第2話 お弁当なかま
公立桜ヶ丘高校、地名がそのまま場所を表すとこはよくあることだが桜ヶ丘という丘の上に高校が建っている。
駅からは20分ほどの徒歩かかり、住宅街を抜けると桜並木があり校門が見える。
ほのかも4月の入学式には感動したものだ。
真新しい制服に身を包み、校門が見えるところまで着たところで散り際の桜は圧巻だった。
これから新しい生活がスタートするのだと期待に胸を膨らませた。
しかし、2か月経った今その感動もどこへやら……。
「ああ、もう最悪。普段だって坂がつらいのに雨降ってるし~」
ほのかはひとり毒づく。
ローファーに雨水がしみている。靴下も濡れていることだろう。
「う~」
ほのかは赤い傘から曇天を覗くが、空が機嫌を直してくれる様子はなかった。
「それで~やっぱり2年のイケメンといえば!」
ざわざわとにぎわう教室、今日は雨が降っているので中庭組も教室で食べているので人口密度が高い。
只今、学生たちの憩いの時間のお昼休みである。
等間隔で並べられていた机も、あちこちで島をつくりそれぞれのグループがお弁当や購買のパンを食べている。
その中の5人組グループが、ほのかのいつも一緒のお弁当仲間である。
「2-4の近藤先輩っしょ!」
と一際声が大きいのが、江口綾といい高校に入って染めた茶髪を肩まで伸ばしていて、ミニスカに軽く着崩したブレザー、いわゆるイマドキの女子高生らしい少女である。
明るい印象とくるくる感情のままに動く瞳が印象的なこだ。
「誰だ、それは」
単行本を片手に無表情で切り返したのは、有栖川翼。
艶のある黒髪を腰まで伸ばし、切りそろえている。
黒目がちな瞳にこづくりなパーツ日本人形のような美少女の翼だからこそ似合う髪形だろう。
「私も知らないなあ」
翼のとなりに座り頭一つ分大きな白井瑞樹がジュースのパックを咥えながら言った。
バレーボール部で女子の平均身長よりかなり高い。小柄な翼と並ぶと対照的だ。
ショートカット、均整のとれた身体で運動部というのもあるのか活発な印象を受ける。
「うそー!なんでみんな知らないのよ!ほのかは知ってるよね!?」
「ほへ!?私も知らないけど……」
突然ふられほのかは箸に卵焼きを挟んだまま固まった。
「涼子さんは!?」
メガネのクールビーティ、真柴涼子は言い放つ。
「どうでもいいんじゃない」
涼子も瑞樹ほどじゃないが背が高く足が長い。肩までの艶やかな黒髪はワンレングス。気だるげに髪を耳にかける様子はとても高校一年生には見えないほど大人っぽい。
以上がほのかのお弁当グループである。
「なんでみんな知らないのー!?乙女失格だよ。みんな!」
「3次元の男なんてみんな滅びればいいのに」
「翼……それはいろんな意味で問題発言だよ。私は部活ばっかだから先輩なんてバレー部の人しか知らないなあ」
「まだ、2か月しか経ってないのによく先輩のことなんて知ってるねえ」
「あったりまえよ!花の高校生活なんだから彼氏の一人や二人つくって楽しまなくちゃ!そのためにもリサーチよ!リサーチ!!」
「……その割には成果出ているようには見えないけど」
「それは言わないでよ!涼子さん!」
「……3次元の男なんて」
「うっさい!翼!!おたくは黙ってて!」
「私はおたくはじゃない!腐女子だ!!」
「フジョシってなあに?」
「ほのかは知らなくてもいいんだよ」
瑞樹がほのかの頭を撫でる。
「余計問題だわ!つか堂々と言うな!!」
「人の趣味にケチつけないでよ!大体、3次元の男なんて……」
綾と翼が言いあいをはじめる。
実は彼女たちは幼馴染で、口喧嘩はしょっちゅうだったりする。
しかし貴重な昼休みは有限。
「どうでもいいけど、昼休み後5分だよ」
涼子が冷めた声をかけると、二人は言いあいをやめ、残りのお弁当にかかる。
ほのかも残ったお弁当を慌ててかきこんだ。
そういえば、近藤先輩って誰なのだろう。