東京都知事選挙は“ビジネスと変態の巣窟”に成り下がってしまった
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただき誠にありがとうございます。
今回は6月20日に告示された東京都知事選挙について“深刻な状況である”ということを伝えていこうと思います。
◇56人が立候補
質問者:
48人しかポスターを張ることが出来ないという事だったようですけどどうしたんでしょうか……。
筆者:
選管は『49人目以降に、大小2種類のクリアファイルと、雨よけ用のビニール袋を支給。ポスターをÅ3クリアファイルに貼り、掲示板の縁にビニールテープや画びょうで固定するよう要請した。対象者にはお詫びした。総務省と相談し問題ないと判断した』とのことです。
質問者:
なるほど、ちゃんとしたところに貼る人は早いもの順だったということなんですね。
筆者:
掲示板を増やすことはお金がかかりすぎるので、最低限の金額で済ませようとしたという事なのだろうと思います。
質問者:
しかしどうしてこんなにも立候補したのでしょうか……。
これまでの倍以上の方が立候補するだなんて……。
筆者:
主な“元凶“とも言える存在はNHK党の立花氏です。
「都知事選は注目度が高く、宣伝効果は数千万円に匹敵する。300万円を支払う価値はある」
などと発言し、自党以外からも立候補を事実上呼び掛けていたのです。
特にNHKでの政見放送は1人当たり5分30秒の枠で計2回放送されることが、広告として「それだけの価値がある」としているようです。
これまでも政見放送中に服を脱いだり、不適切な言葉を連発したりするなど、選挙活動とは言いがたい過激な内容が散見されましたが、今回はそれがさらに加速したのです。
今回は過去のデータを基にするとNHKの政見放送の時間は11時間24分にも上ると言われています。
質問者:
なんだか可笑しなことになっていますね。
本来政治家を選ぶための選挙の筈なのにどういうわけか売名行為やビジネスみたいな感じになってしまっているというのが……。
◇「違法ではない」と「やっていいこと」はイコールではない
筆者:
立花氏は「違法でなければOK」と言う発想の下で斬新なやり方を駆使してお金集めをしています。
NHK党は団体への寄付者が自身で作製したポスターを掲示板に貼ることができるというシステムを作り出し、公認候補の新人19人、推薦候補の新人5人の合計24人分のポスターの領域を確保しました。
その結果凹の字形にほぼ同じ図柄のポスターが24枚並ぶ異様な掲示板も出現しています。
「カワイイ私の政見放送を見てね」
「竹島は日本の領土」
「すべての拉致被害者をすぐに返せ」
「公金チューチュー 東京都」
候補者とは全く関係のない全く同じポスターが張られています。
X(旧Twitter)などで検索してみればその異様な図が見て取れます。
それは「恐怖」や「狂気」すら感じられるほどです。
良いことを言っているから良いというわけではなく候補者のために掲示板はあります。政治主張をしたいのであれば新聞の意見広告にでも出せばいいですしX(旧Twitter)を使えばいいでしょう。
質問者:
本当に自己主張が強すぎと言う感じですね……。
筆者:
立花氏によると、同団体に寄付すれば、都内に約1万4000か所ある選挙ポスター掲示板のうち1か所を選んで、自身で作成したポスターを貼れるようになるそうです。
デザインや内容は原則、寄付者の自由で、自分や知人の氏名、犬の写真でも掲載できるということのようです。
寄付額は5月までは1口5000円以上、6月以降は1万円以上、6月20日以降は3万円以上の寄付でポスターを1枚張ることが出来るようです。
立候補人数は24人のために33万6千ヶ所最大販売できます。1口5千円として、16億8千万の収益も理論的には可能ですね。
24人だと供託金は7200万円なので5000円なら14400口を超えて販売できれば利益が出ることになります。
※立花氏によると21日現在「ポスターは5000円コースは約850か所、1万円コースは約150か所、3万円コースは約25件のお買い上げ」とのことでポスター掲示のための寄付のみでは赤字のようです。
質問者:
供託金の300万円が「安い」と言うのは恐ろしいことですね……。
これって選挙法違反にはならないのですか?
