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憧れ

幼少期 僕はヒーローに助けられた。




とてつもなくどでかい蛇に、喰われそうになっている時に、ヒーローに助けてもらった。




その日から、僕はヒーローを目指すようになった。




どんな形でもいい。




誰かを守って、




戦って




そして勝つ。




そんなヒーローに憧れていた。




でも、そんな機会は訪れなかった。




子供の頃から、何年も待ち続けて、今では16歳…




特殊なパワーなど、自分になんか貰えるわけが無かった。




いきなり雷に撃たれて、電気パワーを手に入れたり、体を改造されて、強靭な肉体を手に入れたり、


そんなことは無かった。






夢を見た。




自分が街のビルを飛び回り。


とてつもなくデカい敵をフルボッコ。




まるで馬鹿みたいだ。




学校のチャイムの音で、目を開く。




――――




「ふわぁ…」


誰にも気づかれないよう、あくびをする。


「ねぇ!陽介!」


俺のことか…


俺は篠原 陽介 高校生だ。


「陽介さぁ、また授業中寝てたしょ?」


彼女は木之内 楓 同じく高校生だ。


「まぁ…あんな授業聞くより…夢見てたほうが楽しんだよ。」


「夢なんか見てないで、現実を見なさいよ。」


俺の心に突き刺さる。


「ごめん…」


謝罪する。


「いや、別に謝ってって言ってるんじゃないわよ。ただあんたが心配ってだけ。」


まあ高校生だし、勉強のことも気になるだろう。


彼女は親友だ。昔からずっと一緒にいる。


「ありがとう。でも俺は…」


ヒーローに…なりたい…!


「別にあんたの夢を否定する気なんかないわ。でも、将来のことも考えてほしいってだけ。」


楓は、俺の夢を知っている。


でも否定しない。


肯定もしない。



彼女の容姿は整っていて、金髪、髪は後ろで結んでいて、正直かわいい。


俺は昔からそんな彼女のことが好き…だけど、俺には多分失望している。


これが、小学生の頃であったなら、俺は元気で、壮大な将来の夢を持つ少年であっただろう。


そのころなら、彼女の好意もあったかもしれない。


今はどうだ?


高校生にもなってヒーローになるとかほざいて、ろくに勉強もせず、彼女の心配をかける。


クソだ。


「まあ、あんたがほんとになりたいってなら、私は応援するわ。」


優しい言葉をかけてくれると、心に染みる。


「次、移動教室だから!準備して!私トイレ行ってくるからー。」


「はぁ…」


もう諦めて、勉強に専念したほうがいいのか…。


母親も父親も言わないけど、心の底では勉強してほしいって思っているに違いない。




――――




「体育かぁ…」


「何よ?嫌なの?」


二人並んで体育館までの道のりを歩く。


「いや、嫌ってわけじゃないけど…寝てて体がだるいあとに動きたくないなってだけ。」


「自業自得じゃない。」


正論…


「やっぱ体育はだるいねぇ。」


「私は好きだけど、体動かすの。」


楓は昔からそうだった。


運動神経抜群で、みんなから好かれる。


でも俺は違った。


頭は良かったけど、みんなからは好かれなかった。


でも、彼女はそんな俺に手を差し伸べてくれた。


「私と帰らない?」


そう言ってくれた。


準備体操。退屈で仕方ない。


準備体操をしても怪我をするやつはどっちにしろするんだ。


意味なんてない。


「今日はマラソンだ!学校から雄星公園までの道を行って帰ってくる!しっかりした靴を履いてくるよう言ったはずだが持ってきていないやつはいるか!!?」


まずい。持ってきていない。


前回の授業休んだんだった…


「ねぇ、陽介。」


「何?」


勘づいたのか…?。


「あんた靴忘れたんでしょ。」


「うん…そうだけどなにか悪い?」


「やっぱあんたには私がついてないとだめね。ほら!」


楓は俺に何かが入った袋を投げてきた。


なにこれ。


「靴…?俺の運動靴か…?」


「私が持ってきてあげたのよ!あんたの家まで行って!」


は?


今何つった?


俺の家まで行ったって?


今までただの一度も入れたことなかったのに…。


「え、じゃあ見た?」


玄関にはbaby時代の俺の姿がある。


見られるのはまずい…


「見たわよ。小さい頃のあんた。」


終わった。


助けてヒーロー。


「かわいかったわよ。とっっってもね!」


まじか。


まあ赤ん坊だし、何してても可愛いだろ。


「終わった…記憶から消してくれ。頼む。」


一生に一回のお願いだ。


ほんとに


忘れてほしい。


「えーー。なんでよ?」




そりゃ、はずかしいからだよ。




「一生に一回のお願い!ここで使わせて!!!」




「え、こんなことで使っちゃうの?私、まだ消さないとは言ってないわよ。」




確かに!ってことは忘れてくれるのか!




