に思ったのだろう

俺はガクガクと震える足腰を動かして鼻水を啜り鼻下を擦る


「お、ぉい」


俺は小さく情けない声で男に話しかけた

やばいやばい!

俺の頭は真っ白になり心が冷え切ったように感じた


「あ?なんだおっさん」


「ぁ、あの、女性の方が……」


俺が女性がいた方向を見るとそこには女性はいなかった

逃げたのだろうかだとしたら安心だ


「あの女逃げやがった!」


「テメェどうしてくれんだよ!」


俺は女性が逃げたことに安心して次は俺が逃げる出番だ

昔だとここらに交番があるはずだ

そこまで逃げるか捕まった場合は叫ぼう

イメージは出来ている、あとはそれを無事に実行するだけだ


「なんとか言えやゴラァ!!!」


男はいきなり俺に詰め寄り俺は驚いて足を滑らした

多分凍っているせいで滑りやすくなっていたんだろう

俺は頭を強く打ち付け物凄い衝撃が頭と首元を襲った

頭の中に水が入ったかのように重たく嘘みたいに起き上がれない


「起き上がれやゴラ!!」


「お、おい、なんか様子変だぞ」


「ほら!血!血流してる!」


「う、うっせ!とりあえず救急車か!?」


「バカ!どうやって説明すんだよ!」


「だ、誰も見てねえよな?とっとと逃げようぜ?こんな奴誰も気にしやしないさ」


「それも、そうだな……」


そうして2人の男は逃げて行った

あの2人がどうなったのかはどうでもいい

頭と首元以外にも背中を打ち付けたのか?

呼吸が出来ない

息を吸おうとしても骨がギリギリと軋み痛みは更に激しくなった

それと太ってしまったせいか呼吸が上手く出来ない

やばい

これ本当にやばいやつだ

死ぬ!呼吸が出来ない!!

死ぬ!!!

頭から流れてくる血と徐々に体温を奪う気温

俺の口元から白い息は出なくなった




そして目が覚めると俺は何処の天井を見ていた


「ーーーー!」


「ーーー」


なにか言っている言葉が聞こえる

視界もボヤけていて周囲がどうなっているのかわからない

一体どうなっているんだ?

まさか助けられたのか?

良かった本当に良かった

俺は心から安心して手を顔に当てた

しかし不思議と胸が痛くないな

麻酔が良く効いているのか?

