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第29話 ヲタと推し

「お二人の仲を邪魔するなど神罰が下る所業でありそのような不届き者は私自らが裁きにつまり私に裁かれるべき私は私!?」


「めっちゃ早口で喋るじゃん……」


「……おっと、失礼しました」


 思わぬ展開についつい感情が昂ぶってしまいました……いけないいけない。


「にしても、まさか私が邪魔をしてしまっていたとは露知らず。これからは、お二人の視界に入らないよう細心の注意を払って参りますので……」


「や、邪魔とかそんなことは全然ないから!」


 自省する私に対して、義姉さんは慌てた様子で手を振ります。


「ただ、なんていうかほら。家族のそういうとこ(・・・・・・)を見るのって、嫌かなって思って」


「むしろ大好物ですが」


「好物……?」


「すみません、なんでもありません」


 一度タガが外れた結果、どうにも口が軽くなってしまっていけませんね……。


「いずれにせよ、実家(ここ)でも義姉さんは兄さんと存分にイチャコラ……もとい、普段通りに過ごしていただければと。はい、是非に! 家で過ごされている通りに! ありのままに!」


「そ、そう……」


 最後は少々鼻息が荒くなってしまったせいか、義姉さんが若干引き気味な気がしなくもありません。


「……でも、良かったぁ」


 けれど、すぐにそれが安堵の表情に変わります。


「私、一葉ちゃんに嫌われてるのかなって思ってたから」


「っ……!」


 ま、まさかそんな風に思われていたとは……!


「な、なぜそのように思われたのですが……!?」


「や、なんかずっと睨まれてるような気がしてたし……」


「それは一瞬たりともお二人のことを見逃すまいとし、ガン見していただけに過ぎません!」


「何のために……?」


「何のためとかではないのです! これはもはや、私にとっての義務なのです!」


「義務……?」


 またも感情が昂ぶって思わず叫んでしまいましたが……いけません、話が逸れてしまいましたね。


「……とはいえ、実際」


 心を落ち着け、静かに話を戻します。


「子供の頃の私が、義姉さんに良くない感情を持っていたのは事実です。兄さんを奪っていく、憎い存在だと」


「あはは、だよねぇ……」


 包み隠さない私の話に、義姉さんは苦笑を浮かべます。


「ですが、それはあくまで昔の話」


 義姉さんを想うと胸に暖かい気持ちが広がり、私は自然と微笑んでいました。


「今は……嫌うわけ、ないではありませんか」


 義姉さんの目を、真っ直ぐ見つめ。


「義姉さんは、家族なのですから」


 心からの言葉を、送ります。


「……あ、はっ」


 少しだけ驚いたような顔になった後、義姉さんはどこかぎこちなく笑いました。


「ありがとう……嬉しいものなんだね。『家族』だって、認めてもらえるのって」


 それが、徐々に自然な微笑みに変わっていきます。


 はぁっ……! なんと可愛らしく美しい……!

 義姉さん単体でも、ゴリッゴリに推せます……!


「義姉さん……愛しています」


「あ、愛っ……!?」


 頭の中に浮かんだ言葉を、ついついそのまま漏らしてしまいましたが……おやおや、これはぁ?


「義姉さん……随分と過剰に反応されたようにお見受けしますが?」


「え? そ、そうかな……? いきなり愛とか言われたから、ビックリすると思うけど……」


「頬に赤みが増しています……単純に私に言われただけでは、そこまでの反応はしないはず。もしや……直近で、兄さんと『愛』について何かありましたか?」


「一葉ちゃん、ちょっと鋭すぎない……!?」


 ほうほう! ビンゴでしたか!


「義姉さん、その話詳しく!」


「えっ、何なのその食いつき……」


「兄さんに言われたのですかっ? 兄さんに言ったのですかっ? 恐らくは前者……兄さんがポソッと漏らし、直後に慌てて言い訳した、に全ベットです!」


「本当に鋭すぎない!? それとも、実はどこかで見てたの!?」


「おっ、やはり当たりでしたか! さぁ、詳細プリーズです! ハリーハリーハリー!」


「い、いいけどさ……えっと……今日は、思い出の場所周回ツアーっていう主旨で出掛けてたんだけどね? この近くの山に作ってた、秘密基地を見に行ったら……」


 はい、この時点でもう神エピソードの予感!


 今夜のご飯は美味しくいただけそうですねぇ……!



   ◆   ◆   ◆


   ◆   ◆   ◆



「唯華と一葉、大丈夫かな……? 流石に、喧嘩とかはしてないと思うけど……」


 唯華と一葉が仲良く会話してるってのも想像がつかず、気まずい空気になってやしないかと気持ち足早にトイレから戻って。


「って、いうことがあったんだよね」


「………………尊」


「あれっ……? 一葉ちゃん、急に目を瞑ってどうしたの……? ……えっ、あれ!? 息してなくない!? 大丈夫!?」


「……大丈夫です。あまりの尊みに、少しばかり屍となっていただけですので」


「よくわからないけど、それはあんまり大丈夫な感じではなくない……?」


 んんっ……?


「はぁはぁ……! これ以上の摂取は心臓が危険でしょうか……!? いえ、でも義姉さん自身の口から聞けるというまたとない機会……! ここは、攻めの一手でしょう……! 義姉さん、その後は!? その後は、どうされたのですかっ!?」


「あはは……ちゃんと話してあげるから、落ち着きなって」


 二人は、仲良く……仲良く?

 たぶん仲良く、そんな風に話していた。


 想像していなかった光景に、ちょっと理解が追いつかない。


 まぁ仲良くなったんなら何よりだけど、俺がちょっと席を外してる間に一体何があったんだ……?

申し訳ございません、次回以降はしばらく隔日更新とさせていただきます。

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