認められたい
愛子さんが落ち込んで言う。
「私は子供が喜びそうな場所が全く思いつきません。」
結仁を連れてどこに行くかを決めている真っ最中だ。
子供が喜ぶところ、か。
「…私の弟は、遊園地が大好きでしたが…」
とりあえずうちの家を例に出す。
「遊園地!それは良いお考えですね!」
すごく弾んだ返事をされる。
…そんな声を出されることもあるんですね。
「…しかし、妹は乗り物が恐いと嫌っておりました。」
子供の気持ちも千差万別。一様には言えない。
「…。久司さんはやはり大人でいらっしゃいますね。私は何一つ思い浮かばないばかりか、更に2つの視点を持って考える事など到底出来ませんでした。」
え。
今のどこに大人の要素があったんだろうか。
2つの視点?とは?
ダメだ。愛子さんの気持ちが分からない。
「…愛子さんは?」
今後も含め、リサーチをさせてもらおう。
「今回は愛子さんもご同行されるのですから。愛子さんの行きたい場所に行きましょう。」
「わ、私の行きたい所でございますか?」
…答えてくれない。
俺と行けるようなところなんか…ないか…。
「…特に無いようでしたら、買い物にでも行きましょうか。結仁の身の回りの物を揃えてあげましょう。」
あまりにも黙っているため、無難な提案をした。
そして、気づく。
ここの家には外商が来るんだった。
しまった。そう思ったけど…
「そうですね。宜しくお願いします。」
何故か、了承してくれた。
初めてプライベートで一緒に出かける。…嬉しい。
「楽しみにしております。」
素直に口に出した。
「はい。私も…私も楽しみにしております。」
!愛子さんの感情を聞くことが出来た。…嬉しい。
たとえ、結仁と出かける事に対してであっても、嬉しい。
✽✽✽
三人で出かける中、愛子さんがやたらと結仁に話しかける。
羨ましい…。子供に嫉妬する。
愛子さん、俺にも話しかけて欲しいのですが。
「家族になったんだから。三人で出かけるのは極自然な事だよ。」
結仁が何故か俺達に気遣ったため、そう伝えた。
夫婦では無くても、良き父となって愛子さんに認められたい。極自然に一緒にいられる関係になりたい。
そう願って…