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その5

     *


【2016年4月1日】


「おや?」と、ある日ある時ある海のうえで、ある老人が言った。「連れの先生は眠ったのかね?」


 するとこちらも、ある日ある時ある海のうえにいたある女性も、「ええ、そうなんですよ」と言って応えた。「なんやかんや話してるうちにグッスリですわ」


「あんたは大丈夫なのかね?」


「あたしはホラ、元気ですから」


 それから老人は、いちど“先生”の寝顔を確かめてから、彼女にたばこをすすめてみたのだが彼女は、


「すんません、だいぶ前にやめてまして」と、いつものはにかみ笑顔で応えた。


「いやいや、別に構わないがね」


「お気持ちだけありがたく頂いときます」


「吸ってもいいかな?」


「どうぞどうぞ」


 それから老人は、たばこに火を点けると、神戸と大阪に行ってしまった二人の息子の話を始めた。


「上のとはもう八年、下のとももう六年会ってなくてね――来年の正月には帰って来るかも知れないけど」


 いや、一度だけ帰って来たことがあったな。と老人は言った。上のが神戸に来いと言ってくれているが、自分の家でないと生きた心地がしないし。とも。


「海も、違うからね」


 たばこの小さく燃える音がして、彼はゆっくりとそれを吸った。


 そのちいさな目は、水平線の向こう側に見える星空を眺めている様子だったのだが、星がきらめいたせいでもあろうか、ふと出しぬけに、


「しかしアンタら、なんでこんなところに?」


 と、女性に訊ねた。


 取材がどうこう言っていたらしいが、最後まで付き合う必要もないだろう? と。


 すると、そう訊ねられた女性は、すぐに本当のところを答えようとしたのだが、しかしそれでは、あまりに失礼に聞こえるかも知れないと想いなおすと、


「いや、ほんまにただただ取材ですよ」と、ふたたびの笑顔で応えた。「あとは、そこのセンセの気分転換ですね」


 キューイ。


 と、“大将”の泣くこえがした。――ような気がした。


“ウソを吐くな。”


 と、言われているような。――そんな気がした。


 老人もそろそろ眠りに落ちようとしているのだろうか、たばこの残り火が星のように見えた。


 女性は、その残り火のせいだろうか、それとも、星がきらめいたせいでもあろうか、正直な答えの代わりに、ある小説家から教えてもらったという奇妙な歌を――誰にも聞こえない声で――口ずさんでみることにした。


     *


 If I had just one last wish.

 I would like a tasty fish.


 If we could just change one thing.

 We would all have learned to sing.


 Come one and all man and mammal

 Side by side in life's great gene pool.


     *


 かたわらから聞こえる“先生”の寝息が、ちょっとばかり、かわいそうな気がした。


     *


 So long, so long, so long, so long, so long

 So long, so long, so long, so long, so long


 So long, so long and,

 Thanks for all the fish.


     *


【2019年7月27日】


「右手?」


 と、ソファから起き上がりながら、日向康花は訊き返した。彼女の前には、手洗いとうがいを終えたばかりの息子、和康の無表情な顔が置かれている。「だれの右手がどうしたって?」


 彼女のこの質問に対して和康は、その無表情を崩しもせず、「“マーリン”の右手だよ」と答えた。「アーサーがくわえて持って来たんだ」


 すると、和康のこのことばに、「“アーサー”?」と、彼のうしろに立つ伊純が訊き、「近所のボーダーコリー」と康花は応えた。


 そうしてこんどは康花が、「“マーリン”になにかあったの?」と、和康に訊き、「わるいおんなの子に連れて行かれて、大きな岩のしたに埋められちゃったんだ」そう息子は答えた。「右手だけが外に出ててさ、それをアーサーがくわえて来て、それで“マーリン”が――」