俺の手もなんだか………

じっと自分の手をよく凝らして見る

俺は言葉が出なかった

そこにあるのは赤子の手なんだから

そして同時にある確信も得た

俺は転生してしまったのではないのかと



かなりの月日が経ちいきなりだが13年後

俺はここに転生して分かったことがある

それはここが魔法と剣の世界だということ

そして俺がいる地区は義務教育というものが完全にない事だ

学べるのは両親からの教育のみ

俺が受け入れられなかった現実で唯一分かったことだ

そしてもう一つ最悪な問題がある

この世界は魔力を持つ者が絶対

俺の家系は代々貴族だったが殺されて見たこともない俺の祖父がやらかしたせいで農民まで堕ちてしまったみたいだ


まあ元貴族だということもあって他の家よりかは裕福だ

それで転生して良い事もある

この前大雨が降った時に最近引っ越してきた女の子が道に迷ってた

服も濡れていたから家に上がらせて色々世話してたら相手がお礼をしてくれてその日からかなりの年月遊んでる

まあ遊ぶ相手がいない同士だから相性ピッタシでよかった


「エディー、ミアちゃんが来るわよー!」


「はーい」


この声は俺の母アイリス

噂では俺の父とは駆け落ちの仲らしい

俺は自分の部屋のベットから起き上がり2階へと降りて行った


「エディこれ持ってけ」


1階へ降り立つと父が俺を待っていたかのように立っていた

いや、片手に持っている剣を見る限り待っていたと言うのが正しいか


「ミアがまた魔物にイジメられないようにお前がこれで守ってやれよ」


「そ、そんな仲じゃないって、てか魔物出た事ないだろ?」


「そんな仲じゃないって、お前それ本当かー?」


俺の父はアドルフ

息子を友人関係だと思っているのか俺が賢いからなのか妙に馴れ馴れしく母がいない時には下ネタをよく言う

俺も父ではなく友人に近い感情を抱いているからまあ別にいいが限度は知って欲しい


「はいはいじゃあ行ってくるよ」


「いってらっしゃいエディ」


母の声がキッチンから聞こえ俺は玄関から出た


「あっ」


目の前にいるのはか弱そうに見える子でちょいと押しただけで倒れそうな女の子

まあそんなことないけど


「エディ!」


ミアは嬉しそうに俺の名前を言って俺は少し照れ臭いながらも返事をした


「今日は約束してた家で遊ぶ日だよ?もちろん来てくれるよね」


「もちろん行くよ」


「じゃあ早く行こ!」


そうして彼女は俺の手を引っ張り彼女の家に辿り着く道を走った


「ちょ、スピード落として!」


「エディは体力がないなー女の子の私に負けるの?」


「言ったな?」


俺は全力を出してミアと共に道を走り続けた

空は雪が降り始めていて彼女のマフラーはとても可愛らしかった

ミアのこの表情もずっと見ていられる

俺はこの子が好きだ

そうして数時間彼女の家で遊び尽くして夕方となってしまった


「ねえねえ!今度はいつ会える?」


「今日はずっと遊んでたから明日は休ませてよ……」


「えー、嫌だー」


「勘弁してよ……」


「エディったら体力本当にないんだから、じゃあ明後日一緒に剣術教えてね」


「別にいいよ」


「やったー!エディって剣扱い慣れてるからもしもって為に役立つのよね!」


俺はミアの部屋にて寝転がりながら話を聞いているとミアは何を思ったのか抱きついてきた


「ちょっ!」


流石に子供相手でも危ない

俺は理性を保ちつつこの場を凌いだ

これも嫌われない為だ


「じゃあもう帰らないと、お母さんとお父さんが心配しちゃうからさ」


「分かった見送るね」


俺は彼女の部屋から出て玄関先で厚着をして玄関の扉を開いた

家の暖炉で暖まった部屋とは違くかなり寒い

雪も降り積もっていて視界が悪い


「エディ泊まってく?」


するとリビングからミアの妹が顔を出した


「私はエディが泊まって来ても全然いいよー」


「そ、それは流石にいいよ、悪いし」


「そう?ならいいけど」


「じゃあまたね」


「うん」


俺は玄関から外へ出て家の中に手を小さく降っているミアに手を振り返した


ギューしちゃった!しちゃった!

彼女は心の中でそう叫ぶ


こんな生活前世の俺なら全く想像もできやしなかったな


「早く帰ろ…」


俺は降り積もる雪道の中家に向かって走って向かった

しばらく走っていると明かりが見える

俺は扉を開けて家の中に入ると父が剣を研いで待っていた


「おお、おかえり」


「ただいま」


「アイリス!エディが帰ってきたぞー」


「はーい!」


父さんが母さんにそう呼び掛けると母さんは夕食の準備をし始めた

それにしても13歳の子がこんな時間に帰ってきて何も思わないのだろうか

俺だから安心しているのか

そうして夕食ができ3人で楽しく食卓を囲んだ

そのあとは風呂に入り俺は自分の部屋のベットで眠りにつく

やっぱり明日はミアに会いに行こう

……あの時ハグされた時の感触がまだ残ってる

もうあれは両思いでいいのか?それとも違うのか?

自信があることはいいことだが勝手に相手が自分のことを好きと判断するのは違うだろ

彼女は俺を友人だと思っているから抱きついたんだ

そうに違いない

俺は心臓をバクバクさせて鞘にしまってある剣を抱き枕代わりにして眠りについた


ドンッ!!!!!!!!