「よかったー。忘れてくれるんだな。ありがとう!楓!」




一件落着…




「消すとも言ってないわ。」




はぁぁあ!?




「おい!!!なんだよ!もーーー。」




くっそ!




「ちょ、あんた!声でかいわよ!」




「篠原!木之内!!何を話している!!準備運動として、グラウンド10周だ!!!!!」




えええええええぇえぇえぇぇぇえ!!!!!!????




「もおおお!!あんたのせいよ!!!」




ごめん。楓。


後でジュース欲しいだけ買ってやる。




――――――




俺らはこの時間はグラウンドをずっと走ることになった。


休み時間を削って、マラソンをする。




俺の唯一の休息の時間が…




まあ俺のせいなんだけどさ。




まあちゃちゃっと終わらせて二人で休もう




――――――




「はぁ…もう、あんたのせいよ。私は悪くないのに。」




ほんとにその通りだ…




「ごめん。後でなんでも言う事聞くから…。」




この言葉が、俺の人生を狂わせるなんて…思ってもいなかった。 なんてね




「ふーん?なんでも…ね?」




やらかしてしまった…




「じゃあさっさと終わらせて、言う事聞いてもらうから。」




一周目は楽勝。


他愛のない話をして、二人で走った。




二周目は少し息がやばい。


まだ話をする余裕がある。




三周目は死にそう。息をするために空気を吸ったら喉というより、肺が痛い。




楓はまだまだ余裕そう。




四周目、休憩したら体力が足が一気に痛くなると楓からアドバイスを聞いたので、途中でトイレには行かない。


話す余裕など、ない。




五周目は頭がクラクラしてきた。肺の痛みにも慣れてきた。


少し話す。




六周目は……しぬ




七周目は自然と力が湧いてくる気がした。


楓とも結構話す。




八周目は最高。力が湧きすぎて怖い。


九周目は少し疲れを感じる。




ラスト、そう考えると疲労が一気にドンときて。死にかける。


楓が居てくれたから、俺は生きている。






先生許さん。マジ殺す。




いや、楓は俺に対して思ってるのか。


―――――――




教室に戻り、いつも通り自分の席に座っていると一人の男が声をかけてきた。




「よーすけ!グラウンド十周おつー!!」




こいつは篠山 裕泰(しのやま ゆうた)…俺の幼馴染だ。


こいつとは小さい頃から仲が良くて、それから高校までずっと一緒だ。




「はぁ…マジで地獄だったよ。」




「だろうな!俺でも流石にきちーし。」




「じゃ!マラソン頑張れよー」




「おう。頑張ってくるわ…」


――――――


「じゃあ、始めろ。私はここで、片平先生が公園で待機しているから。」




「はーい。」


「うっす。」




僕たちは走り出した。




なんとなく、息の仕方が分かってきた。


行ける。これは!




「ねぇ、陽介。」




「ん?」




「あんた、さぁぁああああ

あァァァアぁぁああ

あああ

ああ

いあ

ああああ゛」




かえ…で?






「どうした!?どっか体悪いのか?」




「ゔぅぁぁああああああ。


ぁぁあ


ああ





ああ


ああ











おばえば゛ヒーロー゛になりたい?」




それは…




「もちろんだ。楓…いや、お前…楓じゃない。」




こいつは誰だ?




何なんだ?




怪物…?




「そうか。なら死んで?」




楓の優しい声で言われる。




「楓の姿形で、そんなことを言うな!この怪物め!!!!」




とっさに近くの石を握る。




「そんなの…ひどどどぉいわよぉおおお」




身体が崩れ、中から異臭を放つ怪物が出てきた。




「うっ…」




赤子のような顔に、太ってぶよぶよな身体。ヌメヌメしている液体がかかっている。




「この怪物が!しね!しね!」




石を投げつける。




「いたたたいなぁあああ」




こっちに歩いてくる。




やばい。




死ぬ。




殺される。






こいつ、俺を食おうってのか。




「やめろ。おい。やめろぉおお!!!」




「ヌパッ」




ギリギリ避けれた。


でも…


次は避けれるか分からない…!