「ちょっと和康、オデコ出してごらん」


 そう康花は言うと、手を伸ばし、彼の額にかるくさわった。「ちょっと熱があんのかな? すぐパジャマに着替えてベッドに入ってなさい」


「でも“マーリン”が――」


「分かった分かった。食事はおかゆさん作って持ってってあげるからさ、“マーリン”の話はそのとき聞いてあげるわ」


「でも“マーリン”が――」


「分かっ――」


 と、康花はすこし怒鳴りそうになったのだが、そんな自分を、誰かが残して行ってくれた“右手”でやさしく抑えると、


「うん。でもね――」と、声の調子をさげながら続けた。「アンタが風邪ひいたら“マーリン”も悲しむでしょ? だからいまは、着替えて、ベッドに入ってちょうだい」


 すると、このことばに和康は、まだ何か言いたげではあったものの、手にした“マーリンの右手”を確かめると、「分かった」と言ってうしろを向いた。


 部屋を出て行こうとする彼に向けて康花は、「ごめんね」と言った。「おかゆさん、出来たら持ってってあげるからさ」


     *


【同年。同月。同日】


 台所に、ホットケーキのいい匂いがした。


 その時、樫山泰仁と三尾漱吾の食後の一局は、最終盤を迎えようとしているところだったのだが、ピーッという炊飯器の音にふたり同時に手を止めると、先ずは樫山が、「あれは食べるなよ」と、漱吾に釘を刺した。「僕の三日分の朝食だ」ここでの彼の手は7一金である。


 すると漱吾は、「食べやしないよ」と、腹の具合をたしかめながら答えた。「でも味見ぐらいはいいだろ?」6三歩打で返す。


「ダメだ。食費取るぞ?」――8一金。


「ケチ臭いなあ、大作家先生が」――6二歩成。


「大作家じゃないし、収入はお前のほうが多いはずだ」――3三金。


「そうなのか?」――6三角打。


「多分な」――3二玉。


「ネコのメシ代でも削れば?」――5二と。


「それは出来ない」――7一金。


「女にはとことん弱いな、お前は」――4二と。


「なんだそりゃ?」――同玉。


「あの子も女の子だろ?」――4五桂。


「ああ、そういう意味か。僕はてっきり……そう言えばフェンチャーチは?」――6二金。


「さあな……ほら、これで詰みだ」――3三桂成。


     *


【同年。同月。同日】


 ブブッ。


 と、スマートフォンの着信音が鳴った。


 このとき康花は、ひとりきりになったソファでうとうととしかけていたのだが、すっかり暗くなったリビングに灯りをともそうと、その重たくなったからだを起こすと、ソファのどこかにあるはずの蛍光灯のリモコンを探し出そうとして、結局見付けることが出来なかった。


 そこで彼女は、これまでどおり、いろいろなことを、いろいろなやり方であきらめると、カーペットのうえに置きっぱなしにしておいた、スマートフォンを手に取り、相手を確認し、ほんの一瞬だけ息が詰まりそうになりはしたものの、そのまま、ソファに寝転んだすがたのまま、その通話ボタンを押した。


「もしもし?……そうね、いまどこ? うん?……ううん、友だちなら帰ったわよ。 あ、たださ、ちょっと……いいや、飲み過ぎたとかじゃないんだけどさ……和康がちょっと具合わるいんだ。 え?……いや、熱があって、さっきもおかゆさん残しちゃってさ。 うん。だからさ、あんたはそっちのお友だちに送ってもらうかなんかして――、え? そんなの知らないわよ。…………だったら歩いて帰って来てよ。和康ひとりにしておくわけにもいかないでしょ? ふん……ああ、それかいっそのことご自慢のチームで走って来ればいいんじゃない? いい年こいたおとながさ、日がな一日野球やってお酒飲んでさ…………それはあんたも同じでしょ?」


 そう言って康花は電話を切ると、スマートフォンのあるほうの手を高く振り上げたのだが、その拍子に、先ほどは見付からなかったはずの蛍光灯のリモコンが、彼女のお尻に当たっていることに気付き、その振り上げた手をゆっくり下ろすことにした。


 コップに残っていたウイスキーをひと息に飲み干した。


     *


【同年。同月。同日】


 チリン。


 と、公園の裏のとおりで、小さな鈴のおとが聞こえた。


 ちょうどこのとき伊純は、千駄ヶ谷の友人から届いていた不在着信に、折り返しのメールを打つべきかどうか悩んでいるところだったのだが、その鈴のおとにうしろを振り向くと、一匹の白ネコが、こちらを向いてあくびをしていることに気付いた。


