プロローグ
四月六日、段々と暖かくなり、新しい生活が始まるこの季節。桐ヶ谷綾斗は欠伸をしながらも、これからの学園生活を夢見、学園までの道を歩いていた。
綾斗が今日転入する学園、私立華月学園はこの島、月島にある学園の一つである。この月島は通称、学戦都市と呼ばれており、この月島の人口の7割方がこの月島にある十の学園の生徒なのが特徴である。この学戦都市は実力至上主義であり階級がある、階級は自身の戦闘力と魔力量により階級が決められていて、階級は下からE~Sまである。S級は各学園に一人いるかいないかとされるくらい少ない。
そして、それぞれの学園にも序列があり、序列上位七人の事を"七柱"と呼び、この序列により寮も変わる、"七柱"になると相部屋ではなく個室が用意されたりする。序列により大きく生活が変わるのがこの学戦都市である。
「んぁ、やべぇここどこだ?」
俺はつい先ほどこの学戦都市に着き華月学園のパンフレットの地図を頼りに歩いて来たのだが近道と思い裏路地を歩いていたら道に迷ってしまったようだだった、周りを見ても人は一人として居なかった。まだ、時間は五時を回ったところだろうから人が居ないのも頷ける、そう思いながらも歩いていたら、日が出始めてきた頃、俺は遠目で遥か前で歩いている一つの人影を見つけた。俺はその人影を追いかけるように走るとその人影は女子生徒で、俺と同じ学園の生徒だった。
このまま後ろを歩いているのもいいがそれだとストーカーだと思われるのでは?だけど、こんな時間に女子に話かけるとか普通に不審者なのでは?と思考を駆け巡らしていると事件が起きた。
女子の頭上から鉄骨が崩れて落ちてきたのだ、女子は鉄骨が崩れているのがわかっていないようだった。このままでは女子が崩れた鉄骨の下敷きになってしまうので俺は"加速"を使った。
そして、俺はすぐに"加速"を使い女子と鉄骨の間に入った。そして、俺はいつの間にか手にある刀を振りかぶり…
「っ!!"一刀両断"」
俺が刀を振り落とすと、落ちてきた鉄骨が真っ二つに分かれ後ろにいる女子を守る事ができた。後ろを見るとびっくりした様に大きく目を広げてこっちを見ていた。
いや、実際にびっくりするだろう突然落ちてきた鉄骨がいつの間にか真っ二つになっているのだから、俺だって状況がわからなければびっくりするし混乱する。
「助けてくれてありがとうございます」
だが、彼女はすぐに状況を理解したのか俺に向き直りありがとうと頭を下げてきた。
「っ…いえ、大丈夫ですよ」
俺は声を絞り出すようにそう言った。それもそうだろう、今救った女子は息をする事を忘れるほどに誰がどう見ても美少女だったのだから。腰まで伸ばしたストレートロングの銀髪、そして、全てを見透かすような碧玉のように青い碧眼。顔立ちは可愛いというより綺麗な顔立ちだろう。男女問わず見惚れてしまうような美しさだった。俺は数分間彼女に見惚れていた。彼女は話を切り出すように「こほんっ」っと一つ咳払いをする。
「私は華月学園二年の神楽崎結井です。先程は助けてくださってありがとうございます。えーっと」
「俺は桐ヶ谷綾斗です」
「桐ヶ谷くん、一つ聞くけどいい?」
「いいですけどなんですか?」
「桐ヶ谷くんは私を付けてたみたいだったけど…どうしてかしら?」
俺を見る神楽崎の視線が鋭くなった。神楽崎は俺が付けてたことを知っていてわざと気づかないふりをしていたらしい。
(あ、これヤバい、なんかめっちゃ疑われてるんだけどっ!?)
内心めっちゃ焦る俺。
「お、俺はその、今日この学戦都市に来たばかりでその……道に迷ってました…」
「それで、やっと見つけた人が私だったから話し掛け辛くちょっと後ろを付けてたと?」
「は、はい…」
神楽崎は溜め息をしながら「じゃあ、一緒に行きましょうか」と提案してくれたので、一緒に登校する事になった。
(ん?ちょっと待て、俺が付けてたことを知ってたって事は頭上の鉄骨の事もわかってたんじゃ…)
俺は付いて行きながらそう思うのだった。
神楽崎は華月学園に着くと「じゃあ、私こっちだから」と言って直ぐに別れてしまった。そして、当の俺はと言うと学長室の前に居た、転校手続きは既に終わっていたのだが端末と校章を貰いに来たのだ。
神楽崎から聞いた話だと、端末にはマップアプリなどがあるそうで普通は道に迷わないらしい、そして、端末には他にも色々な機能があり、この島特有の『決闘』の申請や受諾もできるらしい。
この学戦都市に住む学生は皆人並み外れた能力を持ち、魔素を操る事で魔法を使えたりする。そして、街ではいつ何処でも、『決闘』ができるらしい。その『決闘』に勝つ事で序列が上がっていく。
この学戦都市で優秀な結果を残すと将来が約束され、願い事を叶えてくれるらしい。この学戦都市に住む学生は大体が願望を持ちやってきている。
俺はコンコンっとノックをする、すると扉の向こうから子供の頃から聞き慣れた女性の声が聞こえた。
「どうぞ~」
「失礼します」
俺は扉を開けて入ると一人の女性が急に俺の胸に飛び込んできた。混乱する俺にお構い無しと抱きつく女性の手は自然と俺の頭にいき撫でてきた。俺は懐かしい感触に意識を持っていかれそうになったけど寸前の所で持ち直して女性を無理やり退かせた。
「なんで、会って早々抱きつくんだよっ!義姉ちゃん!!」
「なんでって良いじゃない、それとも嫌だった?」
「嫌じゃないけど……」
からかうようにくすっと笑う女性は美咲紗江、この学園、華月学園の生徒会長であり、俺の義姉だった。俺をこの学戦都市に誘ったのも彼女である。
「義姉ちゃん、緋奈は元気ですか?確か入学してましたよね」
「緋奈だったら元気だよぉ、やっと会えるって喜んでたしねぇ」
緋奈とは俺と同い年の幼馴染みで紗江義姉の実の妹だ。昔三人でよく遊んでいて紗江義姉が五年前に学戦都市に行くことになり緋奈も一緒に学戦都市に行ってしまったっきり会っていなかった。
「義姉ちゃんなんで学長室にいるの?」
誰もが思う質問をした、ここが生徒会室ならわかるがここは学長室である、するとなんで生徒会長の紗江義姉がいるのか不思議でならなかった。
「実は学長に頼まれて渡しておいてって言われてね、待ってたんだよぉ」
そう言うと紗江義姉は端末と校章を取り出した。
「いや、まさか学長が渡してないとは思わなかったけどね」
「おかげでこっちは道に迷ったよ」
そして、俺と紗江義姉と昔の事を話したりして用事が終わったので二人で学長室を後にしたのだった。
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