「いただきまぁあああああすすすすす。 」




近くの木に生える枝を折り、ヤツに向ける。




「こい!」




怖い。


怖いけど、俺は…


まだ死ねない。




「ぴよぉおおおおんんんんんんんん。」




来る!走ってきたぞ!




「これでも食ってろ!」


そう言って俺はヤツの口の中に木の枝をぶっ刺した。


「ごっ…ぎげげげげげげげげげげげげげげげげげげげけげげげげげげげけげげげげげげげけげ」



よし!痛がってる!


「そんなに美味いか!この枝が!」


木の枝を捻るようにゆっくりともっと奥へ貫通させる。




「んごごこごごごごごこぉおおおおおおおおお」




ブシャァッ!っと痛々しい音がなり、ヤツの首筋から血が溢れ出る。


「少しはダメージを与えられたか?」



周りを見渡すと近所の家の窓から誰がが見ている。


この家も、そこの家も、あの家も…


全部こっちを見ている。


助けを呼ぼうとしないのか?


「まって…まてえてててててててててててててて!」


は?


「ちょ!掴むなぁ!?このクソ野郎!」


「やだぁあああああああああああ食べる!ごはんんんんんんんんんんんんん!」


「ご飯だって!?俺のことを喰うつもりかよ!待て!」


意思疎通は少しはできる…俺の話は通じないみたいだけど…


首から大量に血が吹き出してんのに倒れる気配がない。


やっぱ怪物だ!こいつ…!!!




―――――


3分前


マラソン開始地点


磯部視点


「行った…か。二人は仲がいいみたいだし。大丈夫だろ」


彼は体育教師 磯部 遥斗 根はいいやつだが、生徒には嫌われている。


「ふぅ〜ごめんなさい!磯部先生!遅れたわ!」


ん?木之内…だよな?こいつは…


さっき木之内なら篠原と…


「あれ?陽介はどこに行ったのよ!サボり?私のこと巻き込んでおいて!?」


この話し方は間違いない。「木之内楓」本人だ。


ってことは…さっきの木之内は?


「どうしたのよ?磯部先生。」


「いや…それがな…お前にそっくりな奴がもう陽介とマラソンに行ったんだよ。」




沈黙が数秒流れる。




「え?どうゆうことよ…?私妹とか姉いないわ…弟はいるけど…」


それは知っている。家庭調査で。


「知っている…いや似すぎていててっきり本人かと…」


いや、もしかして。


それ以外に考えられない。


「もしかして…」


木之内も何か勘づいたようだ。


「私の生き別れの双子ってこと!!!?」


いや、違う!!!とは言い切れない…が、可能性としては少ない。


「最近、変な怪物が出てきたらしい。確か擬態能力を持っていて、人や物の姿に化ける。まだ被害は出ていないそうだし、ただの噂として処理されているみたいだが…」


その線が少しはある時点で、リビング・パーソンを呼ぶしかない。


「そう!絶対それよ!私行ってくるわ!陽介が危ないもの!」


その心意気はいいと思うが、なんの力も持たない一人の人間が行ったところで状況は変わらんどころか悪化する一方だろう。




「リビング・パーソンを呼ぶ、そうしたら…」




時すでに遅しってこともある。


発見されたら死体の状態。




そんなことは考えないようにしよう。




「発見されたら…もし死んでたら…」




いつもの木之内とは思えないほど、元気がない。


「大丈夫だ。必ずリビング・パーソンが助けてくれるさ。」




―――――




このままだと、喰われちまうよ…!


というか、もう血が止まってる。


驚く程再生能力が高いんだな。こいつ。




「イタイノイタイノォ…飛んでいけけけけけけけけけけ」




周りの人達は通報してくれる気配がないな。


助けは…望めない。


もし先生が異変に気付いてくれればいいんだが…




ん?あそこの家の夫婦、なんかもってる。


ありゃ猟銃か!


撃ったれ!こうゆうやつは大体頭狙えばころせる!




「んんん?僕のぉことぉおおねらってたりするぅうううううう?」




きずかれた。逃げろ!




耳を塞ぎたくなるほど大きな音が響き。


奴の頭が吹っ飛んだ。




「やった!!!ないす!」




よし、速く逃げよう。


生きてたとしてもターゲットは俺じゃなくあの夫婦だ。




「ぼぉくのことぉおお、いまぁ、うったよねねねねねねねねねね?」




夫婦の方へ走っていったぞ!逃げよう!




あれ?


なんで…


こんな時に。






俺はヤツへ、石を思いきり投げた。

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