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第19話 二者択一?

 ほのかは自分の気持ちを正直に綾に話すことにした。

 いつもの昼休み、ほのかは「二人で話があるから来てほしい」と綾を中庭に呼びだしていた。

 昼休みの中庭はにぎわっている。

 芝生があり植木の下でお弁当を広げる子たち、何やら取っ組み合いをしている男子、と今日は晴れたこともあり人が多い。

 ほのかはその隅のベンチに腰かけていた。

「ほのか!ごめん!待った!?」

 綾がサンドイッチを片手に現れた。

「購買混んでてさ~」

 そう言いながらほのかの隣に腰を下ろす。

「ううん、急に呼び出してごめんね」

「うん、吃驚しちゃった。ほのかが話があるって改まって『話があるから』というからさ~」

 そう言って綾はサンドイッチをぱくつき始める。

 ほのかも自分のお弁当を開いて口に運ぶが、いつもと違って味がしないような気がした。

「んで、話ってなあに?」

「うん、あのね……」

「なになに、改まって……もしかして、告白!?」

「へ!?」

「冗談だよ~」

 そう言って綾はほのかの肩をたたいた。

「告白……そうかな……」

「え……マジで!?私はその気は……」

 なんとなく冗談めかす綾の言葉をほのかは遮って言った。


「私も先輩のことが好きなんだ」


 綾の表情が固まる。

「ごめんね……だから、私……綾の手伝いはできない」

 ほのかはまっすぐ綾を見つめた。

 それで綾は本気だと悟ったのだろう。

 ふとまじめな顔になって生徒で賑わう中庭に目をやった。

「……いつから?」

「はっきりとは自分の気持ちに気付いたのは6月の終わりくらいかな……」

「それからずっと黙ってたってこと?」

「……ごめん」

「私の気持ち知ってて先輩に会ってたってことでしょ?そんなのずるいよ……」

「ごめん」

「ごめん、ごめんって私は謝ってもらいたいわけじゃないよ!」

 綾はそう言って立ち上がりほのかを睨んだ。

 つらそうな泣きそうな顔に、ほのかの胸がちくりと痛む。

 また謝罪の言葉が出そうになり、口をつぐむ。

 俯いて黙ってしまったほのかに綾はため息をつく。


「ほのかは……ずるいよ」


 



 それから、綾と話さなくなった。

 もともと社交的な綾は昼休みも違うクラスの友達のところに行ってしまいお弁当なかまが一人が減った。

 それについて他の三人はなんとなく事情を察してるようだったけど、特に何も言わない。

 でも、いつも明るくしゃべっていた綾がいなくなって寂しさは拭えない。

 ほのかは悲しくなる。

 自分の本当の気持ちを言ったのは間違いだったのか悩む。

 それに近藤先輩とは、屋上に行かなくなった今、遠くから眺めることしかない。

 女子の先輩に囲まれる姿を遠巻きに見て、ほのかは顔をそむける。

「どったの?ほのほの?」

 翼がほのかの顔を覗き込んだ。

「なんでもないよ!」

「ふーん……最近、綾もおかしいし二人ともどうしたのさ」

 ほのかは何も言えない。

「ほらほら~元気だして。インドメタシーン貸してあげる」

 そう言って出されるのは赤い人形。

「あ、ありがとう」

 これをどうすればいいんだろう、とほのかは受け取る。

「どういたしまして。ほらつとむくんもいるよ」

 翼はばっちり七三のサラリーマン姿の人形も取り出す。

 いつも携帯してるのか……。

「あ、綾」

 ちょうど綾が教室に戻ってきたところだった。

 綾は、インドメタシーンを持ったほのかと翼を一瞥するとさっさと自分の席に着く。

「綾、ほらつとむくん『どうも~○○商事のつとむと申します』」

 綾の目の前でつとむくんが翼の手でへこへこ頭を下げる。

「翼ももうガキじゃないんだから、そういうのやめなよ」

 綾の返事はいつも調子ではなくトゲトゲしたものだった。

 それに翼もかちんときたようだ。

「なんで不機嫌なのか知らないけど、ひとに八つ当たりするほどガキじゃないよ」

「うるさいな」

「トゲトゲ女~そんなんじゃ誰も相手してくんなくなるよ」

「翼は何も知らないくせに!」

「知らないよ!言われなきゃわかんないに決まってんじゃん!」

「翼ちゃん!綾は悪くないんだよ!」

 たまらず、ほのかが間に入ると綾はほのかをギッと睨む。

「いいよね、ほのかは。人のご機嫌うかがって庇ってもらえばいいんだもん!」

「綾!なんでそう言い方すんのよ!」

 翼が怒って叫ぶ。

 綾は翼の持っていたつとむくん人形奪ってほのかのすぐ脇に投げつける。

 憐れつとむくんはそのまま床にぶつかって転がった。

「綾!」

 翼の制止の声も聞かずに綾は教室から再び出ていってしまった。


修羅場……なのでしょうか?

一番の被害者はつとむくんでしょうね(笑)

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