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俺は世界一、幸せだ。

「そのようなつもりで申し上げた訳ではないのですが…ご不快でしたら申し訳ありません。今後、気をつけます。」


〝かわいい〟は俺の胸の内だけにしておこう。


「愛子さんは、何と褒められたら嬉しいのですか?」

「…綺麗、ですとか。」


うん、確かに愛子さんは綺麗だ。今度はこれを使おう。


「そうですか。…他には?」

「そうですね…大人っぽいですとか。」


…マズイ。笑いそうになる。このかわいらしい一回り年下の愛子さんを見て、その言葉は想像がつかなかった。


「なるほど。」


なんとか、耐えて返事をするけど、声が震えてしまった。


「バ、バカにしてらっしゃいます!!」


照れて言い返す愛子さんは…さながらキャンキャンと吠える子犬のようだ。なんて可愛いんだろう。


「そんなことはありません。かわい…幸せだと、感じましたものですから。」


おっと、マズイマズイ。


「申し訳ありません。怒ってらっしゃいますか?」


しまった。喋らなくなった。怒らせたかな。


「私を誰だと思っておられるのですか…。」


少し、不服そうにする愛子さんがかわいい。


「私の妻です。」


間違いありませんよね?もう認めてもいいですよね?


「愛子さんが私に言われたのですよ。結婚後も変わらず〝お嬢様〟という私に。〝もう結婚したのですから私は久司さんの妻です〟と。覚えておられませんか?」


俺は今、あの時の事が昨日のことのように思い出せる。


「とても…嬉しかった私の気持ちが分かりますか?」

「う、嬉しい?」

「ずっと、思いを寄せていたお嬢様が私を受け入れて下さったのですから…」


希望に満ちていた、幸せの記憶だ。


「それを言うなら…私も…」


そうでしたか。気づかなかった。愛子さんはテレ屋で天邪鬼だ。


「…私も、何ですか?」


分かりましたが、言葉にして下さい。聞きたいから。


「知りません。良かったですね、久司さん。会社のトップに立ったのですから。」


…言ってくれないのか。なんだ。


「…誤解の無いように申し上げますが、私は社長になりたくて、この結婚話を受けた訳ではありませんからね。」


拗ねたような愛子さんがかわいい。今日は表情豊かだ。


「まさか私のような者がお嬢様の結婚相手に抜擢されるとは思ってもいませんでした。」


期待されてた訳でもない。ただ周囲と調和出来るということだけをかわれたのに。


「それはお父様が、私を気遣って出された話ですよ。」


え!?つまり…それは…


「では、やはり都合よく解釈して宜しいですか?愛子さんも私の事を前から思っていたと…」

「あ。」


、、かわいい。これ以外の形容詞はない!


「かわい…愛子さんは美しいですね。」


(おっと。危ない。)


「久司さんは随分と大人な方だと思っておりましたのに。私をからかって遊んで、子供らしいですよ。」


しまった、怒らせた。

そして幼稚な俺の本性がバレてしまった…。


「そんなつもりはありません。ただ、あんまり愛子さんがいつも私を大人と言われるので、そうでなければ、と無理をしておりました。」


「なぜそんな無理を…」


「好きな人に好かれるよう努力したいと思ったからです。」


愛子さんの理想の男性になろうと努力した。落ち着いた大人の男性。そういようと頑張った。


「!…久司さんはよく恥ずかしくもなくそのような事が言えますね。」

「恥ずかしいに決まってるじゃないですか。ただ、それ以上に伝えたいんです。分かって頂きたいから。」


今日は愛子さんの色んな顔を見れた。嬉しい。幸せだ。




もっと言おう。伝えよう。クールぶらずに。ありのままで。



自分の本当の気持ちを。



そしたら…こんなにも幸せな未来が待っている。




「久司さん、私が社長令嬢じゃなくても結婚して下さいましたか?」


「もちろん。寧ろ愛子さんとの結婚の方が重要でした。」


「…では、こちらはお返し致します。」


渡した離婚届が返される。


「もう、二度と私の前で出さないで下さい。」



俺は、世界一、幸せだ。

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