「あれ?」そう彼女はつぶやくと、「あんた、お兄さんとこのネコちゃんじゃない?」と、彼女に訊いた。


 するとその白ネコ・フェンチャーチは、開けていた口をゆっくり閉じると、


「にゃごん?」と、まるでかの名探偵が、親友のワトソン君に向かって問い掛けるような口調で訊いて来た。


 が、もちろん伊純にネコ語は分からないので、続けて彼女は、


「やっぱそうよね?」と言いながら、そのネコのほうへと近付いて行った。「その鈴とペンダント、フェンちゃんじゃん」


「にゃあーあん」と、今度は、喉元をこちょこちょされながら、気持ちよさ気に応えるフェンチャーチ。


「でもなんでアンタこんなとこにいるの? お兄さんのお家から出ちゃダメじゃない」


「にゃあー」


「どうしよっかなあ? あたしもうちに戻るか詢子のとこに行くかで悩んでたのよね」


「にゃふん」


「あ、じゃあちょっと待ってね」伊純はそう続けると、しまい掛けていたスマートフォンを改めて取り出し、「取り敢えず、お兄さんに電話してみるわ」と、言った。


「にゃーん」


     *


【同年。同月。同日】


 日向康花は、よるの底のような息子の部屋に入ると、小さなフットライトを点け、そのまましばらく黙って立っていた。


 ベッドからは和康の小さな左足がはみ出しているのが見えた。こんやの彼も、ゆうべまでの彼と同じく、小さなベッドの右半分を空け、眠っているようであった。


 すると、この事実に気付いた彼の母親は、彼の体を持ち上げ揺すると、それでも無言のまま、彼女の息子を、起こそうとした。


「お母さん?」ふっと目を開いた和康が言った。「どしたの?」


「あんた、なんでベッドを半分空けて寝てるのよ?」


「なんでって?」


「あんたさっき、『“マーリン”は死んじゃった』って言ってたでしょ?」


「……そうだよ?」


「だったらなんで、そんなはしっこで寝る必要があんのよ」


「だって――」


「だってなによ? お母さん、ほんとにもう、ほんとにもう、ほんとにもう、こういうの、こういうの、こういうの…………もう、いつまで死んだひとのこ――」


「だって、“マーリン”がかえって来たとき、ベッドが空いてないとかわいそうでしょ?」


     *


【同年。同月。同日】


 ブー、ブー、ブー、ブー、

 ブー、ブー、ブー、ブー、

 ブー、ブー、ブー、ブー、ブー、カチャ。


「あ、もしもし? お兄さんですか? 私です。佐倉伊純で……って、なんでお兄さんの携帯にあんたが出んのよ、お兄さんは? お腹こわしてトイレ?…………海に帰ったクジラ?……なんで海に帰ったクジラのお肉をあんたらが食べてんのよ…………食べてない? 食べたのは別のクジラ?……ごめん、漱吾、あんたほんとなんの話してんの?

 え? あー、じゃあまあいいけどさ。 そしたらお兄さんにさ、伝言を……ってちょっと、お手洗い中のひとに電話って…………あ、どうもすみません、お兄さん。伊純ですー。

 え? あ、はい、ほんとすみません、漱吾のやつが――え? あ、で、えーっと、実はいまそちらのフェンちゃんがお外に出ててですね…………あ、やっぱり?

 えーっと、それで……いまは詢子のマンションの……ああ、はい。そこです、そこです。そこの公園です。 あ、そうですね、そうしていただけると――はい。 あ、じゃあ私もフェンちゃん連れて詢子のところに行きますんで、そこで合流――と。 ええ、はい。それじゃあ後ほど――え? 漱吾が?……さあ…………あー、じゃあ一応代わってもらえますか?」


 そう言って伊純は、足もとにすり寄って来るフェンチャーチを抱え上げると、公園の柵を越え、いちばん手近のベンチへと腰を下ろした。


「はいはい。あのね漱吾、ふつうお手洗い中のひとに電話なんてまわさな…………「大丈夫か?」ってなにがよ? え? バカねー、電波かなにかの加減じゃない? この伊純さんがさー…………あんた、ほんとバカなんじゃない?」


     *


【2011年3月11日14時46分】


 宮城県牡鹿半島東南東沖130km、深さ24kmを震源とする東北地方太平洋沖地震は発生。地震の規模を示すマグニチュードは9.0。発生時点で、日本周辺における観測史上最大の地震であった。


