使わないとズレていく
いつの入院の時だったか記憶が定かではないが、1歳半くらいの男の子が入院してきたのが思い出される。
お母さんにずっと抱っこしていた男の子は、斜視の手術のための入院だった。
斜視は、片方の眼が見る対象物と違う方向を向いてしまうものである。
原因はいくつかあるが、この男の子の場合は、眼の筋肉が原因だったようで、一泊の入院で済む手術だった。
男の子は、入院中泣くことなく、とてもおとなしく、手術の翌日には退院していった。
さて、斜視に原因に、左右の眼の視力差が大きことによるものもある。
視力のいい眼で見ることが多くなり、視力の悪い眼を使わずに、瞳がずれて起きるものだ。
その場合には、眼帯やアイパッチを視力のいい眼に付けて、視力の悪い眼を意図的に使い、両目でものを見る両眼視ができるようにトレーニングをする。
実は、私がこれによる斜視になっていった。
2回目の入院その手術により、視力が右眼0.4、左眼1.0となった。
視力差に加え、右眼は中心視野の眼底が歪んで、対象物をまっすぐ見ることができなかった。
そのため、日常的に左眼だけで見るようになり、右眼をほとんど使わなかったため、右眼の瞳が徐々(じょじょ)に外側へずれていく外斜視に(がいしゃし)になっていった。
それなら、左眼に眼帯を付ければいいのではないかと、先に述べた話を思いだす人もいるだろう。
しかし、私の場合には、眼鏡で矯正しても、右眼の視力が0.4であり、またまっすぐ対象物を見ることができず、右眼だけで生活することが難しかったので、片目を隠して斜視に対応する方法は使えなかった。
ということで、今後使わないと瞳がずれていくという人体の不思議を体験していくこととなった。