筆者:
総務省によると、
『選挙ポスターは他候補への応援や虚偽の内容でない限り、原則として内容は自由。販売行為は公職選挙法の想定外で、禁止規定はない』
と事実上の「違法ではない」との判断が出ています。
質問者:
NHK党はビジネス以外にどういった目的があるんですか? 一応は政治団体ですけど……。
筆者:
立花氏は「NHKをぶっ壊す」ために、NHKの政見放送をジャックする狙いがあったと主張しています。
「これは確かに都知事になろうと思ってやっている活動ではありません。しかしながら、選挙というのは政治的な目的を達成するためにやるわけですから」とも話しています。
ただ、NHK党のやっていることは世間的見てプラスに捉えることは無く、
衆院補選15区のつばさの党のような明らかな違法行為ではないものの、
その主張が受け入れられないことは明らかだと思います。
「やはりビジネスが透けて見える」
ここに尽きると思います。
質問者:
この対策としては供託金を上げるのがベストなのでしょうか……。
筆者:
GNI(国民総所得)比率で見た場合の日本の供託金は、これでも世界で一番高額になっています。そのためにこれ以上上げてしまうと立候補がしにくくなってしまいます。
僕はポスターを張る場所を減らすことがまず単純かつやりやすい方法だと思います。
選挙投票日の投票場所と期日前投票のポスター掲示板だけで十分だと思います。
東京都では期日前投票所が317か所、当日の投票場所合わせても3000カ所程度だと思います(当日は何か所か調べても不明でした)。
また、ポスターを1パターンのみに限る事前届出制度によるデジタル式にすることで張る手間も省きます。
そもそもポスターを張るだけで組織かボランティアが必要であり一般人には高いハードルになっていましたからね。
選挙公示から張り出しまでちょっと時間が空くかもしれませんけどね。
質問者:
なるほど……。統一にしてデジタルにすれば少なくともポスター場所の販売は阻止できますね……。
筆者:
いずれにせよ「違法ではない」と「やっていいこと」とがイコールになってしまっていることが問題だと感じます。
◇「不快なポスター」でも取ってはいけない
質問者:
他の人もなんだか文化祭での部活やクラスの催しを貼っているような感じがしますね……。
筆者:。
そのレベルならまだいい方です。
諸派新人の河合悠祐氏は「表現の自由への規制はやめろ」などスローガンを載せ、
女性の猥褻な変態ポスターを掲示しました。
都の迷惑防止条例違反の疑いで警告し、陣営はその後、ポスターの撤去をしたということがあったようです。
質問者:
それは酷い……。見つけた人が撤去したらダメなのでしょうか?
筆者:
亀井正貴弁護士によると、
『選挙ポスターは本来、自己の政策や考えを披歴する場。卑猥であったり、下品な内容を掲出することは本来の趣旨とは異なるが、選挙運動、政治活動の自由から明らかに法律違反だと断じることはできない。
ただ、全裸に近い女性の姿を掲出しているものもある。小中学校の通学路にポスターの掲示板がある場合もあり、子供たちへの悪影響など考えるとこうした表現に怒りを覚える方もいると思う。だからといってポスターを傷つけたり、はがしたりするのは選挙の自由妨害罪に当たるので、注意しなければならない。』
ということで、「変態ポスター」を見つけても勝手にポスターは剝がさず、警察に通報することがベストな選択肢のようです。
質問者:
しかし、「表現の自由」って何でもしていいわけじゃないですよね?
筆者:
ここが一番残念なことで、つばさの党もそうですが「自由=なんでもしていい」と誤認しているんですね。
「自由」というのは「他者の権利を侵害しない程度において」という絶対的な前提条件があります。
それを履き違えてしまっているか理解していないのか、公序良俗に反する行動をしてしまっているということです。
◇“日本人弱体化”の現実
質問者:
しかしこれまでも同じ制度だったのにも関わらず「突然」とも言っていいぐらいとんでもない行動が選挙で増えていますよね……。
一体、日本はどうしてしまったのでしょうか?