 震源域は広大で、東日本の各地で大きな揺れや津波・火災などを引き起こし、死者・行方不明者は東北地方を中心に12の都道府県で2万2312人 (2022年3月1日時点)――この数に震災関連死は含まれていない。


 建築物の全壊・流失・半壊は、公式に確認されているものだけでも40万戸以上。震災発生直後の避難者は約47万人 (ピーク時)。停電世帯は800万戸以上、断水世帯は180万戸以上。


 2022年11月1日時点でも、その避難者などの数は3万1438人となっており、避難の長期化も大きな課題となっている。


 また、この地震の津波による影響で、福島県双葉町にある福島第一原子力発電所は、1 ~5号機で全交流電源を喪失。原子炉を冷却することが出来なくなり、1号炉・2号炉・3号炉で炉心溶融 (メルトダウン)が発生。大量の放射性物質の漏洩を伴う重大な原子力事故に発展、全世界に大きな衝撃を与えた。


 2012年4月19日、1~4号機が電気事業法上も廃止。2014年1月31日には、震災当日定期点検中であった5・6号機も、再稼働することなく廃止された。


 かつて「世界最大の原子力発電所」としてギネスにも認定されたこの発電所は、2023年現在、いずれの炉も廃炉作業の途上にあるが、使用済み核燃料の除去を要するその作業は、大変な困難を極めており、いまだ完了の見通しは立っていないようである。


 これらの震災と原発事故からの被災地の復興は、この国の未来をどのように描くべきかという大変重要な課題であるにも関わらず、現在の――いや、これ以上は止めておこう。


     *


【2019年7月27日】


「なんで分かんのよ?…………そうよ、康花と一緒だったのよ、そりゃ、瑛さんと令さんの話も出るわよ。 でもさ、でも、もう8年だよ? 大丈夫だって想うじゃない。大丈夫なはずだって想うじゃない。 康花は結婚もしたしさ、子どもだっているしさ、旦那さんだっているしさ……それなのにさ、あの……あいつさあ……」


 それから彼女は、数分だろうか数秒だろうか数時間だろうか、ほんの少しの間、海の中を往く二頭のクジラだかイルカだかのことを想い出すと、「もう8年だよ?」と、繰り返して言った。


「あんたもさ、あの日のことおぼえてるだろ? あたしと康花のふたりでさ、あのふたりに会いに行くんだってさ、バスの切符も買ってさ、お菓子もいっぱい持ってさ、目一杯おめかししてさ……してたんだよ。 そしたらさ、それ見たあんたがさ、「馬子にも衣裳だな」って笑って言ってくれたじゃない? 言ってくれたんだよ」


 フェンチャーチのしろい右手が、伊純の足に、やさしく触れた。


「あたしもさ、康花もさ、ほんとにさ、ほんとにさ、ほんとうにさ、いい子だったんだよ?」


 訴えるように、彼女は続けた。


「あたしたちさ、ほんとにさ、ほんとうにさ、ほんとに、かわいくて、いい子たちだったんだよ?」


     *


【2016年4月2日】


 キューイ。


「せんせ、せんせ……ほら、起きて……起きって…………って、おい! こら! 樫山! 起きろ!」


「……なんですか、もうちょっと寝かせてくださいよ」


「なあに言うてんねや、“大将”もう往ってまうで、いつまで寝てるつもりや」


「え?! ウソ?!」


「ウソやあらへん。お天道さんもとっくに高うなっとるやろ? ほんと、こっちが何度も何度も起こしたったのにヘラヘラヘラヘラ寝くさりやがって、どーせあの巨乳のお姉ちゃんの夢でも見とったんやろ? このドスケベエロメガネ」