突然の大きな音に俺は目が覚めた

時計を見ると深夜の2時

両親がいちゃこらせっせとやっているのかと壁に耳を当てるがどうやら違うみたいだ

じゃあなんだ?

そう考えていると素早く音を立てずに誰かが扉を開けて入って来た

ヒンヤリと背筋が凍るが目の前にいるのは俺の父だった


「どうしたんだよ父さ………」


「静かにしろ……!」


父さんは俺の口に手を当てて黙らせた


「俺の言うことをしっかりと聞け」


「俺が下に行ったらお前は玄関から逃げろ」


「この地図の場所に行けば安全だ」


「な、なにいって……」


俺が突然のことで唖然としていると父さんは俺にそう言い残し質問の間もなく去って行った

その時微かに見えた

父さんが右手に持っていたのは鞘を抜いている剣だ

俺は事の重大さを理解し父さんの言う通りに玄関から降りようとする


「なんだテメェ!!」


「おいぶっ殺せ!!!」


「ぐがぁぁあ!!!!!」


そんな男達の怒号や叫び声が1階のリビングと母の寝室から聞こえる

俺は護身用として持っている剣を抱き抱えて階段に縮こまってしまった

無理だ!

怖い怖い怖い!!!

頭の中には恐怖が埋め尽くし足が思う様に動かない

父さんは無事なのか?母さんに怪我は?

そんなことが俺の頭に過ぎる

誰か助けてくれ!!!!!


俺は涙と鼻水が流れて恐る恐る1階の大音が聞こえる方向に背を向け玄関からゆっくりと出て行った

ガツッ

何かが俺の足に当たった

生首だ


「ッ!!!!!」


俺は口を咄嗟に抑えた

人の首だ

本物だ

ネットで見たものとはレベルが違う

本当に殺される


「ッ!!ッ!!!!」


ボロボロと涙が出てくる

怖くて怖くてこの場から動けない

「お前は玄関から逃げろ」

その言葉が俺を動かした

一歩一歩慎重に歩き徐々に慣れて走り出す


「はあっ!!!はあっ!!!」


息がバカみたいに上がる

体力は前世よりかは遥かにある

それなのに死に直面するだけでこんなにも緊張して本来の力も出せないとは思いもしなかった

そうして道を走っている時だった


「助けて!!誰かぁあ!!!!!」


そんな声が聞こえた


「ミア!!!」


甲冑を外して下半身ほぼ裸の男がミアに覆い被さっている

ミアを守らないと!!!

俺は護身用の剣を握り男の背中に叩きつけた


「なんだ?」


あれ?

ミアや父とかとやる時はかなり力が入っていはずだ

このままじゃあ俺が殺される!


「ガキが!なに切り付けてきてんだよ!!!」


男は俺をぶん殴り地面に倒れた俺に馬乗りになって顔を殴り始めた

強すぎる

こんな奴勝てっこない

だけど俺は生きたかった


「ごばっ!!!!!」


憎たらしい男の血反吐が俺の体に掛かる

剣を引き抜き俺は男の横腹に再度剣を突き刺していた

それもかなり深く肺は簡単に貫いているだろう


「が、ガキ……」


俺は半泣きになりながらも隙を見て男を思いっきり蹴飛ばした

男は傷口を抑えるのに必死になってあっさりと倒れ俺は呆然と立ち尽くしているミアの手を掴み地図が示している場所への向かったのだった


「待って!」


「なんだよ!今それどころじゃ……!」


「お母さんが!お父さんが!」


「い、妹も……に、にげ遅れちゃって…」


「俺は置いて来たんだ!」


「父さんが置いてけって、それで逃げて来たんだ!」


「ミアもきっとそうだろ!?」


ミアの目からは涙が出て来ていて小さく頷いた

すると後ろの方向から物凄い音が聞こえた

まるで上空から大きな岩が落ちて来たような音

後ろを振り返るとそこには魔法で作られたであろう氷の結晶が舞い降りていた


「行こう」


俺は返事もせずずっと泣いているミアの手をまた優しく掴み地図を見てその場所へ逃げて行った

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