筆者:
ここからは僕の独自の分析なので100%真に受けないで欲しいのですが、
日本人の経済的貧困(実質手取りのマイナス)に伴う倫理観の欠落が関係していると思っています。
児童虐待防止全国ネットワークによりますと児童相談所での虐待相談数が平成22年は5万件ほどだったのが、平成27年に10万件を突破、令和2年には20万件も突破しています。
これは同じ家庭の重複もあるかもしれませんが、少子高齢化で子供が激減している中でこの増え方は異常だと言えます。
やはり生活に余裕が無いと倫理観が欠如し、そしてそれらが巡り巡ると、お金を持っている人でもやっていいこととやっていけないことの境目が分からなくなってしまうのです。
日本人全体が経済的貧困に伴って弱体化しているというのが僕の分析です。
質問者:
お金を持っていても自己顕示欲や地位保全のために凄い方っていますものね……。
筆者:
また、今の国会議員の裏金を納税せずに堂々としているところも倫理観の崩壊といっていいと思います。
ザル法でありながら「違法でないからOK」と言う発想もここに根源があると思います。
国のトップに存在している模範を示すべき人たちが“モラルハザード”のようなことをしてしまえば、下の民もおかしくなっていっても不思議では無いです。
勿論倫理観が崩壊した庶民と言うのは少ないと思うのですが、
それでも大迷惑な行動をしてしまえば国全体の損失にもなりかねませんからね。
◇“悪い展望“を阻止するためには?
質問者:
今後はどのような形で法整備がなされると思いますか?
筆者:
今後立候補のハードルを上げていく可能性が一番悪い展望です。
選挙の事前手続きを増やしたり、供託金を増やすなどの施策は最悪と言っても良いでしょう。
今の時点ですら「特権階級貴族の遊び」と化している選挙がさらに難しく規制が厳しくなれば庶民が立候補することが不可能になります。
僕は、政見放送、ポスター、街宣を全て廃止し、ネット特設サイトで各政策項目について指定して話せるようにすることが良いと思います。
特設サイトを見て投票するのを当たり前にする(それ以外での動画サイトの掲示、広告で収益を得ることは認めない)ことが大事だと思います。
ただ、僕の願望とは真逆の方向性に行きそうなのが恐ろしいですね。
質問者:
倫理観を取り戻すためにはどうしたらいいのでしょうか?
筆者:
やはり政治家を正すことでしょう。上がしっかりしていないと庶民もままならないと僕は感じます。
庶民の僕たちの中で気づいた人から声を上げて政治家を徹底追及していかないと、
「あれぐらいしてもいいんだ」
と倫理観が欠如した人が増えていくばかりだと思います。
勿論倫理観が欠如した庶民を正すことも大事ですが、まずは政治家を追求しないことには始まらないと思います。
そうしなければ経済的回復と言うのも望めないと思いますからね。
根本治癒を行わなければ「第二、第三の立花氏」「第二、第三の変態ポスター」が出てくるだけだと思います。
質問者:
地道な活動かもしれませんが仕方ないですよね……。
筆者:
社会正義が失われればもうそこには「修羅」しか残りません。
倫理はそのためのストッパーだと思っているのでこれ以上壊れないような言論をこれからも心掛けていこうと思いますね。
という事でここまでご覧いただきありがとうございました。
今回は東京都知事選挙で「ビジネスの介在」「ただの売名行為」「表現の自由の押し付け」が起きているということ。
それらの倫理観の欠如した行為は経済力の低下と模範となるべき政治家がモラルハザードを起こしていることが原因ではないのか?
という事をお伝えさせていただきました。
今後もこのような時事問題や政治・経済、マスコミの問題について個人的な解説を行っていきますのでどうぞご覧ください。