「……見てませんよ」


「あーもう、隠さんでもエエって、こちとら誰がどんな夢見とるかまで分かるんやし」


「それはさすがにウソ――ですよね?」


「信じるか信じんかはセンセ次第やけどさあ、取り敢えず“大将”に挨拶のひとつでもしといでえな、マジで今生の別れってヤツになるかも知れんのんやから」


「通じますかね?」


「通じるも通じんもあっちの方が知性は上や、シンシに話したったらきっと分かってくれるって」


「じゃあ、ちょっと行って来ますよ」


「はいはい。ようけ話して来なさい」


     *


「やあ、おつかれ」


「あ、おつかれさんです」


「連れの先生、やっと起きたみたいだね」


「あ、もう、そうなんですよ。ほんと、毎度毎度クライマックスを見逃すひとでして」


「ま、疲れてもいたんだろう」


「昨夜も超新星爆発を見逃しましたしね」


「……なんだって?」


「あ、いや、こっちの話です」


「……昨夜と言えばさ」


「はい?」


「あんた昨夜、ワシが「なんでこんなところに?」って訊いたら、なんか言いにくそうにしてたよな――ありゃいったいなんだったんだい?」


「あー、やっぱ分かりました?」


「嫁さん含めて、女にはさんざん苦労させられて来たからね」


「多分……あー、やっぱやめときましょ、やっぱり」


「なんだい、もったいぶって」


「失礼に聞こえるかも知れませんし」


「かまわんよ、逆に気になる」


「じゃあ……多分、こう言おうとしてたんですよ」


「うん?」


「“ここに来たのは、あなたもクジラも、そろそろ消えてしまう種族なんだからだと想います。”」



(了)

《登場人物紹介》

 樫山フェンチャーチ:白ネコ、メス。2018年1月1日生まれの山羊座、A型。泰仁の飼い猫、と云うか、よきパートナー。



《作者注》

(その1)

 この短編は、拙作『千駄ヶ谷の中心で愛を叫ぶ( https://ncode.syosetu.com/n8003hm/ )』の第五話「ネコとクジラとユリノキ台のひょこひょこおじさん」を再構成してお届けするものである。

 そのため、本文だけでは登場人物の背景や関係性が分かりにくい部分も多数見られたため、無粋とは想いつつ、欄外に登場人物紹介を置くことで補うことにした。

 作者の力量不足と言ってしまえばそれまでだが、それでもやはり、本文中の流れをあまり壊したくないことなどもあり、読者諸姉諸兄のご好意に甘えるかたちを取らせて頂いた。何卒ご容赦のほどを頂ければ幸いである。

 また、同様の理由で、作中起こった不思議な現象 (突然現れる白ネコとか)や、突然出て来る奇妙な登場人物 (ウソくさい関西弁のお姉さまとか)の詳細などについても、敢えて省かせて頂いた。もしこれらの原因や人物の詳細をお知りになりたいと云う奇特な方がおられた場合は、前述のオリジナル版をお読みいただければと想う。



(その2)

 この作品は、そのタイトルからも分かるとおり、わたしの大好きな作家のひとり、J・D・サリンジャーの短編小説『コネティカットのひょこひょこおじさん (Uncle Wiggily in Connecticut)』の構成を大きくお借りしているし、同時に随所で、そのパロディーを盛り込ませて頂いた。

 なので、ほんらいならば、他人さまにお見せしてよい代物ではないのかも知れないが、そこはそれ、素人の手慰みとして、ご笑覧いただければ幸いである。



(その3)

 劇中、とつぜん奇妙な英語の歌詞が出て来るが、これは、こちらもわたしの大好きな作家のひとり、ダグラス・ノエル・アダムズのSFシリーズ『銀河ヒッチハイク・ガイド (The Hitchhiker's Guide to the Galaxy)』の、2005年公開の実写映画、そのオープニング・テーマソングである。邦訳して載せることも考えたのだが、あまりにもダサい仕上がりになってしまったため、原文ママで載せた。もし興味が湧かれたかたがおられた場合は、ご自身で訳されたり、前述の実写映画や原作小説をご覧いただければと想う。――すっごい面白いので。



(その4)

 最後に。

 今回の再構成に当たり、作品タイトルには、これまで敢えて外しておいた、“311”の文字を入れさせて頂いたし、本文中にも、こちらも敢えて外しておいた、これら災害の記録を、すこしだけだが、入れさせて頂くことにした。

 伊純や康花や当事者たちの気持ちを考えれば、残酷かつ不謹慎なことだったのかも知れないが、それでも、昨年12月に聞いたあるニュースが頭から離れず、敢えて入れさせて頂いた次第である。


 彼女たちへの謝罪の意味も込めて、ここで補足させて頂く。

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